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第69話 魔王軍幹部会議! ②


「私のユーナが凶悪なドラゴンと、血も涙もない悪徳領主の成敗に向かおうとしている。このままでは私のユーナが領主に会う前にドラゴンの胃袋の中だ。いいか、全力でこれを阻止するのだ!」


 まだまだ続いている魔王軍幹部会議。


 私が三人に視線をやると、ノゾッキーもビエルもロリエラも、頷きながら珍しく真剣な表情で聞き入っていた。


 私はさらに続けて言う。


「まず第一に、私は弱きを打ち据える者や女、子どもに手を出すバカが反吐が出るほど大嫌いだ」


 四天王たちから向けられる視線のなかで私はそう言うと、幼き日々のことを思い出していた。



 ……──忘れもしない10年前──



 私とユーナはかつて、魔族と人族の戦いのせいで……家族を失った。


 焼け野原になった街。魔族も人族も相討ちになって、生き残ってたのは私とユーナだけだった。


 耐え難い悲しみの中で、子どもだった私たちには生きていくには過酷な時代だった。


 当時は一日一日をなんとか生きるのが精一杯で、私たちはモンスターだって食べたくらいだ。


 よく私たちが食べたのはミノタウロスの肉。


 きちんと味付けと調理をしなければ美味しくないし、とてもじゃないが食えたものじゃなかった。


 それでも私たちは……生きるのに必死だったんだ。

 生きるために、食べられるものならなんでも食べた。


 おかげでユーナは体調を崩し、私が回復魔法で彼女を癒すこともしばしばあったが……そんなある日の夜、二人で好きな食事はなんだったか語り合った。


 奇遇なことに、私とユーナの大好物の料理は同じで、『お母さんのカレーライス』


 そんな彼女にどうにかしてカレーライスを食べさせてやりたくて……私は焼け野原になった街から、何か使えるものはないかと、瓦礫の中から鍋や包丁なんかの調理道具を探し出していた。


 そして、生まれて初めて包丁を握った。

 当然、使い方なんてなっちゃいない。ドがつくほどヘタクソで、手のひらをぼろぼろの傷だらけにしてようやく完成したのはカレーみたいなモノ。


 どうして種族の違う彼女にそこまでしたのかって? そんなの決まっている。


 私は男だから泣きたい気持ちを我慢することができたが、ユーナは女の子だ。

 大好きな父も母も失って、どうして笑顔になれるってんだ。


 彼女の深い悲しみを計り知ることなんて、できるわけがない。


 毎晩シクシクと泣きながら眠りにつくユーナを見て私は……少しでも笑顔になってほしいと思ったんだ……!


 もちろん、最初の頃は料理なんて上手くできるわけなんてない。


 クッソ不味く仕上がったモンスターカレーを泣きながら、二人で食べたのを記憶している。


 そんな私たちに少しずつ笑顔が生まれたのは、ユーナが私のカレーを「おいしいね!」と言ってくれるようになってからだ。


 少し時間はかかったが、徐々に私の料理のレベルも上がっていく。


 それに付随してユーナから、


「ヨルケスのカレー、お母さんのと同じくらい好き」


「元気がでよる」


「もっと食べたい」


 そんなふうに言われることが増えた。


 その言葉は私にとって、これ以上のない喜びを感じさせてくれるものだった。


 ユーナの笑顔って、とってもかわいいんだな。


 

 そう思った瞬間だった────……



 そんなことを思い出したのは、今日トゥースの街の冒険者ギルドで【サンドリッチの街】の現状を聞いたからだ。


 悲しいことに、そこに住む者たちの多くは暗い未来しかない。子どもたちも腹を減らしているという。


 彼らは食べるものもなく、逃げることもできず、ただひたすらに領主の労働力として生きて、悲しみのうちに死んでいくのだ。


 ……私は、魔族だろうが人間たちだろうが、私やユーナの過去の辛さを子どもたちに味わってほしくない。そう思っている……!


 と、私は三人に告げる。


 すると、目頭が熱くなったのか三人とも涙を堪えてるようだった。


 ロリエラはクシャクシャになった顔で、ティッシュで思い切り鼻をチーン! とかんでいて、ビエルは人差し指で涙を拭う。


 ノゾッキーは……ポケットチーフと取り出し、サングラスをクイっと上げて涙を押さえていた。


「……と、いうわけだ。ドラゴン討伐は大元の『ユーナのレベルを上げさせない作戦』でもあるのを忘れるな。それにだ、そんな悲しい街の現状をユーナが見たらどう思う? きっと胸を痛めて悲しむだろう。ならば私が取る行動はひとつだ」


「うんうん。まおーちゃまやさしいでちね! あたちはさんせーでち!」


「うむ、ありがとうロリエラ」


「もちろん俺も賛成だ。魔王様のためにひと肌もふた肌も脱ごう、なんなら全裸にもなるさ」


「いや、全裸はいらないがビエル、協力頼むぞ? でだ、ノゾッキー。私の言いたいことは理解しているな?」


「もちろんオーケーです魔王様。さっそく呼び出しましょう……セッシャの配下たちを!」


 ノゾッキーはそう言うと、スーツのポケットから魔導水晶板を取り出して、すぐさま耳に当てる。


「あー、もしもし? 【魔王軍爆走愚連隊】特効隊長の四天王ノゾッキーだ! 全員会議室へダッシュで集合、魔王総長がお呼びだ! 気合い入れて来いッ」


 ノゾッキーの豪快に張り上げた声が再び、会議室に響くのだった。


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