金の切れ目が縁の切れ目
女子だけの剣術大会と、水着が似合う南国の海!
どちらも、命を落とすほどに刺激的!?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DNMBVV8L
『火事です! 火事です!』
夜の住宅街に、1km先まで聞こえそうな大音量で、合成音声が叫び続ける。
それを聞きつけた近隣に動きがあり、玄関ドアなどから出てきた。
車の運転席から、それを見届けた俺は、冷静に告げる。
「出してくれ」
『りょー!』
可愛らしい声のカペラ。
黒い高級車は、俺たち3人を乗せたまま、帰路に就く。
玄関ドアを開けっぱなしで俺が仕掛けた装置による合成音声が、だんだん遠ざかっていった。
(あの白骨死体の棚に置いたから、嫌でも気づく……)
サイレンを鳴らした緊急車両とすれ違いつつ、座ったままでぼやく。
「仲四氏真琴である確認は……警察の仕事だ」
あの白骨死体で立証するところまでは、面倒を見切れん。
警視庁のサポートチームには、報告済み。
今ごろ、警視総監がここの県警本部長にでも話しているだろう。
『検問だよー!』
「ワープする」
次の瞬間に、景色は東京のレジデンスの近くへ。
後部座席で、天ヶ瀬まりんの声がする。
「今ので、バレたのでは?」
「どうでもいい! この1回では誤作動もあり得るし、んなことを報告書に書いた日にはそいつが左遷されるだけだ……。位置情報は切っているし、追跡していても関係ない」
その気になれば、遠隔操作で盗聴やらもできるらしいが。
とにかく、眠い!
レジデンスの屋内駐車場に入り、車が停まった時点で、全員が息を吐いた。
「はい、終わり終わり! 深夜1時か……。思ったより、時間がかかったな? 降りるぞ!」
ガチャッと、それぞれのドアが開く音。
女子2人を見れば、とても眠そうだ。
「あの白骨死体で決まりだろうし、俺の家で休むか? 客用のマットレスとかは、ある……かな? ゲスト用の部屋でもいいが」
パンッと手を叩いた『まりん』が、すぐに応じる。
「いいですわね! さ、参りましょう?」
まりんは、未来の母親となる天ヶ瀬麗の手を引き、俺の顔を見た。
「明日の午前中までは、ゆっくりできるだろう」
屋内を歩いて、俺の家へ。
元々、家族で暮らすための間取りゆえ、不都合はない。
――翌日の朝
警視庁から、電話がかかってきた。
『――そういうわけで、仲四氏の偽者は県警が緊急逮捕しました!』
警視総監が本気だけに、怖い怖い。
(検死だって、かなりの順番待ちだろうに……)
それができる人間を叩き起こした。というか、医療の上にいる人間に頼んだってところ。
「俺たちは、これで降りますよ? 報告書を書けとは、言わないですよね?」
『ハッハッハッ! むろん、書類はこちらで作ります! あとは大丈夫だと思いますが、話が続いた場合はご連絡しても?』
「あー、はい! このスマホは処分するんで、レジデンスの代表電話にお願いします」
『承知いたしました! いやー、これで首が繋がりましたよ!! ほんっとうに、ありがとうございました!』
俺の専属だった班の責任者である野見山も、これが失敗したらタダでは済まなかったらしい。
非公式とはいえ、警視総監が俺に土下座してのお願いだからな……。
担当するのは、総監の懐刀か、切り捨てても痛くない問題児のどちらか。
いずれにしても、失敗すれば良くてクビ。
(下手すれば、殺されかねんな、マジで……)
ともあれ、麗たちとゆっくり過ごした後で、家族の時間を得た『まりん』はご満悦のまま、カレナに連れられて行った。
仲四氏真琴の口座は国内外を問わずに凍結され、金をもらえなくなった奴らは手のひらを返した。
アバターによる配信チャンネルも、アカBAN。
ネットで検索しても、仲四氏の遺産がどこかにある? という、第二の埋蔵金になっているようで。
それを知っていそうな地元の中学の卒アルが流出して、特定された卒業生が今ごろになって襲われるなど、散々だ。
久々に自宅でゆっくりしている俺は、ボソッと呟く。
「同じ中学だった奴らには他人事で、大迷惑だ。しかし……」
「当時の仲四氏も、助けて欲しかったんでしょうね?」
俺の膝の上に座っている麗が、続きを述べた。
「ああ……。ま、気持ちは分かると言ったが、別に仲四氏はどうだっていい」
「そうですか……」
息を吐いた麗は、自分のスマホを見た。
「仲四氏と会っていた配信者も、襲われたり、警察に事情聴取をされたりしてますね?」
「大金が絡むと、誰が情報を流すか、分かったものじゃないさ!」
自業自得という雰囲気に、麗は反論しない。
俺は、ヌイグルミのようなポジションの彼女を見た。
「今回は、お疲れ様」
「いえ! 私は、重遠さんと一緒にいただけで……」
『まりん』との約束でもあるし、麗と過ごすために南乃詩央里に許可をもらう。
電話が終わった後で、麗がおずおずと言う。
「あの……。気が早い話ですけど……。わ、私たちの娘ができたら、是非つけたい名前があるんです」
ゆっくりと息を吐いた俺が促すと、彼女は告げる。
「まりん、と……」
「いいんじゃないか?」
俺が肯定したら、麗は微笑んだ。
(鶏と卵は、どちらが先なのか?)
そんな哲学をしていたら、いつもと変わらない衆議院選挙のニュースが流れる。
大多数の人には、世は全てこともなし、だ。
過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31




