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第33話 強引すぎる勘違い


 私の声に安心したのか、迷子の少年は笑顔を取り戻すとコクリとうなずいた。


「わかったよおにいちゃん! ぼく、泣かない!」

「上出来だな少年。褒美にチョコレートをくれてやろう」


 私が魔法でサッと手のひらにチョコレートを出現させる。


 すると、パァッと笑顔になった少年はチョコを口に頬ばる。私は少年の手を引いて立ち上がり伝える。


「少年よ、喜ぶがいい。この魔王軍の頂点にして魔王の私が、お前のおかあさんを一緒に捜してやろう」


「ほんとう!? ありがとうまおーのおにいちゃん!」


 少年は目を三日月のようにしてニッコリと笑う。



 その後、少年の手を引いて繁華街を歩くと、さっきのメンズセレクトショップの前で青ざめた顔をしながら、シャンプルと会話している女性を見つける。


 どうやらその女性が少年の母親のようだった。

 少年の姿に気がついた母親は、泣きながら駆け寄ると、彼を優しく包み込む。


 少年の母は涙を浮かべ、私を見上げながら感謝の言葉を声に出す。


「ありがとうございます! ありがとうございます……! なんとお礼を申し上げたら良いか……」


「礼などいらんから、その小さな手を離すな。子どもを泣かす母親など母失格だぞ?」


「はい……仰るとおりです、気をつけます……」


「わかれば良いのだ。少年よ、お母さんに会えて良かったな」


「うん! まおーのおにーちゃんありがとう!」


 迷子の少年が笑顔で礼を言うと、私はチェキをしながら少年に告げた。


「うむ、少年よ。今後は簡単に泣くのではないぞ? もしもお前が次に泣くとしたら、それは私が世界を手にした時の感動の涙だ。よいな?」


 またも手のひらにチョコレートを出現させて少年に手渡すと、彼は嬉しそうにうなずくのだった。


 ──と、そのときだった。


「今……あの子……魔王って言った?」


 周りに居た人間たちが私を指さして言う。


「え? マオって名前じゃないの?」

「いや、たしかに魔王って言った!」

「うそだろっ!? 魔王軍のっ!?」

「でもぜんぜん魔王っぽくないよね!?」


 ザワ……と周囲がざわついてくる。


「ふーむ……さすがにバレてしまいそうだな」


 私は頭をぽりぽりとかく。


 人の多い場所で『魔王』と大声を出されたら、私がどんなに変装していても、人間たちは疑問に思うだろう。



「こうなったら……致し方ない」



 私は魔王軍の頂点にして魔王。

 バレたらバレたでかまわない。


 私はシャンプルの手を掴み、人間たちに向かって大声で言う。


「我が名はヨルケス・ブーゲンビリア! 魔王軍の頂点にして魔王であるッ! 勇者パーティーの大聖女、シャンプル・リンスルは私がもらっていくぞ! 返してほしければ魔王城までくるがいい人間たちよ!」


「え!? ちょ、魔王さん!?」


 私がそのままシャンプルを抱きかかえ、瞬間移動の魔法を唱える。


 消えかかる私の姿に、少年はふたたび笑って言うのだった。


「またねー! まおーのおにーちゃーん!」



 ☆★



 瞬間移動で瞬時にトゥースの街の入り口まで飛んだ。どうやら騒ぎはここまでは到達していないようだ。


 時刻はすでに、夕暮れを迎えていた……。


「すまなかったな、シャンプル。あぁでもしなければ……お前の体裁を保てんと思ったのだ。なんせお前はユーナの勇者パーティーの一員だからな」


「はい……その……う、うん……」


 目を背けるシャンプルは、顔を真っ赤にしているように見えた。たぶん夕日が彼女の真っ白な肌を照らしているからだろう。


 夕日に照らされた彼女に、私は言う。


「ん? どうした?」


「あ、いや……その……さっき魔王さん、わたくしを『もらっていく』って……なんて強引で傲慢なプロポーズなのかしらって……ドキドキしちゃいました……」


「ちがう、ちがうぞシャンプル! 断じてプロポーズではない!」

 

 ああ、やはりシャンプルは思い込みの激しいイタい女の子なんだ。


 想像力豊かというよりは、妄想が暴走するダメなコなんだ。

 

 そう……言うならば普通の女の子ではなく、腐通の腐女子。


「と、とにかくだ! シャンプルよ、私は魔王軍の頂点にして魔王! あまり馴れ合いをしてくるな!」


 バッサリとシャンプルの好意を切り裂く言葉を出す。


 もうお願いだから連絡してくるなよ?


 今度合う時には互いに敵同士として、なのだから。


 そう告げたの……だが。


 パァッ……! とシャンプルが笑顔になり、こう言った。


「もぅ〜〜! みんなの前で大声でプロポーズしてくれたのに? なんで今さら恥ずかしがるの〝ダールン♡〟 ほんとかわいいんだからっ」

 

 こうして、シャンプルは私の言葉を全てねじ伏せ、妄想激しく勘違いしたまま……その日は別れたのだった。


 もうイヤんなっちゃうよ。


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