第6章
彼の名前は朝霧幽霊。
クリームパンを買うために、売店に向かって歩いている。
*
「ぬ……」
同じく、食べ物を買うために、楓も来ていた。
「幽霊だ。しかもリアルの」
この前にことについては、楓は根に持っていなかった。楽天的な性格のようだ。
ニヤニヤしながら後をつける。
「美涼の未来の……かもしれないし」
売店に入り、幽霊はクリームパンを手に取る。楓は惣菜のコロッケを手に取る。
幽霊はすぐさまレジに行く。
(やべ。また消えそう)
慌てて距離をとりながら、レジに並ぶ。
幸運にも、幽霊の後ろに並べた。幽霊のことだから、人間を操るかと思ったが、ここは楓の思い通りにいった。
事前に、小銭を出しておく。これなら、速やかに会計を済ませられる。
幽霊の会計が終わると、楓はすぐにお金を払い、会計を終わらせる。
「今回は逃さないぜ」
走って廊下に出るが、幽霊の後ろ姿は見えなかった。
「な……」
おかしい。楓が売店を出たのは、幽霊が売店を出た七秒後だ。そんな速く移動できるわけがない。どこぞの超生物先生じゃない限り無理なのに。
まさか、あの時と同じ方法で……?
楓の頭にはそれが巡り続けていた。
*
「つうことがあってさ」
楓は美涼の机に置いてあるいちごミルクを飲む。
「私に続いて、楓もか。でも、消えるタイミングが違うね。あと、私のいちごミルク飲まないでよ」
「言うのが遅い気がしない?」
いちごミルクを美涼の机に置く。
「まさか、楓のこと嫌いなんじゃない?朝霧くん」
美涼は少しからかって言った。
「私が乱暴する前から嫌いなの?」
楓は握り拳を作って続ける。
「まぁ、そうなのかな。そうなら拳で好きって言わせるけど」
「怖いよ」
「その前に幽霊はすぐに消えそうだけどね」
コロッケを食べ終えて机に肘をつく。
「んー。じゃあ、どうすればいいの?幽霊が美涼に“あんなことやこんなこと”しちゃったら」
「そんな野蛮じゃないと思うよ。それに、顔を見て話すんだから変な視線はないでしょ」
「あぁ、そう」
楓はグテーと体を倒し、腕を伸ばす。




