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第52話 大事なこと

 

 いかん。時間がない。


 このままではユーナが猛毒の泉トラッフグ……いや、ぼちぼち回復の泉になってるこの場所に辿り着いてしまう。


 ……何か、何か良いアイデアがないものか……?


 くそ! 何も浮かばない! 焦るだけで、時間ばかりが過ぎようとしていた──その時だった。


 すました顔でビエルが私に問いかける。


「魔王様、落ち付けよ。彼女たちはすぐには来ない。っていうのも、ここら一帯は人間たちの盗賊や犯罪者やらの、とにかく危ない輩の巣窟になってるからな。俺が思うに、そろそろ勇者パーティーはたぶん……」


「そろそろ? たぶん? ……ビエル、お前は何が言いたいんだ!? もったいぶらずにさっさと言え!」


「だからさ、勇者たちはそろそろ悪党の人間たちに取り囲まれてんじゃないのかってこと。いくら勇者でもレベル1だし簡単には突破できないんじゃないか? 仲間がいくら優秀でも……ね」


「待て、ユーナはレベル1だとしても勇者だぞ? なぜ人間たちに狙われるというんだ!」


 私はビエルの胸ぐらを掴み、詰め寄る。


「そりゃ、勇者は超レアアイテムのエクスカリバーを持ってるんだろ? 狙われて当然さ」


「むぅ……! それはたしかにそうだが……! しかしユーナは人間たちを救う勇者ではないか! そんな無礼なヤツらがいるというのか!?」


「わかってないな魔王様。勇者たちは男ウケする美少女と美少年の組み合わせだろ? 万年女日照りのくっさい悪党どもにとって、勇者パーティーは最高のご馳走だ。ま、ゴリラ好きなヤツがいるかは知らないけどな」


「くっ……! ユーナの天使のような可愛いさと美しさがゴミどもまでも惹きつけてしまうということか……!」


「それにだ、悪党の中には高ランクの元冒険者もいるって話だぜ? そんなヤツらと戦うってなったら……レベル1の勇者には骨が折れるだろ。だから、そう簡単にここまでは来れないってことさ」


「なるほど、そういうことか……! 人間どもめ、私のユーナに指一本触れてみろ? 絶対にゆるさん……!」


 ビエルが淡々と話す内容を聞いて、私はもはや『猛毒の泉トラッフグ』のことよりもユーナの安否を気にかけていた。


 掴んでいたビエルの胸ぐらを離し、私はその場にいる魔王軍の者たちに身体を向け、声を張り上げて言う。


「魔王軍の誇り高き者たちに告げる! 私はユーナの元へ向かう。だが予定に変更は無い。諸君らは猛毒の泉トラッフグを浄化し、近辺のモンスターを残らず殲滅してくれたまえ!」


「「「ははっ!」」」


 ビエルを含め、 MSSの隊員たちが私に向かって敬礼をする。


 私の恋路の邪魔をする者は許せないが、もっと許せないことがある。


 それは女、子どもに手を出そうとする下劣な奴らだ。


 私の心に、かつて経験した思い出がいっぱいに広がっていた。幼いころ、当時の魔王軍の黒騎士たちに剣を突きつけられた日のことを。


 ユーナを全力で守ったあの日のことを。


 私は瞬間移動の魔法を唱え、ユーナの元へと急ぎ向かうのだった。

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