第80話 少女を救え!
サンドリッチの冒険者ギルドだった建物の前に到着する。
無人の廃屋と化してはいるものの、併設されていたキッチンやバーカウンターなどはそのまま使えそうだ。
再利用できる物がそのまま残されているのは好都合だ。私はノゾッキーたちに指示を出し、冒険者ギルドを誰でもウェルカムなレストランへと作り変えていく。
外観工事に拭き掃除、冒険者ギルドの看板をぶち壊してレストランの名前の入った看板へと差し替えていく。
「おし、てめぇら! パーティー会場をさっさと仕上げるぞ! チンタラやってるヤツがいたらセッシャがブッ飛ばす、いいなッ!」
「「「全開バリバリ、問題ありやせん!」」」
「オッケェエイ! 全員、ぶっ込んでくんでヨロシク!」
「「「ヨロシクゥ!」」」
ノゾッキーの掛け声の下、100人からなる魔王軍爆走愚連隊の手によって、瞬く間に冒険者ギルドはレストランへと姿を変えていく──!
そして、ボッケルたち数名はバイコーンに積んだ食材や調理器具を運び、またある者は人族にカレーを無料で提供する告知用宣伝チラシを親しみやすく色鉛筆で描き始める。
各々がドラゴンカレーを作る下準備に汗を垂らす中で、私はカレーを作る第一肯定に取り掛かっていた。
メイン具材であるワイバーンを捌こうと手のひらにミスリル製の包丁を握る。
その時だった。
冒険者ギルド改め、『MA・王様のレストラン』の入り口からノゾッキーが私の方へと歩み寄る。
サングラスをクイっと調整しながら、私に言った。
「魔王様。セッシャが屋根の修理をしていたら、外で街の兵士が子どもをいじめてるのが見えまして……いかがいたしましょう?」
報告によると、子どもからパンを取り上げているゴミのような人間がいるとのこと。
「いかがも何も、そんなヤツを私が許しておくわけないだろう? そのアホンダラにはゲンコツをくれてやらねばだな……! よし、私は先に行く、ノゾッキーお前は後から来い」
「押忍!」
私はミスリル包丁をまな板に置き、瞬間移動で報告のあった場所へと急行する。
するとそこには、少女から乱暴にパンを奪っているサンドリッチの兵士がいた。
「返して! あたしのパン返してよぅ! うわぁあああん!」
泣きながら懇願する少女に、兵士は理不尽な言葉を投げつける。
「はん、返すかよ! お前たちのモノは存在含めて全て、【アクーダ・イッカン】様の物と決まっているんだ!」
そう言って、兵士が大砲のように太い腕で少女を叩こうとする。
しかしそれは空振りに終わった。
振り下ろされる手の動きより早く、超高速で移動した私が間に割って入り、少女を庇うと同時に。
私は、兵士の汚い顔にアイアンクローをしていた。
「ぐぇっ! だ、誰だお前は……!」
「ふん、お前のようなゴミに名乗る名前などは持ち合わせていない。……お前、暴力を力無き者に降りかざして神にでもなったつもりか? クズが! 恥を知れ!」
「ぐぐぐ……! て、てめぇこのオレ様が【アクーダ・イッカン】様の兵士と知ってるのか……!? こんなことしてタダで済むと……ぴぎぃっ!」
私は喚く声を無視して、アイアンクローをしたまま男を大地へと叩きつけていた。
私は豚のような悲鳴を上げる兵士の顔を掴んだまま言う。
「知るか! お前のようなゴミがどこの誰だろうと関係ない!」
「く、クソ野朗が……! てめぇマジでぶっころして……」
激怒する兵士の言葉は尻切れになる。私はなおも力を込めて大地に兵士の顔を押し付けていく。
「できるものならばやってみろ人間! いくらでも受けて立ってやる。お前に死を賭して挑む覚悟があるならな!」
顔に怒りを滲ませて、私は再び兵士の顔を持ち上げて大地に叩きつける。
すると、「ごべっ!」と汚い叫び声を出した兵士は数分後……身体をピクピクと痙攣させ、無様な姿を晒していた。




