第39話 魔王はフラグをへし折って! (ユーナ視点)
もしもあたしが勇者じゃなかったら。
ヨルケスが魔王じゃなかったら。
つい口に出した、心の声。
でも……ここから先は、神託の勇者として絶対に言ってはいけないと思った。
それに、ほんとうはマッシュとシャンプルがケンカするのはどうでもよくて、自分の気持ちがモヤついてるのが気持ち悪かった。
……幼少期以来となるヨルケスとの再会。
身分を気にせず、しょっちゅうあたしに逢いにくる彼に対してどこか嬉しい気持ちになる。
それから……あたしは炎属性じゃないのに、ヨーケスを見るとなぜか胸がぽかぽかする。
お顔も赤いんじゃないかと心配で、お化粧でどうにかごまかしよるけど……。
「もしかして……ユーナ、ヨルケスのこと……?」
と、そのときだった。
ビコン! と魔導水晶板から音が鳴る。
「んん……? なんだろ、メッセージかな?」
腰に付けた小さいカバンから魔導水晶板を取り出すと、ヨルケスからDMが来ていた。
『ユーナ、大丈夫か? いろいろ大変かと思うが、何かあったら私に言ってくれ。必ず力になる』
そのメッセージを見た瞬間……あたしはようやく、気づいてしまった。
「あたし……あいつのこと……半分は好き……? なのかな……」
ヨルケスに優しい言葉を貰って、嬉しいあたしがいる……遅まきだけど、わかっちゃった。
そう。小さいころから、いつだって彼はあたしに優しかった。
悲しいとき、寂しいとき、辛そうにしているとき……ずっとあたしの側にいて気を遣ってくれていた。
……でも、彼は今……人族の敵対種の王。
たしかによく考えれば、シャンプルの言うとおり彼と人族の誰かがくっつけば、平和的に戦争を終わらせられるかもしれない。
ならどうして、ユーナはヨルケスをフったんやろ?
なぜ、もっとあたしはヨルケスの話を真剣に聞いてあげんかったんやろ?
ほんとうに、あたしは勇者として彼と戦う必要があるんやろか……?
「どうしよるのがいいんやろ……」
頭の中がぐるぐる回る。
勇者として、魔王を好きになってもいいのかな?
シャンプルもマッシュも自分たちが人間だってことを気にしないで、彼のこと好いとるし……。
そんな想いの中でふと、あたしは気づく。
確かにここのところ、ヨルケスはマッシュやシャンプルとなぜか交流を持っている。
だけど、まだ数日程度で浅い関係。
一方で、あたしとヨルケスには小さいころからの繋がりがある。
積み上げた思い出がいっぱい、いっぱいある。
そうだよ、ふって湧いた大魔法使いや大聖女なんかに比べたら、あたしの方がヨルケスと付き合い長いんだし。
「ユーナがあいつと一緒になれば……世界も平和になりよるのかな……?」
ヨルケスがあたしにいつだか言ったセリフが頭に浮かぶ。
平和になる世界と、魔王と勇者が暖かい関係になることを思い浮かべたら、なぜだか心がほっこりとしていく。
……そんな気持ちになっていた時だった。
魔導水晶板に通知音が鳴る。
〝ドヤッター〟にあたしがフォローしている人がコメントを上げたらしい。
魔王ヨーケスについて、毎回のようにドヤ呟く例のあの人、【ノゾッキー・トサッツー@魔王軍四天王! 魔王様は順調に腐敗している】さんのコメントはこうだった。
【魔王様、四天王の裸にそんなに興味あります? ってゆーか、二人とも裸で何を不潔なことを……汚らわしい、腐りすぎですッ】
という文章の下、貼られた画像を見てあたしは言葉を失った。
……え? な、なにコレ……!?
それは金髪ロングのイケメンエルフが、ヨルケスの胸を触りつつ首筋にキスしよる危ない画像だった。
「男同士、すっ裸で何しよるんこの二人!? え、ヨ、ヨルケスやっぱこんな趣味やったん? めちゃ腐っとうやん!」
あたしは思った。
さっきまでのヨルケスへの淡い気持ち、なんやったんやろと。
そして。
「ったく、あんなやつにちょっとでもときめいたあたしがバカやった! 最悪!」
「……絶対に、ユーナが魔王を打ち倒すんだから!」
あたしは改めて、そう誓い直すのでした!




