第21章
美涼は家に帰って部屋に入ると、力なくベッドに倒れた。
(なんで恋愛映画なんて見ちゃったんだろ)
見終わった後、想像をしてしまった。自分が幽霊と付き合う。そんな想像を。恋愛映画でこうなるなんて思ってなかった。
大きなため息をついて、スマホを開き、幽霊にメールをする。
『今日の映画、面白かった』
すぐにスマホが振動する。
『そうですね。誘っていただいてありがとうございました』
美涼はスマホをベッドに置いて両手で顔を隠す。
「も〜やだよぉ〜〜」
自分の顔が赤くなっているのを、手にジワリと伝わる顔の熱さでわかっている。
こんなことは初めてかもしれない。
「…………ふーうー」
画面を切り替えて、楓に電話をかける。
コール一回で楓は出た。
『はいはい。どうしたの?美涼。自分からかけるなんて珍しいね。どうしたの?恋愛相談?』
楓の恒例の茶化しにどきりとする。でも、今回の美涼はそれを下手に誤魔化したりはしない。
「うん、そうかも」
『お、そうなのね?』
楓の声が跳ね上がる。
「なんかさ、映画を見終わって、ずっと幽霊くんと、その、付き合う妄想しちゃってるの」
『末期だねー』
陽気に笑いながら楓は続ける。
『もうさ、そんなことになってるなら告白しちゃえば?』
「こ、告白……まだ」
『早いって?そればっかだよ。思い立ったが吉日。善は急げ。それに、告白に早いってなくない?私、話したことがないような男と付き合ってたけど続いてたよ』
「…………」
『まぁ、ほんの三ヶ月だったけどね』
しばらく、楓の笑い声が聞こえる。
『まぁ、かっこいいこと言うけどね』
「……うん」
楓は声を少し低くする。
『恋愛の始まりは告白だ。まだ美涼はスタートラインに立っちゃいないんだよ』
「…………」
『どう?痺れた』
「…………ッハハ」
美涼の口から笑いがこぼれる。
「楓、かっこいいね」
『お?褒め言葉と捉えるよ』
「うん……」
美涼はまた軽く笑って言った。
「スタートラインに立ってみるよ」




