ビーストフォレス編 EPⅥ「いきなりな御挨拶と緊急事態」
お待たせしました!
デビュー出来るといいな…
「貴様等、何者だ!?何故只の人間風情が我等誇り高き獣人の国へ足を踏み入れている?」
「『誇り高き?…こやつ等、お馬鹿さんなのかの?』」
「言ってやるな…」
道中色々あったがようやくアーガイスト城前に辿り着いた俺達だったが早速門番兵に絡まれた。
「俺達は別に怪しい者じゃない。
人族代表のナーサ・ヒモリ長官もしくは獣人国国境警備隊のリョウフ・ルベーサンからの知らせが入っている筈なのだが?…」
「何?…すぐ確認して来い!」
「はっ!」
俺の返答に門番兵は首を傾げ、もう一人の兵に確認に行かせた。
しばらくして…
「む、そうか…オイ貴様等についての確認が取れた。
だがくれぐれも王の前で無礼を働くではないぞ!」
「…」
ようやく信じて貰え城の中へと通して貰ったのだがやはり他の種族に対する偏見や差別が激しい様だ。
無礼ねえ…これというのも今の王が問題なのである。
「フン!…貴様等が人族で現れたという救世主とその超AIだな?」
「ああ、そうだ俺は鍵桐 弐鬼だ…」
「『わっしはクロノアシアンじゃ』」
玉座に踏ん反り返るのはビーストフォレス現国王イギル・アーガイストだ。
「想像していたよりも随分と軟弱そうな男の様だな…」
「『…』」
「クロン、今は抑えてくれ」
「『わ、分かっておる!…』」
俺の事を馬鹿にされクロンが静かに怒りを燃やしていたので手で静止する。
「貴様をこの神聖な城に招き入れたのは他でも無い。
救世主体質の貴様の血を使えば我等が本来使えぬ【輝装】が使える様になると…我等が人族のものを受け入れる訳にはいかんのだが…まあ、今は何処も戦争状態であるからな!使える物は使わせて貰おうではないか!ふっはっはは!」
「『こやつ!…』」
「はあ…」
イギル王の発言に俺達は頭を抱えていた。
やはり此奴を含めこの世界のほとんどの者は皆、装の力を只相手を貶め、蹴落とす為だけの道具としか思っていないようだ。
「早速その品を渡して貰おうではないか!」
「は、はあ…ってン?…」
イギル王の催促に俺は採血してもった自身の血の塊で作られたアレを手渡そうとポッケを探る。
だが…
「『もしかしてお主…アレを落としたのかの!?』」
「『…そ、そうみたいです…』」
サッーと血の気が引き、念話でクロンにそう告げる。
ヤベェ…此処に訪れる道中の何処かで落としてしまったらしい。
「『主の阿呆ぅー!どうするのじゃ一体ー!?』」
「どうしたのかね?」
「『ほらー!こやつが不信感を募らせておるぞ…』」
「…」
イギル王が催促に応じてこない俺に対して不審感激有りな視線を向けてくる。
一体何処で落としてしまったんだ!?…はっ!まさかあの時か!?…
俺は思い当たる節を必死に探っていた。
その頃、アーガイスト城前
「これあの人の落とし物の様だけど…どうしよう?…」
弐鬼が落としたアレ…彼の血の塊で作られた試作品ペンダントを拾ったのはつい先日彼が出会った猫人族の少女、ルノンだった。
ルノンは人族の彼がこの国を訪れる理由は王族であるアーガイスト家にあるのだとすぐに思い当たり城を訪れていた。
だが一般ピープルの下の下…未だ装を扱う事の出来ない彼女では城内に入れて貰えるかどうかすらも怪しかった。
「駄目だ駄目だ!おとなしく帰れ!」
「そんな…」
嫌、案の定門前払いされてしまう。
でもこのままこれを彼に届けなかったらきっと大変な事になる。
そう思ったルノンは思いきってコッソリと城内に忍び込もうとしていた。
「何かお困りなのかな御嬢さん?」
「!?」
はっとなったルノンが振り返ると彼女の背後に現れたのは国境警備の任から一時戻ってきていたリョウフだった。
「あ、あの…」
ルノンは思いつく限りの言い訳をしようと手をバタバタさせあたふたしていた。
「!?君!…」
「は、はい?!…」
すると一瞬捲り上げられたルノンの腕の痣を見たリョウフは驚愕し彼女に詰め寄った。
「何やら深い事情がありそうだな…」
「…」
リョウフはルノンの痣については触れず彼女の話を聞く事にした。
「…」
「その前に盛大な宴といこうではないか!」
大事な取引交渉品であるペンダントを落としてしまった事にようやく気が付きたらり…と物凄い量の冷汗を流していた俺に対しイギル王は何を勘違いしたのか表向き俺達を歓迎するというパーティーを開いていた。
だが今はガチでそれ所ではないのだが…
「叔父様、又宴をお開きになっているのですか?…」
「そうだ、今日から我等アーガイスト一族は更なる繁栄を遂げるのだよ!」
「そう…ですか…」
さも興味が無さそうにイギル王を叔父と呼んだ黒髪ストレートロングヘアーの少女は返答する。
「あの子は?…」
「ああ、あれは儂の姪でオルシアじゃ…今は儂の代わりをさせておるだけの人形だがな」
「姪?ってことは…」
「ああ、オルシアの父親、兄であるオルス・アーガイストは早々に病死され、王妃であったリシアも後を追う様に病死したのだ」
「『こやつからは最早汚れた野心しか感じられぬ…』」
姪を人形呼ばわりね…ン?待てよ!
「『クロン、確かアーガイスト第一皇子と王妃は確か十数年前から行方不明扱いだったよな?』」
「『ン?ああそうじゃが…わっしの情報に狂いはないぞ?』」
なら、何故イギル王は第一皇子達が病死しただなんて言うんだ。
何か隠している事がある?…
これは詳細を調べてみる必要性があるな。
まずはさっきのオルシアさんに