とある王国の王女様の朝
ここはとある王国の王城の一室。そこには一人の美しい少女がたたずんでいた。彼女の名はリリアーヌ・ローウィズ・サイラユク。この王国の第一王女である。彼女は、整った顔立ちに、繊細な金細工のように美しい金髪、そしてどこまでも透き通るコバルトブルーの瞳を持っていた。しかし、その顔にはなんの感情も浮かんではおらず、まるで人形のような生気のない表情をしていた。それ故に、人は彼女をこう呼ぶ。
─────人形姫と─────
********************
人形姫って何よ!いきなり失礼な話を!あ、初めまして!私はリリアーヌと申します。どうぞリリアって呼んでね!
彼女は確かに生気のない、まるで人形のような見た目をしているが、中身はただの16歳の少女だった。ただ、彼女の生い立ちが、彼女自身を人形姫と呼ばれる程までに、無表情にしてしまったのだ。
って待ちなさいよ。何勝手に私の事を話そうとしてるの!っていうか、あなた誰!?
あれは彼女が6歳の頃の事だ。それまで母親からの愛情をたくさん受け、すくすくと育っていた彼女は、唐突にその日常を失った。
って無視!?というか、何で頭の中にこんな声が響いて……
そう、彼女の母親がはやり病にかかり、その後僅か3日後に静かに息を引き取ったのだ。
いやいや、待ってちょうだい。お母様はまだまだ生きてるわよ?昨日なんかも新しいドレスが届いたとかで、はしゃいでたけれど……
それからというもの、彼女には一切の味方がおらず、母親という後ろ盾を無くした王女は、まるで空気のように扱われ、父親である国王ですら、彼女の事を気にかける事はなかった。
いやいやいやいや、だから待って待って待って!お父様も私に無関心なんて事はないわよ?むしろ会って話さない日があると、それだけで仕事に支障がでちゃうらしく、もの凄く私の事を構ってくれるわよ?
誰にも気にかけられる事はなく、彼女は感情というものを浮かべる機会が減り、そのせいで段々と表情を失い、ついには生気のない表情を浮かべるようになってしまったのだ。
だ・か・ら!それは一体全体誰の話なわけ!?誰が人形姫よ!!誰が生気のない表情を浮かべるのよ!!
─────うるさいですね、リリア様。話の途中なんですから、静かにしていて下さい。これはまだ物語の序盤なんですよ?折角ワタシが考えた壮大な恋愛物語を話そうとしているのに、邪魔しないで下さい。
って、その話し方!あなた女官長!?
ワタシは女官長ではありません。とある物語の語り手……そう、ナレーターなのです。
いや、意味分からないわよ?
と言う訳で、大人しくワタシの話を聞いて下さい。
何も分かってないしどういう訳なのよ!?
そんな人形姫に、たった一人だけ想いを寄せる青年がいた。彼の名はユーグリット・スティルディ・ロワルメイス。王国の侯爵家長男だ。彼は燃えるような赤い髪に太陽のように光り輝く黄金の瞳も持つ、素直で優しく賢く剣の腕も強い青年だった。彼が人形姫と初めて出会ったのは、彼が15で彼女が12の頃。普段は無表情の人形姫が、城の庭園で見せた一瞬の小さな笑顔に一目惚れしたのがきっかけだ。幸運にも、彼だけが彼女の素顔を見ることができ、彼女の素顔を知る事ができた。
……女官長は誰の話をしているわけ?ユーグは、乱暴でデリカシーのない事ばかり言う、俺様な性格をしていたと、私は記憶しているのだけれど。一体いつからあの性格が変わったのかしらね………………!
あら、そうでしたか?ワタシ共の前では非常に紳士に振舞われておいででしたが。
あ、帰って来てくれて嬉しいわ。というか、あいつのは二重人格よ!二重人格!あんなのが社交界では人気だなんて認めないわ!みんな目がどうかしてるのよ!
……………。彼女の素顔を知る事ができた彼は、今のままでは彼女を救う事はできないと考え、今まで以上に努力を重ね、次期侯爵家当主として相応しい振る舞いを覚えていった。全ては彼女の為に。
結局は無視なの!?そこでため息をつかないでちょうだい!
リリア様。いい加減になさって下さい。ワタシは今忙しいのでリリア様に付き合っている暇はないのですよ?
ちょっと!どう考えてもよく分からない謎の創作をしてるだけじゃないの!それのどこが暇じゃないのよ!!
リリア様。これはワタシの仕事なのです。皆様に夢と希望をお届けする為に、こちらの物語を考えているのですよ?
で?本音は何かしら…………?
この程度で考えつく簡単な話が売れたら、印税で楽に生活できるなと。
そこに直りなさい!なんて腐った根性してるのよ!!あなたの言うこの程度のお話は、どうせ人が信用できない私が徐々にユーグを信用してって、最終的に普通の人のように笑顔を浮かべられるようになるって筋書きでしょ!
…………………………っ!?
って図星なの!?本っ当に図星なの!?単純にも程があるわよ!?
ですが、このお約束な物語が人気なんですよ。皆様、王道とか定番はお好きですので。ですので人気取りには丁度いいのです。
本当にあなたは下衆ね……………!
そんな、お褒めにならないでください。
褒・め・て・な・い・わ・よ!
さあ、リリア様もすっきりお目覚めになられた事ですし、今日も1日頑張りましょう。
………………………………。
リリア様?早くお仕度をしなければ、朝食に遅れてしまいますよ。
なに……!なんなの……!?私の目を覚まさせる為だけにこんな茶番を繰り広げていたの………!?わざわざお話まで考えて……どんだけ手がこんでるのよ!
嫌がらせは常に全力で、が家訓ですので、微力ながら全力で当たらせていただきました。
何その家訓!?そんな事に全力を費やしてどうするのよ!?
さあさあ、のんびりしている時間はありませんよ?こちらのお召し物をどうぞ。
ああああああ!!もう、分かったわよ!!起きます!起きますから!!
********************
そんな、平和な1日の朝
地の文が全て会話なので読みづらかったら申し訳ないです。
ナレーターと作中キャラの掛け合いって面白いですよね。とても好きなのですが、私には書くのが難しくてつらいです………。




