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第17話 まさか……暴走!?

 

 おそらく今の私の顔は、嫉妬の気持ちが顔に出て憤怒の表情になっていたのだろうか。


 そんな私の顔を見て、キノコは小さく汗をかいていた。


「ど、どうしたのヨルケスおにいさん? そんな怖い顔して、ボ、ボクなにか悪いこと言ったかな……?」


「悪いことだと? キノコよ……それはおまえの存在全てだ。おまえ、無事にここから生きて帰れると思うなよ? ユーナの隣りにいられるのは私だけでいい……ぶちころしてやるッ」


 私は身体に流れる魔力を両手に全集中させる。


 このキノコ、もはや生かしてはおけない。

 私の恋路を邪魔する輩は消してやる。


「ちょ、ちょっと待ってヨルケスおにいさん! ね、ねえほんと抑えて! ボ、ボクほんと何かしたかな、あわあわあわ!」


「ふん。戯れ言など聞くだけ時間のムダだ。キノコよ、ユーナに近づいたこと、地獄で懺悔するがいい!」


 溢れ出す魔力を手のひらに集約させて。


 すると、キノコは焦りながら私に抑止の言葉を並べ始める。


「え、えっと! ヨルケスおにいさん、思い出してください! ボ、ボクはユーナちゃんの隣りにはいなくて、後方支援担当だから! 後ろなんですよぅ! と、隣りにいるポジションはボクじゃないですし、その辺はこれからユーナちゃんとみんなで決めましょうよ!」


 まくしたてるキノコは私の怒りを冷まそうと、必死に言い訳や御託をべらべらと並べる。


 そんなキノコに私は、


『問答無用、消えてなくなれ! それにだ、後方支援と言うなら、おまえはユーナのお尻をマジマジと眺めてるということか? 私だってそんなことしてないのにッッ! クソキノコめ、万死に値する!』


 ……と、言いかけた瞬間だった。


 私の脳裏に、焼き肉デートの時のユーナのセリフがよぎる。


『あんなー? ユーナな? 誰も傷つけとうないん。だってみんな、痛いの嫌やろ?』


 そう言った彼女の顔を思い出した瞬間、私は魔法を放つのをやめた。


 怒りの先にたどり着いた、ユーナの優しさ。


 私がキノコを焼きキノコにしたら、ユーナはなんて言うだろうか?


 ただでさえ心根の優しい彼女だから、きっと涙を流して悲しむだろう。


 好きな女の子を泣かせるなんて、魔王として、男として最低だ。


 私のユーナへの恋はガチだ。

 世界中を敵に回しても、私は彼女に恋をするだろう。


 実際、私は世界の敵なんだけど。


 とはいえ、矮小なる者たち……特に目の前のいと小さきキノコなぞに、片想いの余裕のなさを全面にさらけ出すなんて、魔王軍の頂点にして魔王らしくない。


 私は魔王らしくユーナに恋をしていたい。


 どんなにダサくても、かっこ悪くて恥ずかしくっても、私は一生懸命にユーナだけを愛していくことを誓ったのだ。


 それは魔王である私の誇りでもあるのだ。


 だが、彼女を悲しませるのはダサいどころか最低だ。ダサいと最低は同義ではないのだ。


 私は……あと少しで最低の魔王に成り下がるところだった。


 私はユーナの台詞で冷静さを取り戻し、キノコへ深々と頭を下げる。


 誠心誠意、私なりの謝罪の言葉を告げた。


「キノコよ、すまない……ちょっとばかりカっとなってしまった。別にお前が何か悪いことをしたわけでも、言ったわけでもない。だのに、私は自分のことばかり考えて……すまなかった……」


「そ、そんな謝ることありませんよぅ! ど、どうか頭を上げてください! ボクはヨルケスおにいさんの気持ち、痛いほどわかりますよ? だって、ユーナちゃんのそばに、しかも相棒として隣りで戦える人になりたいって願うのは、世界中の全冒険者が思うことですから!」


「世界中の冒険者?」


 は? なんだって?


 そんなみんな、ユーナのそばにいたいの? ムリなんだけど。ヤキモチはお前だけでもお腹いっぱいなんだが?


 私の問いかけに、キノコはさらに口早く喋り続ける。


「そ、それに、ボクも凄い魔力の持ち主のヨルケスおにいさんの仲間になれて、嬉しいですっ! それと、さっきあなたの魔力を肌に感じて、正直足がぶるぶると震えましたよ……! その強大な魔力ならきっと、魔王も恐怖することでしょう!」 


「キノコよ、少しおだてすぎだぞ? それに私の魔力で魔王が恐怖するなどありえない」


 だって、魔王だからね。私。

 

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