EPⅣ「始まりは獣人の地へ」
俺は接続世界を救う為にまた足を運び人族・装機研究所を訪れていた。
「そうか行くのだな…」
「残りの超AIに選ばれし戦士達を探し出し世界を救う為の旅ですか!」
「ええそうしたいと考えております。まずは一番付近である獣人族の地である「ビーストフォレス」へと足を運ぼうと思っています」
俺はひとまず立てた救世主計画をフレイア大尉とヒモリ長官に伝える。
「確かに今ビーストフォレスは貴方が打倒したエースの事で軍の士気も乱れている事でしょうし…ですがもしやしなくてもお一人で行かれるおつもりで?」
「一人ではないさクロンがいる」
「『忘れるでないぞ!』」
「ははっそうでしたねうっかりしていました」
うっかりするヒモリ長官にクロンが呆れ苦笑する。
「あの…」
そこにフレイア大尉が何か言いたそうにしていた。
「ン?フレイア大尉どうしましたか?」
「そのだな…私はお前の護衛とかはしなくて良いのか?」
ああそれを気にしていたのか。
「いや今や俺はこの世界の概要を理解している救世主だからな。護衛は必要無いかな。それにもし大尉が離れて人族の守りが薄くなったらどうする気なんだ?」
「そ、それは…」
流石にフレイア大尉も反論出来ずに口篭った。
「装機はクロノアシアンの承認でいつでも呼び出せる手筈が整っておりますから御安心下さい」
「そうですか仕事が早いですね!ありがとうございます!」
「いえいえ私にはこれくらいの事しか出来ませんから」
ヒモリ長官は少し暗い表情になっていた。
「行方不明の長官のお兄さんもきっと俺とこれから集まる仲間達が探し出してみせますよ!」
「そうですか!それを聞いて私も安心出来ました…ではビーストフォレスへの入国手続きは私の方からやっておきますね」
「何度もすみませんね…ってそろそろお開きに致しましょうか!」
「そうですね」
こんな会話を続いていたがはっとして俺とクロンは早速外へと出た。
「『弐鬼よ、これから敵地へ足を踏み入れる事になるが…ヒモリ殿の申請もすんなり通るかどうかは定かではない。
救世主伝説を信じておらぬ者達の方が多いからのう…だから…』」
「それでもし肉弾戦に突入した時の為の装転機鎧<ウェポンメタモルアーマー>だろ?分かっているさ!」
「『うむ!その意気じゃ!』」
しばらくして俺達はビーストフォレスの国境線付近へと辿り着いた。
<ビーストフォレス国境線付近>
「其処で止まれ!」
「人間風情が我等の国に土足で入り込むなど許さん!」
獣人族警備兵が三人待ち構えていた。
「いきなり来て悪かったな。其方への入国申請が届いている筈だ悪いが確認ぐらいはして欲しいのだが」
「問答無用!」
警備兵は聞く耳を持たず槍を振り下ろしてきた。
「はあ~やっぱこうなるのかよ…クロン!」
「『了解じゃ!装転機鎧の召喚承認!』」
「「何ッ!?」」
クロンの承認と共に雫月の一部装甲を模したパーツが飛来し俺の周りに浮遊しながら警備兵の槍の一撃を防いだ。
そして俺に纏われる。
「馬鹿なっ!?貴様の様な子供が装転機鎧を纏えるだと!?…」
「口を開けば子供に人間風情がってアンタ等ねえ…ちゃんと話を聞いてくれよ!」
装転機鎧…装機の一部を己の身に纏う事での身体強化奥義である。
これには召喚条件があって少なくとも軍用スペック調整された物でも無ければ量産機では不可能な代物なのだ。
だからエース級の腕を持っていなければ使えない。
俺は完成された輝装、蒼き三日月の月刀を召喚し応戦した。
「そらっ!」
「「うわああああー!?」」
「お主の様な子供にここまで追い詰められるとは!…」
一撃振るっただけで警備兵は二人吹き飛びもう一人は耐えていた。
「まさか今の一撃を耐えられる奴がいるとはな!二度驚いたぜ…」
「ぬう!…そこに気が付かれたか!…」
この警備兵等の槍は一般武装に偽装した獣装だった。
そしてこの俺の一撃を耐えた獣人族の男は結構なやり手なようだ。
「ならば!」
「ほ?…来るか!アンタの一撃今度はコイツで受けて立つぜ!」
男の獣装が輝き出す。
それに対し俺は蒼き三日月の月刀を仕舞い獣装、ファングスティンガーを召喚した。
「!?人族のお主が何故それを!?…があっははっは!面白い!面白いぞお主は!」
男は疑問するがすぐにあの件を思い出したのか途端に高笑いをし出したかと思うとすぐに再び獣装を構えた。
「ならば人族の少年よ我が獣装、『ブレンテッド・ベアレイズ』の本気の一撃…その身に喰ろうてみるがいいわー!」
今度は獣装転機鎧も纏い突撃してくる。
「『来るぞ!』」
「分かっているよ!」
ファングスティンガーの特性であるエネルギーの流れを狂わせる能力を扱う為に感じろ!…奴の僅か微量な神経の流れを!…
「『熊咳の流星突』!」
「其っ処だあー!」
奴の一撃と俺の一突きが衝突する。
僅かな装の隙間を突いた為奴のブレンテッドベアレイズは半壊し始める。
「エネルギーの逆流地点は既に見切っているぞ!」
「なんとっ!?…それがお主の獣装の特性か!?だが私とてそう簡単には負けんぞ!ぬううらあああああああー!」
男は突点を少しでもずらそうと力任せに押してくる。
がそんな力押しだけでは俺は諦めない!
「貫けファングスティンガー!」
「ふぬおっ!?」
そのまま装が崩壊した反動で男は見事に吹き飛ばされた。
「あ、危なかったな…」
ほんの少しでも突点がずらされていればパワー負けしていたかもしれない。
俺は冷や汗を感じていた。
「た…隊長迄もが負けただと!?…」
既に吹き飛ばされていた残りの警備兵は信じられない光景を目の当たりにし固まっていた。
ピピッ!そこに突如として通信が入る。
「え…あはい…ほ、本気ですか!?…はい分かりました…」
「何の通信だ?」
隊長と呼ばれた男はすぐに復活し通信内容を聞いた。
「そうか…」
男は聞き終わると俺に向き直りこう言った。
「いやはや部下も私もすまなかったな。
王家の方に既に話が通っていようとは思いもよらなかったんでな…流石はあの男を打倒した救世主という訳か」
「話が通じたようで此方も安心しました」
「だが今この国は…いや接続世界全体が混乱に満ちている…これも今迄染み付いてしまった積み重ねというものか…」
男もこの世界の混乱ぶりに悲観していたようだ。
「お主の名を聞かせてはくれまいか?」
「鍵桐 弐鬼だよろしくなオッサン!」
「私は獣人国境警備隊隊長のリョウフ・ルベーサンだ。言っておくがオッサンではない!まだ24だぞ弐鬼よがっははー!」
「こりゃ失礼した!」
「「はははっはー!」」
俺もリョウフさんにつられて笑い合った。
本当の旅の始まりはここからだ!