第37話 妬きキノコ
「ユーナちゃん、ボクらは仲間でしょう? キミの悩み、えんりょしないで言ってほしいな。ほら、これから魔王軍と戦う果てなき旅の始まりに……ユーナちゃんが元気ないのは良くないと思うんだ」
キノコが心配そうな目をしてユーナに言った。
「えっと……うん、そうなんだけど……」
「勇者様? わたくしもマッシュの意見に激しく同意ですの。恋煩いでも、他の悩みでも、なにかあるなら言ってください。わたくしたちこれから、互いに助け合っていかないといけないのですわよ?」
「シャンプル……ありがと」
胸の前で手を握りしめるシャンプルを見上げて、ユーナが彼女の名前を小さく呼ぶ。
さすがは大聖女。この前のヤンデレ気質や腐女子感はどこへやら……ユーナのことを本気で心配しているようだ。
すると、心配する二人に対してユーナはふっ……と、安堵の吐息をついて話し始める。
「あのねー、ユーナ心配やったん……」
「何が?」
「何がですの?」
「ウホッ?」
一人だけゴリラ語で腹立つわー、なんかムカつくわ……っと、それは別にいい。心配……? 一体何が?
「せっかくみんなユーナの仲間になってくれたのにね? マッシュもシャンプルも……ヨルケスのこと好いとうやろ? だから二人が魔王軍と戦いとうなくて、パーティー抜けるんちゃうかなって……!」
「そ、そんなことは……あ、ありませんわよ、たぶん……」
「そ、そうだよ! ユーナちゃんは心配しすぎだよ……ねぇシャンプル」
「そ、そうですわね……っ」
キノコとシャンプルは一瞬慄いた様子に見える。二人は間の抜けた声で、歯切れの悪い言葉を並べていた。
ユーナは続けてゴリラに顔を向けて言う。
「あとエツィー、あんたも元魔王軍四天王やろ? ほんとはヨルケスの命令であたしに近づいたんちゃうかなって……」
弱々しく話すユーナに、バカゴリラは声を張り上げる。
「そんなことないゴリ……そんなことないですぞ勇者殿! ワガハイ、やましい気持ちなどこれっぽっちもなく貴女についていくと決めたゴリよ! ……決めたんですよ! ワガハイ、魔王ヨルケスにも魔王軍に未練など毛ほどもないゴリッ……ないですよ!」
エツィー、貴様声がデカい。見ろ、ユーナがビックリして目を丸くしてるじゃないか!
許せん……ユーナを驚かした罪、これはヤツの命で贖ってもらうとして……! このゴリラ、私を呼び捨てにしたな?
そうか、エツィーよ。貴様、完全に私を裏切ったのだな?
エツィーに対するムカつきが最高潮に達した私は『絶対にあとで消し炭の刑だ』と、持っていた雑誌の両端をグシャリと歪めるのだった。
するとだ。
「ユーナちゃん、なんか……ごめんね? でも、ボクらがキミのパーティーを抜けることはないから安心してよ。ねぇシャンプル?」
「そ、そうですわ! もちろんですのよ? わたくしたちは、勇者様とともに世界を平和に導く使命があるのですから……!」
「だよね! ボク、実はシャンプルのこと心配してたんだよ。なんかこの間、楽しそうに誰かとデートしてたみたいだし……! あれ? そういえばその人、ヨルケスお兄さんに似てた気がするんだけどなぁ……?」
と、ギクリとして身体を固めたシャンプルを尻目に、キノコはまたしても私の方に視線を向ける。
欺瞞に満ちたタレ目……こいつ、やはり私のことに気がついているのか?
いいだろう。
もしバレているのなら、最近お前たち二人と一匹に対して溜まっている不満をぶちまけてやる……!




