第21話 四天王エツィーの裏切り……?
大聖女シャンプル・リンスルは背が高く美しい女性だった。会場に来ている者たちも目をキラキラさせて見惚れている。
すらりと長い手足に、主張の激しい胸。
艶やかで煌めく銀髪と、雪のように真っ白な肌。
なるほど、たしかに美しいと褒め称えられてもおかしくないレベルではある。
しかし、私はまっっったく! 彼女に興味などわかない。
なぜなら私が思うに世界一美しくてめっちゃ可愛くて地上に舞い降りた天使なのはユーナだけだからだ。
ユーナの可愛さ、美しさに勝てるものなどいない。
だから大聖女のことはどーでもいい。
問題なのは、私がよく知っているアイツだ。
シャンプル、キノコ、エツィーの順に立ってる中で気になるアイツはそう、まぎれもなく魔王軍四天王の【エツィー・ドゥガー】である。
ちょっと空気でわりとイエスマンな、魔王軍でもまだマシな方のバカで……そして、何を隠そう、いや隠しきれない魔王軍四天王のゴリッゴリのゴリラだ。
「エツィー、おまえなんでユーナのパーティーにいるんだ!」
しかし私の声は、大聖女シャンプルへ向けられた会場の拍手に溶けていく。
……落ちつけ、落ちつくのだ私よ。
エツィーがなぜ、勇者パーティーにいるのか?
もしかしたら奴は『ユーナにレベルを上げさせない作戦』を念頭に行動してるのやもしれない。
疑問を浮かべていると、いつしか大聖女シャンプルの自己紹介が終わり、キノコの自己紹介が始まる。
キノコはまだ寒いのか、私のマフラーを巻いていて、私のマントを羽織っていた。
それにしても、キノコは特に印象深くないふっつーの自己紹介だが……なんだろうか? 心なしかキノコの目が私の方向に向けられているような気がする。
時折り、私の方に小さく左手を振っているのは誰かへのメッセージなんだろうか?
まあ別にどうでもいい。きっとキノコの知り合いが私のいる角度にいるのだろう。
キノコが自己紹介を終えて、頭を下げる。会場に居る者たちから沸き起こる再びの拍手喝采。
私は特に感動もないので、小さく拍手をする。
「ありがと、シャンプル、マッシュ。ユーナの仲間になってくれてほんとありがと」
「……こちらこそですわ? わたしも勇者様の仲間になれて光栄です」
ユーナへの返事とともに、シャンプルの胸がバルルンと揺れる。
その度に観客から歓喜のどよめきが起きるのだが、私はなぜシャンプルがそんなに人気なのかわからない。
続いて、キノコもユーナへ向けて感謝の言葉を並べると。
「うん、マッシュほんとにありがと。キミのその天才的なまほーで、これからユーナを助けてね? ……ってことで」
ユーナが一息ついて。
「最後の勇者パーティーメンバーの紹介です! なんと、実は彼はさっき、この冒険者ギルドでユーナがじきじきにスカウトしました! さ、エツィー! 自己紹介してくれる?」
ついに、奴の自己紹介の番だ。
あのゴリラはさっきまでユーナを探す際に、冒険者たちをその厳つい顔で震え上がらせてしまったアホ。
すると。
「……あいつ勇者パーティーだったのか?」
「ゴリラじゃ……ゴリラじゃなかったのね」
「……剣聖っての、おいら初めて見たよ……!」
「ここでスカウトされたんか、人生なにがあるかわからんのう」
予想の斜め上をいく出来事に、会場の者たちがざわつき始めるのだった。




