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来訪者

 魔王城の門が、久しぶりに重々しい音を立てて開いた。

 剣とマントに身を包んだ若者が、慎重に一歩踏み出す。


「……魔王ディアボロス。討伐に来た」


 菜園でジョウロを持っていた魔王は、きょとんとした顔で振り返った。


「え、今? 来城の予約とかしてる?」


 勇者は拍子抜けしつつも剣を構える。


「情けをかける気はない。世界のためだ」

「……あのさあ。その『世界のため』ってさ」


 魔王は土を払って立ち上がり、静かに言った。


「誰が決めたの?」

「……」


 勇者は答えられなかった。


「答えられないの?」

「それは……。逆にお前はどうなんだ」

「なるほど、その疑問ももっともだな……よし、ちょっと話し合おうか」

「……まあいいだろう」


 二人は城の中で向かい合い、話し合いが始まった。

 そこで、意外な事実が明かされる。


「実は……」


 魔王は古い魔導書を開いた。


「この世界を『魔族と人類が争う構造』にしたの、初代勇者と初代魔王なんだ」

「……え?」

「平和すぎると、世界の魔力が枯渇する。だから『対立』を演じる役が必要だった」


 勇者は震えた。


「じゃあ、俺たちは……」

「言ってみれば、役者だよ。代々ずっと」


 沈黙のあと、勇者は剣を下ろした。


「俺、最近ずっと苦しかった。誰かを倒す理由が、分からなくて」


 魔王は小さく笑った。


「奇遇だね。俺も()()()()()が辛かった」


 二人は向き合い、深く息を吐いた。


「……もう、芝居やめない?」

「賛成」


 その日、魔王と勇者は「和解宣言」を世界に発した。

 魔王城は解放され、勇者は剣を置いた。


 対立の魔力は、代わりに“共存の魔力”へと姿を変えた。

 世界は崩れなかった。むしろ安定した。


 後年、歴史書にはこう記される。


――魔王が倒された年、世界は初めて本当の平和を知った。

――倒したのは、剣ではなく、話し合いだった。


 魔王は今日も庭でトマトを育て、

 勇者は隣で水をやっている。


「平和って、案外手間がかかるな」

「でも、前より生きやすい」


 空は晴れていた。

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