第14章
美涼と楓は近くのゲームセンターに入る。
「へぇー。珍しいね。こんなところに美涼が行くなんて」
「うん。なんかないかって探してたら……」
美涼は足を止めて、あるクレーンゲーム台の前に立つ。
「これがあった」
「こ、これは……!」
そこには、美涼の上半身まである大きいチーズ蒸しパンのぬいぐるみクッションがあった。
「でっかいなー」
楓は驚いている。
「なるほどね。幽霊に合いそう」
「ね、そうでしょ。朝霧くんって甘いものが好きそうなんだよね。だから、これでどうかなって……」
珍しく、美涼は喜んでいる。
「で、この前四回くらいやったんだけど、掴めることは掴めるんだけど、どうも変な方向に跳ねちゃう」
「ほほほのほー。なるほろ」
楓は財布を出して二百円を取り出すと、アームを動かし、ぬいぐるみの上にアームを下ろす。
ぬいぐるみは持ち上がって落ちると、ボールのように跳ねて穴のすぐ手前に近づく。
「え、楓。すごい」
「運だよ。こういうのは」
美涼も財布から二百円を取り出す。
「手柄を横取りか……」
楓がそうつぶやく。
「ま、やりなよ。その方が幽霊も嬉しそうだし」
美涼は二百円を入れ、アームを動かす。
ボタンを押し、アームを降ろす。持ち上がり、取り出し口の真上に行く。
「お……」
落ちるかと思ったが……
「あれ?」
なんと、いい感じにはまってしまった。美涼も楓もはまったぬいぐるみを凝視する。
「おかしい」
「おかしいね」
すると、奇跡の声がかかる。
「どうかしました?」
店員が来て、二人は事情を説明する。
店員は慣れた手つきで鍵を開け、はまったぬいぐるみを取り出す。
「おめでとうございます」
その声と共に、美涼の手にぬいぐるみが渡る。
*
店員から袋をもらい、ぬいぐるみを入れる。
「結構大きいね」
「うん。だいぶ」
「このまま渡すと、ダメだよね」
「そうだね。でも、どんな袋がいいんだろ」
「…………あ、そうだ」
楓はあることを思いつく。
「ん?」
「家にそれくらい大きい小洒落た紙袋があったはず」




