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第15話 勇者パーティーの大魔法使い


 しかし……困った。


 何が困ってるかというと、魔導水晶板の『監視(ストーカー)』のアプリ機能が上手く作動しない。


 魔法電波はなぜか圏外、ぜんぜん使い物にならない。


 これはもしかしたら敵対勢力の妨害電波のせいだろうか?


 ユーナにDMしても、やはり『送信されませんでした』の文字が出るし。魔導通話もできない。


 おかげでユーナの動向がまったくわからない。私の心配は募るばかりだ。


 と……そこでッ!


 私は今回の協力者として、ある男を作戦メンバーに抜擢していた。


 そう、ヤツだ。


 見た目はゴリラ、頭脳はぼちぼち! 四天王最弱と揶揄される、ここ最近は空気感まっしぐらの四天王エツィー・ドゥガーである。


「エツィー、ユーナの姿が見当たらない。そこで、お前がゴリラ時代に大自然で培った野生の勘が今こそ必要だ……! 頼むぞ」


「はっ! お任せください。必ずや勇者殿を見つけだしてみせるゴリよ! ……見つけだしてご覧にいれます!」


 そんな感じで、屈強そうな戦士スタイルの装備をしたエツィーが冒険者たちに聞き込みを開始する。


 しかし、結果は散々だ。


 ゴリッゴリのゴリラ風味のエツィーが、『ワガハイに探せないものなどないゴリよ!』と、イキっていたのはいいものの、やはりというか、エツィーの顔が厳つすぎて冒険者たちはドンがつくほど引いている


 冒険者たちがビビッて会話にすらなっていない。


 見ろよ、みんな顔が真っ青になっとる。

 恐怖と絶望で泣き出す新米冒険者さえいるくらいだ。


 おかげで情報がまったく手に入らない困った。


 ほんとのあいつは、気は優しくて力持ちなんだが……。四天王最弱なのに、インパクトだけは最強なんだよなあ。


 一応、あいつに人族と接するための、『変装』と『擬態』の魔法はかけたんだけどまっっったく! 意味がなかった。


「はぁ……困った……! 今もこうしている間に、ユーナがボケカス超クズドエロ変態冒険者の毒牙が忍び寄ろうと……ああ、心配で心配でたまらないッッ」


 私がぶつぶつと思考を漏らしていたその時だった。


 近くから、男の声がした。


「…………誰だおまえは」


 振り返ると、爽やかな美少年が目の前にいた。


 身長は小さい。


 クリーム色のボブヘアー、まるでキノコみたいなヘアスタイルだ。そして長いまつ毛。

 少しタレ目の、ショタなら身悶えするような男の子だ。


 しかし私はショタでもなければ、BL大好き系腐れ魔王ではない。


 私が眉をしかめると、目の前のキノコは口を開いた。


「こんばんは。えっと、何かお困りのように見えたから……声をかけてみちゃいました、あはは」


「新手のナンパか? 残念だが少年、私は男だぞ」


「ち、ちがいますよぅ。なんか困ってるのかなって思ったから……」


「ふん。あぁ、たしかに困っている。だが私はキノコに心配されるほど落ちぶれ……」


 待て。落ち着くのだ私よ。


 エツィーが使い物にならん今、このキノコの登場はラッキーだ。


 せっかくだから、好意的になってくれるこの人族の少年を利用させてもらおう。


 どうやらコイツは私が魔王だとわかっていないのだバカめ! くっくっく、黒ヨルケス……!



「……すまん、失礼なことを言ってしまった。少年よ、どうか許してほしい」


「う、うん……だ、大丈夫ですけど」


「実は……私の大事な女性が見当たらなくてな。ドチャクソ心配しているところなんだ。ここの冒険者というのはガラの悪いヤツも多い……彼女がもしイタズラされてたらと思うといてもたっても……ん? ところで少年、君のその風貌はまさか、冒険者か?」


「あ、はい……いちおう、ボクは冒険者でこう見えてレベル50のまほーつかいなんです」


「ほぅ……! それは高いのか低いのかよくわからんが、褒めて使わそう。大義だな少年」


 見た目すっごい少年なのに、たぶんこのキノコは冒険者としてはまぁまぁやれてる方なんだろう。


 キノコのくせに。


「な、なんかいきなり褒められて照れちゃうな……と、ところでお、おにいさん。探してる人はこのギルドにいるのですか?」


「む? おそらくそれは間違いない。ここに来てから急に……コホン!」


 私は、魔導水晶板の『監視(ストーカー)』のアプリ機能が動かなくなった、と言いかけそうになるが咳払いをして飲み込んだ。


 こいつら人族に、魔王軍の企業秘密を簡単に教えるわけにはいかない。


 すると、キノコは私を見上げて言う。


「それなら、ボクも一緒におにいさんの人探し手伝ってもいい? 実はボクも人とはぐれちゃって」


「ふふ、よきにはからえ。一人より二人の方が効率的だからな、少年よ。君は賢いな」


 私とキノコは並んで、広い冒険者ギルド内を歩き始める。


 ……近くで見ると、本当にキノコにしか見えない。


「少年、名前はなんというのだ?」

「ぼ、ボクの名前はマッシュ・ルムゥです」


「そうか、私はまお……コホン! 私の名前はヨルケス・ブーゲンビリアだ」

「ヨ、ヨルケス……? なんか魔王みたいな名前ですね……!」


「バカだなキノコ。貴様、考えが浅いぞ。その飛び抜けて浅い考えは……そうだな。まるで貴様のこれまでの人生を垣間見るような発言だ。いいか? 同姓同名である者は世界にごまんといるんだぞ?」


「あ、そ、そうでしたね! いきなり〝魔王みたい〟だなんて、失礼なことを言ってごめんなさい!」 


「まぁいい、キノコよ、そんな小さなことは気にしなくていい。私はその程度の無礼を気にするほどちっちゃくはないのだから」


 まあ、私は魔王軍の頂点にして魔王なのは事実。


 失礼も何も、普通に魔王ですし?


 それに、些細なことで怒るほど私は子供ではない。相手は子どもだし。


 烈火の如く怒り狂って、四天王をいつも燃やすのは内緒だ。


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