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11章

 幽霊と別れた廊下からしばらく離れたところの空き教室に二人は入る。

「それで、話……って?」

 美涼は途切れ気味に話す。

「あー……ん」

 彼は覚悟が決まったような顔をする。

「付き合って……ほしいです」

「ふぇっ」

 思わず、変な声が出てしまう。そういえばと美涼は思い出す。

(楓と話してる人だ……)

 この男子はたまに楓が廊下で話している人たちの一人だ。美涼も何回か見ているが、興味がなくおぼろげだった。だが、こうして不思議と思い出した。

「いや……んー……」

 美涼は照れくさいのか、そっぽを向く。

 ふと、幽霊がよぎる。彼は美涼が好きなのだろうか。

「ちょっっと、考えさせて」

 美涼はそう言い、部屋を出て行った。


            *


 楓が頼んできたいちごミルクを買い、教室に戻る。

「あ……いた」

 階段で楓と会う。

「長いから心配したよ。どしたの?」

 なにも知らないような調子の楓に、美涼は少し安堵する。

「それが……」

「あ、その前にいちミルちょうだい」

「……さりげなく略さないでよ」

 美涼は顔をほころばせる。

 楓はいちごミルクのフタを開け、一口飲む。

「話を聞きたいけど、ここ、階段だからね。教室で話そっか」


            *


 美涼は一連のできごとを楓に話す。

「ほほーう。告白ねー」

 美涼に“うるさい”と言われたおかげか、楓は声を多少抑えている。

「その特徴からして、麗喜(れいき)だね。バスケ部」

「楓って、すごいね。ああ言う人と友達なんて」

「ほんで、麗喜に告白されたか。まぁ、いいんじゃないの?そこそこかっこいいし。運動神経もいいし」

 楓は楽天的な人だ。今まで、二人と付き合ってたせいか余裕が見える。

「いいんじゃないのってね……」

 美涼はため息をつく。

「もうこう言うの分からないんだよねー。ほんとに」

「へぇ、珍しいね。ま、恋愛には不慣れだからね。美涼は。まったく。思い切ってオッケーしちゃえばよかったのに」

 楓は少し落ち込む。

「でも、朝霧くんが……」

「じゃあ、麗喜に『この人と付き合うので』って幽霊を出せば?」

「あのねぇ。そう簡単に、楓みたいな真似できるのならやってるって」

「私を比較対象にされてもねぇ」

 楓は再度いちごミルクを一口飲む。


             *


 美涼は、放課後の図書室に来ていた。

「…………いた」

 そこには黙々と本を読んでいる幽霊がいた。美涼は幽霊に近づく。

「おや、どうもー。白川さん……」

「本、あったんだ」

「えぇ、今日見たらあったのでー」

「…………隣、いいかな?」

「……いいですよー」

 美涼は幽霊の隣に座る。

「どうしました?疲れてるんですかー?」

 幽霊は美涼を見て言う。心配しているのかもしれない。

「んー。ま、そうだね。あのね……」

「えぇ……」

「告白、されたの」

 幽霊は微笑のままで美涼を見ている。

「まだ返事はしてないけど、どうすればいいかなって」

「…………どうして、僕に?」

「いや、なんか、友達じゃ頼りないかなって。確かに、おんなじ女の子で(あっち)が恋愛もしてるよ?でも、それだと、違う」

「…………」

「あぁ、ごめんね。こんな相談しちゃって」

「……いえいえー」

「じゃ……」

 美涼は椅子から立ち、図書室を出る。


            *


 美涼は内ばきから外ばきに変え、校舎から出る。

「白川さん……」

 振り向くと、麗喜がいた。

「返事……どう?」

「あー……ごめん。ちょっと。まだ」

「…………そっか。じゃ、また」

 麗喜は友達を待っているのか、校舎に戻って行った。

 美涼はため息をついた。

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