第48話 伝説の剣が抜けました! やったあ!……のかな?(ユーナ視点)
トゥースの街を出て〝聖なる森〟にやってきた神託の勇者ことあたしと、そのパーティー【天使の聖剣】。
聖なる森はしん、と静まり返っていて時折、小鳥のさえずる声がしている。
あたしたちは森の中を歩き、やがて開けた場所に出る。
すると、なんだかみすぼらしく崩れた台座? みたいなものに突き刺さってる伝説の剣・エクスカリバーを見つけた。
あたしはエクスカリバーにゆっくりと近づき、剣を前に立ち止まり……ふと、後ろにいる仲間たちへと振り返る。
後ろにいるマッシュとシャンプル、何があったか尋ねても教えてくれないけど、包帯でぐるぐる巻きになったエツィーがあたしを見守りながら、皆小さくうなずいていた。
あたしもうなずき返し、そして──エクスカリバーの柄を両手で強く、握りしめるのだった。
☆★
「やっぱりユーナちゃん、キミは凄いよ。レベル1で【伝説の剣・エクスカリバー】を引き抜いてしまうだなんて、神託の勇者ってのはダテじゃないんだね……!」
「……さすが勇者様。あなたのレベル1は、わたくしたちのレベルを遙かに凌駕する強さなのかも……素晴らしいですわ!」
マッシュとシャンプルが大げさすぎるくらいに大絶賛する。
というのも、世界最強の剣はあたしが柄を握りしめて持ち上げようとすると、すんなりとまるで、木の枝を持ち上げるかのように簡単に引き抜いてしまったから。
……でもなんでめちゃグラグラしてたんだろ? エクスカリバーの突き刺さり具合、ゆるっゆるだったんだけど……?
そう思っていたら、エツィーが大きな声であたしに告げる。
「勇者殿、やりましたな! この伝説の剣・エクスカリバーがあれば魔王軍食堂のおばちゃんたちを……否! あの魔王ヨルケス・ブーゲンビリアを打ち倒すことができるゴリよ! ……できるでしょう!」
「食堂のおばちゃん? なんかよくわからんけどめちゃ簡単に抜けよるし、伝説感がまったく感じられなかったんやけど……」
あたしは伝説の剣と揶揄される、光り輝くエクスカリバーを見ながらそう言うと。
「そ、そうかな!? ボクはよくわからないけど、ユーナちゃんが勇者だから簡単に抜けた、それだけなんじゃない?」
「マッシュの言う通りですわ! ……きっと歴代の勇者たちもこれくらい普通に? スポッと引っこ抜いてきたんじゃないかしら!」
マッシュとシャンプルが小さく汗をかいて、そう言ってくる。なんだか少し焦ってるように見えるのは気のせいかな……?
あたしは釈然としないまま、二人に答える。
「そーなん? それなら別にいーけど……あんな? あたしはもっとこう……伝説の剣を引き抜く時の盛大さというか盛り上がりというか……そんなん期待しよったんやけど……」
そう言うと、エツィーがあたしの頭に大きな手をぽん、と乗せてくる。
「ふはははは! 勇者殿、それは期待しすぎというものゴリよ?」
エツィーは包帯ぐるぐる巻きの状態で、豪快に笑って言った。エツィーはさらに続ける。
「伝説の剣を伝説たらしめたのは、その剣を使って世界を導いた勇者たちがいたからゴリよ! ……からですよ! 剣を引き抜くイベントよりも……これから世界を平和にするというビッグイベントの方が重要だと、ワガハイは思うゴリ!」
「うん……そう、そうだよね! ありがとうエツィー!」
「うんうん! ボクもエツィーの言うとおりだと思う! 伝説の剣がこんなにあっさり抜けたってことはさ? ユーナちゃんが今までの勇者より凄い……空前絶後の大勇者ってことかもしれないし!」
「そうですわ! 二人の言うとおりです! 勇者様、きっとあなたは太古の昔から続いてきた魔王軍……いいえ、魔族との戦いに終止符を打つ人として、歴史に刻まれることでしょう!」
「うん……ありがとうマッシュ、ありがとうシャンプル! ユーナがんばるよ!」
ニコニコしてみんなが褒めてくれることに喜びを感じながら、あたしは空に向かってエクスカリバーを掲げるのだった。




