ビーストフォレス編 EPⅤ「王家を訪ねる前に」
転載分はこれまで最新話につきましては構想中。
<ビーストフォレス 城下町>
リョウフさんからビーストフォレスへの入国申請許可を頂きこの国の王族であるアーガイスト王家の城を目指して突き進んでいた。
その道中にて俺はこの国の現状を改めて実感していた。
「これは…」
クロンとの知識共有の中であらかた知ってはいたが実際目の当たりにするのは初めての事なので戦慄した。
「下の人への理不尽な暴力、それと野盗が日常茶飯事に出没するときているもんだ…」
野盗は俺が偶然見かけて片付けておいたからしばらくは出ないと思う。
だけど昔からこんなには酷くはなかった筈である。
全く今のアーガイスト王家は一体何をしているんだ?俺は素朴な疑問の答えを探し考えながら道中を進んでいた。
「こんな飯を客人様に食わせる気かい!?アンタって子は!」
「…御免なさい、御免なさい!…」
何やら猪族の夫人が猫人族の少女に向かって怒号し少女が作ったのであろう食事をぶちまけ…る事は無く少女の腹の前スレスレに投げつけて折檻していた。
少女は体のあちこちに酷く傷が目立った。
「ちょっと!おば…お姉さん一体何をやってるんですか!?」
俺は急いでその子に助け舟を出して夫人に怒号した。
「なんで人族がこんな所に…それに今なんか聞こえた気がしたけどねえ…見ていて分からないかい?躾だよ躾!ロクな食事も作れないメイドにねえ」
夫人は悪びれる様子もなくそう言い放つ。
「だからってこんなになるまでやるのはやり過ぎだ!」
「全く…たかが下人一人ないがしろにしたからって何だというんだい。
それに人族のアンタにうちの事に首を突っ込まれてはこっちが困るだけ!」
「はあ!?」
なんつう差別意識がこびり付いているんだ…俺は夫人の言葉を聞いて嘆きを通り越して呆れてしまった。
「とにかく其処でしばらく反省していな!」
これ以上反論するのは今は時間の無駄だろうと思った俺はこれ以上何かされる前に庇う様に少女に駆け寄った。
「君!大丈夫か?」
「うぅ…?ヒッ!?ご、御免なさい、御免なさい!…」
少女は俺にまで怯えだしてしまう始末だった。
「大丈夫だ!俺はあんな鬼の皮を被った様な奴とは違うよ」
「う?…」
俺はそっと少女の頭を撫でた。
「あう…」
撫でる度に猫耳もピクピク動いて可愛いな…。
もっと撫でてあげたい…。
「『何時まで撫で回しとるんじゃ!』」
「あでっ!?」
クロンにはたかれはっとなる。
「っと…」
「あ…」
そして俺は少女が作ったという食事一式に手を伸ばして食べてみた。
夫人が投げつけた衝撃で少し毀れてしまっていたが。
そして一方の少女はまた怯え震えていた。
そんなにまで暴力が酷いのか…。
「うん!美味しいよ!」
少女の作った料理は普通に茉莉のファミレスのメニューに加えて欲しいぐらいに美味だったのだ。
こんなに美味いというのにあの夫人は一体何を考えてるんだ?…
「え?…」
少女は予想外だと思ったのか驚いた表情で俺を見た。
「本当さ。俺は鍵桐弐鬼こっちは俺の超AIのクロンだ」
「『寄道御節介もここまでくるとむしろ清々しいものだのう…』」
一言余計だぞクロン。
「…わ、私はルノン…」
「苗字は?」
「…な、無いんです…私はその…捨て子でしたから…」
「何?…」
それから俺達はルノンのこれまでの人生を聞いて涙した。
彼女は生まれてすぐに捨てられ今のあの夫人の家に拾われたそうだ。
だけどどうしてなのか装の力を扱えず今日までこんな生活を強いられていたようだ。
「苦労してきたんだな…」
「『これがこの世界で当たり前の様に行われている事なんじゃ…』」
クロンも申し訳無さそうにしていた。
俺という存在が現れるまでこの世界を見通すだけで何も出来ずにいたからな。
改めてこの世界を救う決意が出来た。
「じゃあこの国を離れる前にはまた会いに来るよ」
「は、はい…いってらっしゃいませ…」
彼女の傷の治療をした後しばらく他愛もない話をして俺はその場を離れた。
「『この娘はもしや…いやわっしの気のせいだと良いのだがの…』」
「ほら行くぞクロン」
「『あ、ああ…ううむ…』」
クロンが何やら唸っていたがこれ以上時間を無駄にする訳にはいかないのでその時は気にしないでおく事にした。
そしてしばらくした後
「…あ…」
弐鬼達が去った後ルノンは片付けをしようと思いふとある物が落ちている事に気が付いた。
それは何かが入れられた赤いケースだった。
「コレは?…もしかして!…」
彼女はすぐに気が付く。
弐鬼がうっかりと落し物をした事に…。