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第17章

 六月も中盤になる頃。五月の春を残した暖かさは消え、春が剥がれたような暑さがある。

「夏も暑くなる頃でございます」

 楓は急にそう言ってきた。

「まぁ、そうだね……ん?」

 美涼は目の前に見えるしゃがんでいる人物を見る。

「お、幽霊じゃん」

 楓はすぐに幽霊に駆け寄る。

「よぉ、幽霊」

「おや、おはようございますー。美涼さんも」

「み、美涼さん?」

 楓は美涼を見る。

「もうそんな親密な関係に。っていうか、この前の電話で……」

「いや、プレゼントをあげたから、『こう言うのやめよう』って。それに、なんというか、恥かしかったし」

「ちゃっかりしてやがるな」

 楓は幽霊に声をかける。

「幽霊。私も名前でいいからね」

「え?はいー」

 美涼は幽霊がしゃがんで撫でている動物を見る。

「……ネコ?」

「えぇ、たまに家に来るんですよ。撫でますかー?」

「え、いいの?」

「結構人に慣れてるんですよねー。この子」

 幽霊と美涼の場所が変わる。一瞬、幽霊と目が合い、彼の目がよぎる。

 そのネコは黒ネコだった。顔から尻尾まで真っ黒で、目は黄色い。

 美涼はその黒ネコをそっと優しく撫でる。

「わぁ、かわいい。名前ってあるのかな?」

 美涼が効くと、幽霊は首をかしげる。

「無いですねー。僕はネコとでも言ってますけど」

「じゃあ、クロでいいじゃん」

 美涼はネコを撫でながら言う。全員、しばらく沈黙していた。

「さ、行くよ美涼。遅刻しちゃうから」

 楓がクロを撫で続けている美涼をクロから引き剥がす。

「えーー。またね」

 そう言うと同時に、黒ネコはタタタと走って家の塀を飛び越えていってしまった。

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