第59話 浄化された泉へ
ザッコス盗賊団を完膚なきまで懲らしめた後──。
私はユーナたちと一緒に、『元・猛毒の泉トラッフグ』に向かっていた。
ところで、実は少し前に私の魔導水晶板にビエルからDMが送られてきていたのだが……。
【送信元】
ビエル・フダンスィ
【メッセージ】
熱愛する魔王様へ。
ご要望に応え、『猛毒の泉トラッフグ』は完全に浄化されたぜ。今後は『回復の泉トラッフグ』なんて呼ばれるんじゃないか? おっと、もちろん周辺のモンスターも完全に沈黙、泉に生息する魚も数分後には美味しい魚に変化するはずさ。
勇者たちにバレてもなんだから、俺たちは撤収する。
任務完了、オーヴァー。
それと、証拠の画像を貼っとくから確認するといい。maouttp.……
最後のセリフに、またしても怪しげなリンクが貼られている。……どうせたぶん、あいつの変態画像が貼られてるんだろう? というか、何が『オーヴァー』だ、カッコつけんな。
あと熱愛はいらない、全力で拒否する。
そんなふうに考えていると……私の脳裏に、忌まわしき記憶が甦る。
かつてあいつは、私とユーナの焼き肉デート中に自らの裸体画像を送りつけてきた腐男子だ。
いや、しかし……さすがのビエルも私に燃やされまくって懲りたんじゃないか? それに、部下を信じるのも、魔王軍の頂点にして魔王の私には大事なことだ。
ビエルは腐っても四天王であるわけだし……私だってたまにはアイツに『良くやってくれた。任務ご苦労、おつかれさま』と言ってやりたい。
だから私は、小さな望みを懸けてリンクに触れる。
……すると、さっそく私は冷たい眼差しを画面に向けていた。
『こんにゃろー……! まるで懲りてないようだな! 次こそ完全に復活しないよう全力で魔法を撃ち込んでやる!』
心の中で怒りの思いを呟く。
たしかに、展開された画像のトラッフグの泉は、淀みも濁りも消えて浄化されていた。
それどころか周辺の高い木々の隙間から光が降り注ぎ、青い水面が幻想的に輝く自然が生み出す絶景ともなっていた──のだが。
画像の中心には、謎に泉にたたずむビエルが艶めかしいポーズでこちらにお尻を向けている。腹立つのが指を咥えて誘うような流し目をしていること。しかも全裸で……!
なんなのこいつ。
地獄絵図的なんだが……! まったく、何が証拠の画像だ! どこら辺が証拠なのかビエルを小一時間問い詰めたいわ!
私はビエルも含め、配下たちには『浄化しろ』と命じたはずなのに、こいつは何をやってんだ! また泉を腐らせてるようなものじゃないか! 台無しじゃないかクソッタレがああッ!
そう思った私は、怒りの感情を乗せて魔法文字をポチり、ビエルにDMの返信をする。
【もしこの世に絶対に消し炭にしたいランキングがあるとするなら、おまえは私の中で1位だ】と。
☆★
そんなこんなで、私はユーナとその一行、キノコとシャンプル、裏切り者のバカゴリラと『元・猛毒の泉トラッフグ』までやってきた。
「わぁ……おっきくて綺麗な泉だねぇ……!」
私の目の前で、天使のような可愛さのユーナが感動の声を上げる。キノコとシャンプルも、目をキラキラさせてトラッフグの泉に見入っていた。
そう、ユーナたちには私たち魔王軍の手によって泉の浄化、及び周辺のモンスター駆除をしたことはバレていない。
ユーナに続き、キノコとシャンプルが感嘆の声を出す。
「ほんとに綺麗な泉だ……これのどこが猛毒の泉なんだろ? モンスターの気配もしないし……」
「マッシュの言う通りね……ここには淀んだ気配がまったく感じられないですわ。空気も澄んでいて、なんて気持ちいい場所なんでしょう、小鳥たちも楽しそうに鳴いているわ……」
それは良かったな、シャンプル。
残念なことに、私には楽しそうな小鳥どころか隣のゴリラの荒い鼻息ばかりが聞こえてるんだけど。「ウホホ! ウホ! フゥフゥ!」って。
もう少し私から離れろよこのバカゴリラ! ……と、そう思った時だった。
泉の対岸に、季節外れの真っ白なロングコートを着込んだ青年が、私たちに向け手を振るのが目に入る。
……誰だ? 私はこんなヤツ知らんのだが。
ここまでお読みくださいましてありがとうございます。
(*´꒳`*)




