第70話 ノゾッキーと魔王の出会い (視点ノゾッキー)
セッシャはかつて、魔族の間ではヤンチャで有名だった。
【覗鬼爆走愚連隊】というバカ丸出しの名前の暴走チームのリーダーで、気性が荒い仲間を引き連れては毎日バイコーンで暴走する迷惑なヤツだった。
そんなセッシャがなぜ、魔王様の直属の配下たる四天王になってしまったのか。
答えは簡単、セッシャたちは全員叩きのめされたのだ。
しかも魔王様たった一人に。
話はだいぶ前に遡るが……セッシャたちのせいで夜も眠れない、夜中に子どもが起きちゃうといった問題を魔族のみんなが抱えていたことがあったらしい。
とはいえ、ツッパることがセッシャのたったひとつの勲章で、生きがいだった。だからセッシャはそんなことは皆目気になどしていなかったのだ。
……そんなある日の夜だ。
一人、この問題を解決しようとセッシャたち【覗鬼爆走愚連隊】を呼びつけて注意してきたのが、目の前の魔王ヨルケス・ブーゲンビリア様だった。
彼がたったひとりで現れたことに腹を立て、100はいるセッシャたちは殺気立ち、怒涛の罵声を魔王様に浴びせかける。
「なめてんのかコラ! お前が一人でセッシャたちを相手にできると思ってんのかぁ!? いてまうぞオラァ!」
イキり散らすセッシャに、魔王様はこう返事をする。
「ふん、お前たちのようなザコは私一人で十分だ。おまえたち、人数で上回るから強くなったつもりでいるのではないか? バカが! ほんとうの強さを教えてやるから死ぬ気でかかって来い! 戦ってやる!」
そう言って、両手に魔力を込めた魔王様はセッシャをまっすぐに見据えた。
そして始まる大乱闘……魔王様の魔法と格闘術にバタバタと倒れていくセッシャたち。
そして、大人数相手にも関わらず無傷で立っている魔王様の姿を見たセッシャは、弱々しくこう言った。
「セ……セッシャの負けだ。あんたには勝てない」
すると魔王様はこう言った。
「ふん、その割にはお前、何度も立ち上がり私に向かってきたな。カッコいいなお前。気に入った、私の下で働け。四天王の座をくれてやる」
「し、四天王だと……! あ、あんた一体何モンなんだ?」
へたりこんでいるセッシャは魔王様を見上げて言う。すると魔王様は平然と言ってのけた。
「私か? 私はそのうち魔王になる男だ。私と一緒に来い、お前に覚めない夢を見させてやる」
衝撃的で、クールだった。まるで雷に打たれたように……って、実際に雷属性魔法を喰らっていたのだけども。
度胸があり、その強靭な覚悟と尋常ならざる肝の据わり方に、セッシャは男として一目惚れしてしまった。
おっと、セッシャはビエルと違って、女好きなのだけは言っておく。
とまぁ、事実『魔王になる』と言ってのけた彼は、ほんとうにあっという間に魔王と呼ばれる存在になったのは驚きだ。
……──会議室の中、セッシャの配下と通話を終えると、魔導水晶板の画面をふと見る。
待ち受け画面に設定してあるのは、『覗鬼爆走愚連隊』改め、【魔王軍爆走愚連隊】のメンバー全員。
中央にはイヤイヤそうな顔をして、セッシャが刺繍を入れた特攻服を見に纏う魔王ヨルケス・ブーゲンビリア様。
そういえばこの時、彼はまだ魔王じゃなかった。
しかしセッシャは希望を込めてさっそく、チームの名前を【魔王軍爆走愚連隊】にしたんだっけな。




