6・5 連携中
「花本先生はいらっしゃいますか?」
同時刻。
職員室を訪問する、吹奏楽部部員の姿があった。
「あ、えっと、門田さん?」
仕事が長引いてしまった。そう悔やみながら、帰宅の準備を進めていた花本羽地は、その手を止めて訪問者の顔を確認する。
「今日も、国立せんせはいないんですかね」
「多崎校長からご説明があったように、国立先生は風邪でお休みなの」
「私のせいじゃないんですねぇ、がっかり」
「噂話くらいで、あの仕事熱心な国立先生が不登校になるわけありませんよ」
花本羽地がにこりと微笑むと、門田杏は笑顔で応えた。
これまで彼女が、自分に積極的に話しかけてくることは少なかったのに、今日は珍しい。それだけ国立一弥の休みが一大事なのであろうと花本羽地は考えていた。
「それで、ご用は何かしら?」
国立一弥のアパートに行きたい。さっさと門田の要件を片づけてしまわないと。
門田杏の訪問を終わらせようと、彼女は結論を急ぐ。
「ええっと、相談というか、人生の悩みというか……」
花本羽地の問いかけに、きょろきょろと周囲を見回す門田杏。そして「できれば人のいないところがいいんですけど……」とぼそぼそしゃべった。
「なら空き教室を使いましょうか。今ならもう生徒さんは帰っているし」
「はい。よろしくお願いします」
花本羽地は肩にかけていたバックをデスクに置いた。そして彼女と一緒に、2年2組の教室へと向かう。悪いタイミングで生徒に捕まってしまったと、心のなかでため息をつきながら。




