第30話 魔王と大聖女の禁断の!?
私は今、始まりの街アルファから東へ進んだ『トゥース』の街へやってきていた。
この街といったら、なんといっても街の中心に建造された大型モニュメント……初代市長の『オードリーノ・キャスガ』像が有名だ。
七三分けの髪型で鬼みたいな顔だが、それは仕事のできる市長だったらしい。
なんでも、この銅像は恋人同士のデートの待ち合わせ場所として指定されるんだとか。
……さて、なぜ私がこのトゥースの街にいるかというと。
「あ! 魔王さーん、おっまたせーッ」
銅像近くに設置されたベンチに腰をかけて待っていると、美女がこちらに手を振りながら駆け寄ってくる。
「大聖女シャンプル・リンスル……お前、私を待たせるとはいい度胸だな」
私はイラっとしながら告げるが、空気の読めないシャンプルはニコニコと笑顔で近づいてくる。
花柄クルーネックのノースリーブワンピを着て、髪をポニーテールにしていて可愛らしい格好だ。
大聖女の私服というのを私は初めて見るが、こういうコーデは悪くない。
ユーナが着たら世界一可愛いだろうな……と、そんなことを考えたその時。
「ごめんね、魔王さん。待っちゃいましたよね?」
「だからさっき、待たされたと言ったではないか。お前、呼び出しといて1時間以上も予定の時刻に現れんとは、この魔王である私をナメてるのか?」
午前11時半。待ち合わせの予定を大幅にオーバーしている。
ところで、なぜ私とシャンプルがここにいるのか? ということだが。
先日の魔導水晶板のDMでのやりとりの件からだ。
──私がシャンプルからのメッセージを未読からそっ閉じして数時間後。
魔導水晶板にシャンプルからの怪メッセージは嵐のように続いていた。
しかも1分おきという、なかなかのメンヘラクレイジーっぷり。そして怪文書の内容のヤンデレ具合もひどい。
『ねぇ、なんでお返事してくれないの』
『既読つかないの、お仕事忙しいから?』
『あんまり無視するなら知らないよ?』
『聖魔法でアンデッド族、天にかえしちゃおっかな』
『早く返事しろこらぁ』
私の魔導水晶板にDM通知音がビコビコ鳴り響く。
あまりのしつこさとメンヘラ具合に嫌気が差した私は、シャンプルに会うことにした。もちろん彼女に私をあきらめてもらうためだ。
というか、彼女って神に仕える光の大聖女じゃないのか?
病みすぎてて……というか闇すぎててさすがの私もこわいんだけど。
私は魔法文字をポチり、シャンプルに返事をする。
『シャンプルよ、ならば食事くらいはしてやる。だから少しDMを控えろ』
すると、すぐさまの返信はこうだ。
『ほんと? うれぴっ。て、ねぇ魔王さん。この間、勇者様と焼き肉デートしたって本当?』
DMでシャンプルが私にそんなことを聞いてきたのだ。
連絡先を交換してからシャンプルからの一方的なメッセージは頻繁に来ているが、私はそこまで彼女と会話しているわけではないはず。どうしてそれを?
私は返信する。
『あぁ、そうだ。それがどうかしたのか』
どこでどうやって私のプライベート情報をシャンプルは仕入れたのだ? マジでちょっと怖いというか、怖い。
『それなら魔王さん……わたくしともデートして? じゃないと聖魔法でアンデッド族の方々を天に帰しちゃうんだから!』
……ということで、私は魔族を大聖女から守るために、今に至る。




