第53話 初バトルは人間でした(ユーナ視点)
あたしは初めての依頼を受け、勇者としてマッシュ、シャンプル、エツィーとともに『猛毒の泉トラッフグ』を目指していた。
街を出てから西へどれくらい歩いたろう。
トラッフグの泉へ向かう辺境の一本道。
この道はかつて、他の街へと移動するために商人がよく使っていたそう。
でも今は、道沿いにある『猛毒の泉トラッフグ』近辺がモンスターの住処になっているから、仕方なく迂回して遠回りをする……みんなほとほと困り果てているということだった。
よーし、勇者であるあたしが解決してみせる!
と、そう息巻いていたその時──!
あたしたちの前に、モンスターではない一つの集団が道を塞いでいた。
武装した冒険者くずれの男たち数十名が、ニヤニヤといやらしい顔つきであたしたちを見ている。
なぜか全員、モヒカン頭かスキンヘッドでオシャレさのカケラもない。
しかもトゲトゲスタッズ付きの肩パッドを全員が装備していて、個性がまったく感じられないものだった。
何だか気持ちの悪い風格の人たちだな……? 端から見たら、どこの世紀末の人なんだろうと思われよるよ?
と、のんきにそんなことを思った瞬間だった。
マッシュは大魔道士の杖を握りしめ、シャンプルは聖なるロッドを構え──エツィーは大剣をその人たちに向ける。
あたし以外の全員が身構えていた。
マッシュはあたしに向かい、警戒の声を張り上げる。
「ユーナちゃん! こいつらは盗賊団だ!」
盗賊団はあたしたちに開口一番、気持ち悪い叫びを上げる。
「「「ヒャアッハーッ! ウッヒョアーッ!」」」
「久しぶりの大物だあ! ヨダレもんじゃねぇか!?」
「ゲッスッス、ゲスッ! ゲヘヘヘヘ、いい女二人に、かわいいおとこの子だなぁ……おいらたまんねぇよぉ!」
「おーし、野朗ども! 女、子どもは生け捕りだぁ! ペットのゴリラは見せ物小屋にでも売り払っちまえ!」
見晴らしのいい一本道、逃げる場所も、隠れる場所もない。状況は最悪なんやけど……!
そして、突然現れた盗賊たちが駆け足で襲ってくる。
待ち伏せ……? その統率された動きは、まるで冒険者の大型パーティーを見ているかのようだった。
「ふん! この【剣聖エツィー・ドゥガー】に立ち向かおうとは命知らずどもゴリね! マッシュ、シャンプル、勇者殿をお守りするゴリ……お守りするぞ!」
「もちろんさ! ボクの大魔法を見せてやる!」
「そうね! おしおきしてやりますわ!」
唐突な襲撃だというのに、皆は動揺も見せないまま、あたしの前に立つ。
みんなの強い意思は感じ、あたしはみんなに向けて大声で告げた。
「ユーナも戦う! みんなばかりにいいカッコさせよるわけにはいかんもん!」
あたしは聖剣エクスカリバーを構えて飛び出そうとしたその時──シャンプルが美しい銀髪を靡かせてあたしに向かって言い放つ。
「いけません勇者様! 下がってください!」
「ここはボクらに任せて! キミは勇者でしょう? ボクはキミを人間たちと戦わせたくないっ!」
「だ、だけど!」
「勇者殿は魔王ヨルケスを倒すという大役があるゴリよ? この程度のザコに聖剣を振るう価値などないゴリ!」
あたしを庇う形で、みんなが盗賊団の前に立ち塞がる。
みんなの言ってることは理解できるけど……でも!
「ユーナは仲間たちだけを戦わせよるえっらそーな勇者ちゃうよ!? だってあたしも、みんなも合わせて【天使の聖剣】なんだからっ!」
あたしはみんなに向け、心から叫んでいた。
しかし、盗賊団は怯むことなく絶叫を上げながら笑い声を上げていた。
「「「ウッヒョアアアアアア!!」」」
「「「ゲッスッスゲスッ! バカが! オレらに魔法は効かねーんだよぉお!」」」
「まずは盾役のゴリラ! てめぇーからだあッ」
盗賊団を迎え撃とうとするあたしたち。
モヒカン頭とスキンヘッドたちの下品な声が響きわたる中で──
この後、勇者パーティーであるあたしたちがまさかの結果になるだなんて、予想することはできなかった。




