第18章
朝霧幽霊は夕方の道を歩いている。
「おや……」
そこには、今朝、美涼がクロと名付けた黒ネコがいた。夕焼けに紛れて、少し見にくい。
「エサが欲しくなりましたかねー?」
幽霊はしゃがんでクロの頭をゆっくりと撫でる。
「じゃあ、ついてきてくだーい。エサなら逌楽戯さんが場所を知ってるのでー」
クロはニャアと一声鳴くと、幽霊と一緒についてきた。
*
幽霊は家の扉を開ける。
「逌楽戯さーん。ネコが来ましたよー」
すると、ドタドタと階段を駆け降りて逌楽戯が来た。
「ほんとだ……」
逌楽戯は慌てて、ネコの餌を持ってこようとする。
「慌てないでくださいよー」
しばらくして、逌楽戯がネコ缶を開けて持ってきて、猫のそばに置く。
「ねぇ、ネコちゃん。食べ終わったら僕と一緒に寝ようねー。あの奇妙な名前の人はほっといて」
「失礼ですよー。あ、本を持っていきますからねー」
「はいよ」
幽霊は階段を登って逌楽戯の部屋に入り、本棚から本を抜き取り、自室に行く。
ベッドの上には美涼がプレゼントしてくれた、チーズ蒸しパンのぬいぐるみクッションがあった。
「あなたも一緒に読みますかー?」




