第28話 魔王メンタルブレイク中
ユーナの勇者パーティー結成記念祝賀会に参加してから一週間が経とうとしていた。
そんな、ある日の午後。
私は魔王城の謁見の間にて、『ユーナにレベルを上げさせない作戦』の経過報告を部下たちから聞いていた。
「……で、ありまして、始まりの街アルファ周辺のモンスターは完全に沈黙しました。近辺の迷宮や廃墟等も、全て攻略済みです」
うんうん、そうなの? ふーん。
そんなことより……はぁ~……先週またユーナにフラれてしまった。
何度もあきらめずに告白すると誓ったものの、結構メンタルブレイクなんだけど。思考回路はショート寸前なんだけど。
「続きまして、神託の勇者ユーナ・ステラレコードの次の行動を予測し……」
次、次ねぇ〜……。ユーナの行動はなかなか読めないかもよ?
だってさ、ユーナったら自分のパーティーメンバーにウチのゴリラをスカウトするくらいだぞ……?
「……と、いうことで四天王エツィーからの『勇者パーティーに潜入完了』との報告ですが、魔王軍としては彼の裏切りの可能性も考慮し……」
大自然のゴリラの話かな?
それは魔王軍に関係ない話だぞ?
そんなどーでもいい報告は別にいいんだ。
そんなことより、ほんと困った……。
キノコとシャンプルにいきなり惚れられて、なぜかそのままユーナの前で交際宣言されてしまって……。
……最悪だ。
結局私は、そのスーパード迷惑爆弾発言のおかげでユーナから勘違いされたままだ。
しかもあの後、ユーナから流れるように、『ヨーケスは両刀なの?』『BLショタなの?』『なんにしても腐っとうね』と、言葉の連鎖的連続攻撃を喰らってしまう。
私の……今までにないくらいの渾身の告白が今回もスルッとかわされたのは仕方ない。
それはいつも通りだし。
だけど、ユーナからここまでえげつないカウンターをお見舞いされたのは初めてだった。
私のHPを数値化できたなら、きっと今は瀕死。なんならゼロといってもいい。いや、それ死んでるじゃないか……!
…………ということだから、部下たちが今どんな報告してるのか、右から左でまったく頭に入ってこない。
はぁ……つらたん。
☆★
──時は少しだけ遡り。
さて、問題が起きた。
私はキノコとシャンプルに魔王軍の企業秘密である『魔導水晶板』を提供することになってしまった。
理由は単に、キノコとシャンプルが『私ともっとお話ししたい』からということだった。
むろん、私は大反対した……のだが、ユーナの言葉に私は負けてしまう。
『んん? それ、ユーナも持っとうよ? なんで二人には魔導水晶板を使わせられんの? ユーナが良くて、二人がダメな意味わからん。あんな? ヨルケス聞いて。ユーナな? 差別する人嫌いやって前から言っとうよね?』
……もうね、ぐうの音も出なかった。
私はユーナにフラれるのはまだ、耐えられるかもしれない。
いや、ほんとは耐えられないほどキッツいけど……もしユーナに嫌われてみろ?
私はきっと、生きていけない。
……と、いう訳で、シャンプルとキノコ以外が魔導水晶板に触れたら絶命する魔法を私は施すと、二人に手渡した。
彼ら以外が使わないということを条件に、私はしぶしぶユーナの言葉を飲んだのだ。
すると、やはりというかさっそく二人から連絡先の交換をしてほしいと言われてしまう。
私は……キノコとシャンプルの好意にどうやってやんわりとお断りのセリフを言えばいいのかわからなかった。
釈然としないまま連絡先の交換を交わすなかで、私はユーナの顔を見て考えた。
ユーナ……私がこの世界で大好きのはユーナただ一人なんだ。
一緒に居て、すごく楽しくて、心の底から幸せだと思えるのはユーナだけなんだ。
どうかこの想い、いつか彼女に届くといいな……と。




