12章
朝霧幽霊は靴を履き、校舎から出る。すっかり日が沈み始めている。
*
美涼はベッドに転がっている。
「どうすればいいんだろ」
麗喜から告白された。だが、幽霊はどう思っているのだろうか。そんな疑問がふつふつと湧いて出る。幽霊から思いを口にして欲しかった。でも、彼は表情を変えなかった。美涼のことを異性として見ていないのだろうか。
段々、不思議さが湧いてきた。
どうして、彼は自分を異性として見ないのだろう。もしかして、恋愛に興味がないのだろうか。
「……………」
*
「あらら。断っちゃったのねー。まぁ、これからこれから」
楓は呑気に紙パックのミックスオレを飲んでいる。
「そこでね、思いついたの」
「ワットゥ」
楓は英語を発し、机から身を乗り出す。第一ボタンを開けているせいで胸が少し見えている。
「私、朝霧くんを知ってみようと思う」
「おー。ほんとの研究者だ」
そして美涼はバッグから一冊のノートを取り出す。
「なんじゃそりゃ」
「朝霧くんの研究ノート」
美涼は見開きの一ページを見せる。
・霧のように消える
・熱中症を日射病と呼ぶ
・昼休みと放課後に図書室にいる(多分、ミステリー小説が好き)
「なるほろのグラコロだね」
楓は感心したかのような顔をする。
「そこで……」
美涼はある計画を言う。
「朝霧くんの誕生日。お祝いしようかなって」
「おーー。でも、喫茶店でお祝いとして奢ったんじゃなかったけ?」
「そこは……朝霧くんと話すよ」
*
「へぇー。断ったんですかー」
幽霊は本を閉じて美涼を見る。
「うん。だから、どうかな。朝霧くんの誕生日……」
「大丈夫ですかね。僕はあなたの友達のように親しくはありませんからー」
「でも、私の中では友達なんだよ」
「……えーー」
幽霊は困った声を出している。
「いや、強情だと思うけどさ……」
美涼が言うと、幽霊は観念したような声を出す。
「わかりました。プレゼントはどっちでもいいので」
「ありがとう」
「ですが、当日は待ち合わせですー。この前と同じ公園ですよー」
「うん」
美涼は笑みを浮かべてそう返した。




