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生きる(その一)

 生きるって何だろう、死ぬって何だろう。生きることに意味はあるのだろうか。死んだ人のことに想いを巡らせた。入院中に世間ではいろいろな不幸な出来事があった。トルコで大きな地震があり多くの人が死んだ。年が明けてからまだ数週間しか経っていないのに、この間、有名人がいつもの年より多く死んでいるように思えた。まだウクライナでは戦争が続いている。驚いたことに近所に住んでいる人も亡くなっただそうだ。一人は同じマンションの一室を買って間もない人であり、向かいに住んでいた人である。もう一人は娘の小中学校時代の同級生の父である。

 死んでゆく人が死に際に何を思っていたかを知る由もない。一方、障害者になって生き残った人は何を思っているのだろうか。そちらの方に興味が湧く。周りに障害者になり生き残った人は大勢いるが聞くことはできなかった。また、親しい人を亡くした人は何を感じているのだろうとも考えた。死んでしまう人より生きている人の方が辛いこともある。死を意識する病気を患って生き残った身としては、良くも悪くもなぜ俺が生き残ったんだろうと考えてしまう。世の中には「失うものはあったが、生き残れて良かった」と思う人もいるだろう。「生き残れたが、失うものが大き過る」と思う人もいるだろう。人それぞれだが、病院に居ると「生き残れてよかったね」と思える患者もいれば、「生き続けるのは辛いだろ」と思ってしまうような患者もいる。

 人が死んだら将来への期待は無くなるが、生きていれば何かが起こることを期待することができる。例えば、音楽家などのパフォーマー。死んだパフォーマーによる生のパフォーマンスはもう望めず、新たなパフォーマンスによる感動はもう期待できないが、生きているパフォーマーの生のパフォーマンスはまだ体験できる可能性があり、その人が死ぬまで新たなパフォーマンスを体験できる機会を待っていることができる。将来の変化を作ったり見たり、期待するために人は生きているのだろうか。それもあるかもしれない。子供達が老いる頃にはいろいろな出来事を期待でき、そのさまざまな出来事により素晴らしい光景が広がっているかもしれない。

 不変なこともある。この世に生まれた生き物は、人であれ虫であれ共通の出来事は最後に死ぬことである。そう考えると、生まれてきたことは不幸なのであろうか。よく考えてみたい。

 発病前は、余生はゴルフに、旅行、それに適度な仕事と親しい人との付き合いができれば満足だと漠然と考えていた。しかし、それらを達成してもただそれだけのことである。何年生きるかにより、または老いの進み具合により、何をどこまで出来るかが違ってくる程度のものだ。死ぬのが早いか遅いか、老いるのが早いか遅いかだけの問題なのか、余生は。だとすれば今は余生に計画した全てのことが実行不可能だから、いつ死んでも大きな問題ではないのかもしれない。

 帝国ホテルの旧館に「オールドインペリアルバー」というバーがあるらしい。「学生のころから毎晩そこで過ごすことが夢だった」(2023年4月2日「日本経済新聞電子版」より)との記事を読んだことがあるが、夢とはそんなものかもしれない。その夢が叶っても「経済的に成功した」程度の意味を与えるものでしかなく、自己満足の世界に浸る程度のものでだろう。

「死ねないから生きるのか」。病院に入院している老人を見ているとそう思えてくる。生きていればみんな歳をとる。若い人たちもいずれは年寄りになる。若い頃は、「人生、楽しみたい」と思っていた。若い頃は、何か将来への希望とか憧れがあった。死ぬ時に「希望の一つでも達成し、何て楽しい人生だったんだ!」と思えれば幸せだと想像していた。でも、そうでもないらしい。死ぬのは精神的にも肉体的にも結構大変なことのようだからである。では、どう生きれば・・・生きている意味は?「楽しみたい」だけでは意味など無いように思う。その一方で、そもそも生きる意味など必要なのかとも思う。ある一瞬一瞬を楽しむような刹那的な生き方でも幸せのようにも思う。

 死ねないから生きている?恐ろしいので、このような病状でも自ら死を選択する気にはなれない。ならばこちらの世に居るしかないのではないか。そうであれば、ここに居る間、大いに楽しめばよいのでは?ここに居るしかないから、多くの人がここでの楽しいことをいろいろ考えているのだろう。映画や音楽、旅の企画もスポーツそうだ。だからそれらを利用して楽しく生きればいいのかもしれない。今までのように。


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