約束の白詰草
アタシはね、特別珍しいわけでもない花なの。 なのにたまにね、人間はわんさかなる葉を掻き分けて、掻き分けて、掻き分けて、探すのよ。
何をって?『シアワセ』をよ。
「あぁもう!! どこにあんのよ!!」
「よっちゃん、もう帰ろうよ~」
「ダメよ!! 明日の席替え、ずぇったぁぁぁいさとる君の隣になるんだから!! なみちゃんも探してよ!!」
え~、迷惑。 そんな事知らないわよ。 帰りなさいよ。 アンタ達がメチャメチャ踏みまくるから目ぇ覚めたじゃない。 本当迷惑よ。
「もう、探したよ。 もう6時なるからあたし帰るね」
「ちょっと! 待ちなさいよ! 見つけるまで帰さないから!」
「うぇ~ん、よっちゃんが叩いたぁ」
「あ! ちょっと! 待ちなさいってば!」
ちょっとこの子なに! 友達叩くとかあり得ないんですけど! やな子ねぇ。 友達は大事にしなきゃダメじゃない! 大体そんなんだから『シアワセ』踏んじゃうのよ~ばっかねぇ、人間って。
「なによ……さとる君の隣になりたいって言ったの、なみちゃんじゃない。 絶対見つけるまで帰らないもん」
………………………………………………………足の下よ。
そこじゃないわ。 もう! 仕方ないわねぇ。
「あ、あった!」
特別だからね。 全くもう。
アタシが咲く瞬間とか超貴重なんだからね!
はぁ、花咲かせてやるなんて、アタシも丸くなったもんだわ。
アタシはね、本当はお日様がポカポカ暖かい時に咲くのが好きなんだから。
あ~、もう、眠い眠い。 人間は早く気をつけて帰んなさい。
ん? 何よ? 何で戻ってくんのよ。 1個あればいいでしょうが。 欲張るんじゃないわよ。
「ありがとう」
……………………………ふ、ふん! たまたまよ! たまたま! いつもじゃないからね!
まぁ、また来たら? 今度は、その、早めに咲いてあげてもいいわよ。
あ、ちゃんと仲直りしなさいよ。
大抵『シアワセ』は足元にあるんだからね。 覚えときなさい。
さて、アタシも寝るわ、明日踏まれた葉を叩き起こさなきゃいけないからね。と、いうわけで、おやすみ人間。
また、明日『シアワセ』探しに来るといいわ!
待ってるから、ね?