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第49話 月の明かりに照らされた……腐男子


 ユーナが伝説の剣・エクスカリバーを手に入れたとの報告を私は受ける。


 私は今後の『ユーナにレベルを上げさせない作戦』をどうしようかと魔王城の部屋のベランダで考えていた。


 今夜は月が美しく、肌をそっとなでる夜風が気持ちいい。


 涼やかな夜空を見上げ、そんなことを考えていると。


「……どうしたんだい? 魔王様」


 隣の部屋から、変態四天王の一人であるビエルが髪をかきあげながらベランダに姿を現す。

 彼は例によって、胸元全開のパジャマを着ていた。


 私は思う。


 こんにゃろー腹立つわ……! 何度も蘇ってくることも含めて腹立つわ……! と。


 普段から変態っぷりをさらけ出し、しつこくゾンビのように蘇生してくるビエルに、私はイラっとしてしまう。


 それにだ。こいつは私がドキッとすると思っているのだろうか? 


 さらには、月明かりに照らされるビエルのビーのティクに吐き気が込み上げてくる。


 すると、ビエルが鮮やかな金髪をかき上げながら言った。


「……勇者のレベルを上げさせない作戦について、今後どうするか考えてるんだろう?」


「うむ……。私の心を察するとはさすがは四天王だなビエルよ。私の愛するユーナが伝説の剣・エクスカリバーを手に入れたから……な」


 ビエル、それもそうなんだけど、私がお前に気がまったくないことと、男の裸に興味ないのも察してほしいんだけど。


 ……それは置いといて、現実的にユーナの今後の動向を私はどうしても考えてしまう。


 たとえばだが……。


「魔王様。あなたは勇者が伝説の剣を使い、いつかレベルアップしてしまうんじゃないかって考えてるんだろう?」


「ビエル、お前……?」


 私は驚いて、ビエルへ顔を向ける。


 いつの間にかヤツは上半身裸になっている。そして真剣な眼差しをまっすぐに私に向けていた。


「……勇者が伝説の剣を手にしてしまうと、いくら彼女がレベル1でも、高レベルモンスターや高難易度ダンジョンに挑戦しようとして危険な目に遭うかもしれない。そして勇者がいつかレベルアップして……剣を向けてくることがあったら……そう考えてるんだろ?」


「……その通りだ。よく察したなビエル。ところでなんでズボンまで脱ぎ始めたんだお前。キモいんだけど」


「……俺も、勇者とは戦いたくないからさ」


「話し聞いてる? ズボンはけよ」


 なんなんだこいつ。ビエルもシャンプルに似て話を聞かないところがあるんだが。ユーナと戦いたくなくてズボンを脱ぐ意味がわからん。


 はっ……! よもやこいつはベッドの上で私と一戦交えるつもりなのでは……! 怖いんだけど……!


 とはいえ、ビエルもユーナと戦いたくないと言う。私がユーナと戦いたくないという思いに賛同してくれているんだ。


 すると、ビエルは遠い目をして月を眺め見る。


「勇者は……もしかしたら俺と魔王様が愛し合ってるのを認めたくないのかもしれない」


「いや、私はお前と愛し合ってない」


「愛する者を奪いとりたい気持ちは分かるが……いくら俺に挑んだところで、俺たちの愛は揺るがない。そうだろう?」


「なんで同意を求めるんだお前は? 揺るぐも何も始まってすらいないんだが」


「俺は勇者に、別の恋をするように前へ進んでもらいたいんだ」


「頼むから話し聞いてくんない? っつーかお前、なんでパンツに手をかけてるんだ? 消し炭にするぞ」


「俺たちは魔族だから、人間たちとの戦いは避けられない。だけどせめて……俺は恋の戦いくらいは勇者としたくないんだ」


 ……何をわけのわからん世迷い言を言っているのか。私の話しを聞かず、謎の言葉を並べるばかりで気味が悪いんだが。


 私がお前と恋に落ちるなどありえないし、お前がユーナと恋の戦いをしても100パーお前が負けるに決まってるんだけど。


 なんかムカついてきたわ。


「とりあえずお前がユーナと戦っても勝てることなどない、絶対にな!」


 私はビエルを睨みつけてそう言ったが、ビエルはそれに対して何も答えずさらにパンツを脱ごうとしていた。


「おい、ビエル! 私の声が聞こえてないのか!?」


 ビエルは無視してパンツに手をかける。


「おい!」


 声を荒げた私は、すでに両手に魔力を集中していた。


「どうしたんだい魔王様……そんなに興奮して」


「興奮してない! ていうかお前、私を何だと思っているんだ! 返答如何によっては消し炭にされると思え!」


「……え? そりゃあもちろん、俺の恋人だろう? あぁ、あとは『俺巨根(オレドラ)』魔王軍バージョンの舞台でも、主人公と恋人の関係を演じるパートナーってとこかな? ベイビー」


 その言葉に、私はビエルにニコッと笑いかける。


 何が恋人だ、ベイビーだ。


 そして私は、ビエルのこれまでの四天王としての働きを振り返った。魔王軍の一員として頑張ってくれたなぁと思えることがいくつか見つかった。


 だが、それ以上に変態っぷりを私に押し付けてくることが多すぎる。


「そうか、ビエルよ。今までありがとう、そしてさようならだ色男。……煉獄の炎(クリムゾンフレア)!」


「ぐあぁあああああああああ!」


 燃えていくビエルを眺め、私は思った。


 ……私はお前たち四天王や魔王軍の配下たちに何度も助けられて、感謝したこともあった。


 けどそれがきっかけで、こうしてユーナから私まで『変態』として見られている。


 だからな、ビエルよ、お願いだから安らかに眠れ。



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