第16章
幽霊の誕生日を祝い、家に帰った美涼は楓に電話する。
『なるほど。転びかけて幽霊に助けられたか。そりゃ、早く報告しなさいよ!』
美涼は耳からスマホを遠ざける。
「いや、でもさー……」
『しかも、私が教えたことをねぇ、無下にするとは。こりゃ、いちごミルクとミックスオレを買ってもらわなきゃいけない』
ちゃっかりしている友人に、美涼は苦笑いを浮かべる。
「でもね、温かったんだ。冷たくはなかったよ」
『じゃあ、幽霊は幽霊じゃないってこと?』
「……そうかも……ね」
美涼は微妙に頷く。
『あー、そうそう。どうだった?お姉さん』
「んー。あぁ、楓みたいだったよ。明るくて、気さくで」
『へぇー。じゃあ幽霊は私をお姉さんとして見てるのかな?』
「多分違う。あと、仲良さそうに話してたよ」
『なるほど』
楓は小さくあくびをする。
『ごめん。眠い』
「運動したの?」
『ううん。寝る直前に電話きたから』
「あ、ごめん」
『大丈夫だよ。楽しそうな話題ぽかったからね。こう言う話だろうとは思ったよ』
「勘がいいこと……」
『ほいじゃ、私はねるよー』
「うん。おやすみ」
『これ言うのが幽霊だったらって思ってない?』
急に楓が吹っかけてくる。
「……思ってない」
『あ、間があった』
「いいから寝なよ」
『たまに見るツンデレ。いただきました』
そう言って楓は電話を切った。
*
楓はしばらく電話画面の「美涼」という文字を見る。
「あーあ。尊いなぁ。さ、寝よ」
楓はベッドではなく、リビングのソファに転がっている。
「おい、楓」
名前を呼んだのは、、楓の兄だった。
「ん、なに?兄貴」
「ソファじゃなくて部屋で寝ろよ。お前、部屋にベッドないのか?それとも、酔っ払いか?」
「あるよー。でも、ここで寝るのが気持ちいーんだよ」
「呆れたな。俺にはわかんないな。そう言うの」
「寝れれば同じだと思ってる人だー!」
「風邪ひいても知らないからな」
ムキになったのか、兄は低めの脅しをして自分の部屋へ戻っていった。




