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第61話 アイドル俳優?


「ま、まぁ人には趣味や価値観の違いがあるからね……」


 アイドはそう言ってガクリと肩を落とした。


 仕方ないだろう。何を隠そう、シャンプルは大聖女でありながら、男と男の純愛作品、ボーイズラブなジャンルが大好物なお腐れなのだ。


 つまるところ、アイドが示した作品は彼女のお気に召さなかったらしい。


 そこへと、ユーナがアイドに言う。


「そんなことよりアイド、ユーナ何回も言っとうよね? ユーナたちは4人パーティーなんやからこれ以上人数増やさんて。やから、一緒に冒険はせんよ?」


「そんなぁ、ユーナさん! つれないこと言わないでくれよ! って……4人? 君たち5人いるけど……?」


 私とキノコ、シャンプルにゴリラを順番に視線を向けると、最後にまた私に視点をロックオンする。


「ん? なんだナル男。私に何か文句があるのか?」


 ギリリ! とアイドが歯がみして言う。


「おかしいな? 勇者パーティーは、オレが聞いた話しだと美女と美少年、それと野獣で構成されてるって。君、何者だい?」


「不躾に失礼なヤツだなお前。いいだろう教えてやる、私は魔王軍の頂点にして魔王、ヨルケス・ブーゲンビリアだ」


 アイドへ私が自らの素性を伝えると、ヤツはなぜか、ふふん、と言ってキラッ! と白い歯を輝かせる。


「あはは! おもしろい冗談を言うね君は! まさかユーナさんに雇われた旅のコメディアンかい? 魔王と勇者がともにいるなんて、お伽話でも聞いたことがないぜ? ま、なかなかのジョークだ、このオレが褒めてやろうじゃないか」


「コメディアンじゃない、魔王だ。お前も話し聞かない系か?」


 しかし、アイドは「うんうん、もういいから。ジョークは二回言うもんじゃないぜ? ピン芸人として寒いぞ?」と、そう言って私の肩をポンポンと二回軽く叩く。


 腹立つなこいつ。


 というか、初対面でなんて馴れ馴れしいヤツなんだろうか。


 それに、私がこんなに魔王だと言ってるのに、この男は信じていないらしい。


 人を信用できなくなったら人生終わりだと思うんだが。私は魔族だけど。


 アイドは右手を私に差し向けて言う。


「さ、ここは危険だから君も街まで送ってあげるよ。このトラッフグの泉には凶悪なモンスターがいるらしいからね。まぁ不思議とここへ来るまでにモンスターは一匹も出なかったが……たぶんオレの強さと美貌に恐れをなしたかな? あはは」


「自意識過剰も甚だしいヤツだ。私はお前の助けなどいらん。おい、それからもう一度言う。私はコメディアンじゃないしピン芸人でもない。魔王軍の頂点にして魔王だ」


 パチン! と私はアイドが向けた手を振り払う。


「ッつ! ふーん、このオレの手を払うだなんて……そんなことできるのはこの世にはパパかママか、あるいは勇者か魔王くらいしかって……んん? まっ、まさかほんとに?」


 私はアイドの言葉にコクリとうなずいた。

 愕然とした表情を浮かべ、アイドはユーナたちの方へと顔を向ける。


「そっ、そんなバカな! ユーナさん、なぜ魔王と一緒に行動してるんだい!? いや、君たちもそうだよ? なんでごくナチュラルに魔族と並んで歩いてたんだ!? そんな前例聞いたことないよ!」


 アイドはチラチラと私を見ながら言ってくる。

 たしかに、普通の人間たちからすれば、魔王と勇者パーティーが一緒にいるのはおかしな光景なのかもしれない。


 それから、その前例とやらは私より以前の魔王の前例だ。ユーナもそうだが、なんで魔王と勇者が一緒にいてはいけないのか疑問だ。


 そんな前例なんてどうでもいい。いや、ならば私は魔王と勇者が仲良くできる前例になってやる。


 だって、かつて私とユーナはそんなルールなど知らずに、ともに手を繋いで歩いたのだから。


 ま、私とユーナが幼いころからの繋がりがあると言っても、きっとこの男は信じないだろうがな。


 それでもいいか、話してやろう。


 私は、自分と一緒にユーナとその仲間たちとここまで来たことの経緯と、出来事をアイドに説明し……。


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