第23章
白川美涼は、昼休みの図書室である人物を見つける。
彼は一番上の本棚に、手を伸ばしているが届かないようだ。
「もう……また」
出会った頃の景色を見ているみたいだ。でも、違うのは朝霧幽霊が特別な人になったと言うこと。
「美涼、やらないの?」
隣にいる島風楓が後押しする。
「いや、行くよ」
美涼は幽霊に近づく。
「本、どんなのがいいの?」
「あー、ミステリーのー……」
美涼はクスリと笑う。
「なんか、懐かしいな」
美涼は少し背伸びをして、彼が言った本を取る。
「はい。これでいい?」
「えぇ、ありがとうございますー」
すると、美涼の手にある本を高く上げる。
「その前に、お礼、しない?」
美涼は近づいてきた楓に本を預け、手を広げると二人はギュッと抱き合う。
「ったく。バカップルが」
楓はニヤニヤして、皮肉を言うが、二人をじっと見る。
「美涼。それくらいにしな」
「えー、もうちょっと」
美涼は快活な笑顔で言う。
「まったく」
楓も静かに笑みを浮かべる。
十秒くらいたって、美涼は幽霊を離す。
「ごめんね。幽霊」
「いえいえ。いいですよー」
「そういえばさ、もう少しで夏休みだよね」
美涼は笑顔を幽霊に向ける。
「えぇ、そうですねー」
「どっか行かない?二人で」
幽霊の表情は変わらないが、喜んでいるのはわかる。なぜなら、彼のことは自分がわかっているから。それだけだ。




