第26話 何度フラれたとしても……っ!
「ねぇヨルケス。ユーナいつも言っとうよね? ヨルケスは魔王で、あたしは勇者だから付き合うとかできんよ?」
呆れたような顔をしたユーナは私の告白をバッサリと斬り捨てた。
すると、シャンプルが私とユーナの間に割って入る。
「魔王さん……勇者様がそう仰るのも仕方ないことです。でもね……魔王さん、わたくしはあなたが魔王でもかまいませんの。良かったら場所を変えて、わたくしとお話ししませんか?」
「だ、ダメだよ、シャンプル待って! 自分だけずるいよぅ! ボクだって、ヨルケスおにいさんが魔王だとしても関係ないんだっ!」
キノコの言葉に、ピクリとシャンプルがこめかみを動かす。
「ふーん、マッシュ……? あなた、気がついてないんでしょ」
「な、なにをさ」
キノコがシャンプルを睨み上げる。
「……あなた、男の子じゃない。同じく、魔王さんも男性。同性のあなたに男女の悦びを感じさせることができるのかしら?」
「ボ、ボクたちはそのくらいの壁、乗り越えてみせるよ!」
は? な、何を言ってるんだ?
乗り越える? 何をバカな!
「おまえら落ち着け。仲間同士でいがみ合うなんてバカらしいと思わないのか? あとキノコ、〝たち〟ってなんだ? その〝ボクたち〟の〝たちー〟に私を入れてないよな?」
「ヨルケスおにいさんは少し黙ってて! これはボクとシャンプルの問題だから!」
キノコは私の言葉を制止するように片手を上げる。
二人のぶつかり合う視線はまるで、バチバチと火花が散っているようだった。
「……ヨルケス、あんたほんとに『魅了』の魔法使っとらんの? なんで二人ともこんなんなっとるん?」
「い、いや、だからそんな魔法知らないし使ってない!」
「そう? うーん……困ったなぁ。あのね? ユーナの勇者パーティーに『パーティー内での恋愛は禁止』ってルールがあるんやけど……『魔王と恋愛禁止』なんてルール設けとらんから、なんも言えんよ……どしたらいいかな」
くっ!
ああもう! 上目遣いで質問してくるユーナ可愛い! 女神!
って、私に聞かれても困ってしまうが……追加ルールに組み込めばいいのでは? と私がそう言うと、
「そっか、そうだよね。ヨルケスにユーナのパーティーが迷惑かけてごめんね?」
ユーナが申し訳なさそうに肩をすぼめた。
「い、いやいや! 気にするなユーナ! そもそも勇者パーティーと魔王は敵対関係、ユーナは勇者らしく振る舞ってくれて良いのだ! ほら、ユーナそんな顔するな。君は笑った顔の方が可愛いよ!」
「……魔王さん?」
「ヨルケスおにいさん?」
シャンプルとキノコの顔から冷徹な表情が浮かぶ。
な、なんなのだこいつら……!
「……随分と、勇者様には甘いみたいですね? わたくしという婚約者がいながら……許せません!」
「いつ私がお前と婚約したのだ!?」
「さっきわたくしのフルーツ食べたじゃありませんか! 『間接キス』は私の故郷では婚約の証ですのよッ」
「シャンプル、いいかげんにしなよ! 婚約というなら、ヨルケスおにいさんと愛を誓ったのはボクだよ? このマントもマフラーも、彼から貰ったんだから!」
あれ? なんだろう、私は魔王軍の頂点にして魔王なのに、どこかしら恐怖している……?
私はいつの間にシャンプルと婚約したんだ? 記憶にないんだけど。……この女、ヤバい類の者かもしれない、というかヤバい。
あとキノコ、マントもマフラーもお前にくれてないし返してもらうぞ? それに私はお前と愛を誓ってない!
こいつらの暴走、誰か止めてくれ!
すると、ユーナは残念そうに私の顔を見る。そして、こう言い放った。
「ヨルケス!? あ、あんたいつの間に二人に手をだしよったん!? て、シャンプルもマッシュも……ヨルケスと付き合いよる関係なん……?」
「そうですけど」「そうだよぅ?」
「ち、ちがう! いつ私がお前たちと付き合ったんだ!? 暴走するのもいい加減にしてくれッ」
すると、ここまで空気になっていたエツィーが、ふっ、と似合わない感じで鼻で笑った。
「そっかぁー! 魔王様、良かったですね、ステキな彼女と彼氏ができて!」
「き、きさま! いきなり何を言って!?」
「え? だってワガハイ、勇者殿に一途な魔王様を尊敬していたから、今までどんなパワーワードにも暴力にも耐えてきましたけど……! こんなチャラい魔王様の下で働いてたなんて、ワガハイ残念でならないゴリ……ならないですよ! っと、今はワガハイ、勇者パーティーでした! さぁ、勇者殿、こんな不純な男と食事してはいけません、空気が汚れゴファアアアアアアアアアア!!」
私の拳がエツィーを捉える。鉄拳制裁とともに吹き飛んでいくゴリラ。
私にもはや、最弱四天王に対する慈悲などない。
調子よく勝手にFAする薄情な四天王などいらん。魔王軍の四天王としての誇りのカケラもないゴリラなど、ただのゴリラにすぎない。
ほんと、魔王軍の風上にもおけぬヤツだ。
そして私はユーナへ向きなおると、彼女の肩を掴んで、今までにないくらいの真剣な表情で言う。
「……ユーナ、どうか誤解しないでくれ。私が愛してるのはこの世界でただ一人……君だ。ユーナ、私と結婚を前提にお付き合いをしてくれないか?」
「だからぁ! ユーナは勇者、ヨルケスは魔王! 世界的にムリに決まっとうやん」
「……そ、そんな! ユーナ! 君が勇者で私が魔王でもいいじゃないか! 愛に国境も種族の違いもないと、私は信じている! だからユーナ、私とともに生きていこうじゃないかッ」
私は、誰が決めたかわからない『勇者と魔王は敵同士であり、恋愛など論外』という枠の中で生きていくなど絶対にごめんだ。
そんなの魔王軍の頂点にして魔王の私のプライドが許さない。
すると、私の熱愛告白に、ユーナが一拍置いてため息を一つ吐く。
「もぉ! ヨルケスはほんと、昔からユーナを困らせよるね? 魔王と勇者の恋愛なんてどこの世界にあるん? あたしのことはあきらめて、ヨルケスはシャンプルかマッシュかどっちか選んだげたら? あっ、二股はよくないと思うよ?」
「な、何を言ってるんだユーナ! 私が好きなのは君、君だって言ってるのに!」
「あんなー、ヨルケス。ユーナまでいたら四角関係よ? あんたどこまで強欲なん? さすがのユーナも引くってば」
余計悪化していく、ユーナが私に抱く印象。
魔王という仕事柄、人のハートを揺さぶることに長けているつもりだったが、まだまだ私は甘かったようだ。
ユーナの心の掴み方、募集します。
ご連絡は魔王城まで……くっ。
ここまでお読みくださいましてありがとうございます♪
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