第74話 タイマンだコラ!
ワイバーンを前にして、私は握った拳を反対の手で包み込み、「ボキボキ」という音を鳴らし、威嚇のジェスチャーをする。
私はワイバーンに向けて大きく声を張り上げた。
「たかがドラゴン種の分際で、調子に乗るな! 私の部下たちを痛めつけたその罪、カレーの具材となって懺悔するがいい! 覚悟せよ!」
言葉も威嚇も、モンスターであるワイバーンには意味がない。そんなことは私も理解している。
しかし私は魔王軍の頂点にして魔王。
私に視線を向けている配下たちに、希望と熱意を与えることは組織のトップたる私の使命。
私は部下の魂を震わせる魔王でありたいのだ。
「ウチの魔王様は世界一カッコいい最高の指導者だ」
と皆に思わせて初めて、一流の魔王だと私は思っている。
とはいえ、クッソダサい特攻服の上に、かわいいヒヨコの絵のエプロン姿の私で今は少しカッコつかないけれど……!
そんな私を見た魔王軍爆走愚連隊たちは……。
「魔王総長ぉおおお! 渋い、渋すぎるぅうう!」
「おいドラゴンヤロー! てめぇー死んだぞ!?」
「魔王総長、そんなシャバいワイバーンなんか秒でシメちゃってください!」
と、期待を込めた目で下っ端感満載の声を上げだした。
いいだろう、お前たちの期待に応えようじゃないか。
それにだ。私からしたら、ドラゴン種など少し身体がデカいただの爬虫類に過ぎない。
というのも、生物界最強種と言われるこのドラゴン種にはさまざまな弱点がある。
たとえば共通するのは喉元の逆鱗、鱗と鱗の隙間だったり、種類によっては属性魔法も効果的だ。
今回はサンドリッチの街に肉を新鮮なまま運ぶことを考え、私はワイバーンに氷属性魔法でトドメを刺すことを考えている。
肉を柔らかくするためにワイバーンをフルボッコにするのも悪くない。
そんなことを考えたその時だった。
「グォアアアアアアアアアアア!」
ワイバーンが私を蹂躙すべく、突っ込んでくる。爪や牙、尾っぽからのブレスに至る連続攻撃を私は全てかわし──!
瞬間移動でワイバーンの顔ギリギリまで移動すると。
「柔らかい肉になれッ!」
私はドラゴンの頬を気合いと共に殴りつける。すると、ワイバーンは断末魔のような咆哮をあげていた。
再び瞬間移動。
間髪入れずに大地を蹴り上げて、強烈なアッパーをワイバーンの喉元目掛けて叩き込む。
そのまま空中へと浮かび上がるワイバーンの身体。それを撃ち落とすように、私はトドメのブローインパクトをワイバーンに振り下ろした。
すると、「グォオ……」と、やがて小さく薄れていくワイバーンの咆哮。
巨体が地響きを立てて轟音と共に横倒れになり、白目を向いたワイバーンに、私は両手に込めた魔力を解放する。
両手を前にかざし、ワイバーンに向けて氷属性魔法を撃ち放つ。
「凍てつき氷結する監獄!」
撃ち出された氷属性魔法がワイバーンに触れると、瞬く間にパキパキと音を立てて凍結していくワイバーン。
やがて氷は徐々に肥大化し、ワイバーンを包んでいく。
そうして、私の前には生物界最強種ではなく、その生涯を終えてこれから美味しく調理される、氷づけになった肉がただ転がっているだけとなった。




