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第10話 魔王の涙と勇者の心

ブクマしてほしいの……


 焼肉の後、私は〝ドヤッター〟に書き込みをする。


 内容は『焼き肉うまぴょん』『私の彼女マジ天使』と、もちろん画像付きでだ。


 実に魔王らしからぬコメント? はははそんなバカな。


 私のドヤ呟きに早速たくさんのコメントがついているぞ?


 『お肉美味しそうですね!』や、『彼女とデート羨ましいもげろ』、なんてコメントが山盛りだ。


 と、私が承認欲求を満たし満足げにしていたその時だ。


 新着メッセージの通知音がピコンと鳴り、私はメッセージを確認するが……!


【魔王様の履いてるズボン、変な柄でヘボピーじゃね? センスなさすぎワロタw】


 魔王である私に失礼極まりないディスりが向けられていた。


 こ、このやろう! 大きなお世話だ!

 いったいどこのどいつだふざけやがって!


 腹を立てた私は、ふざけたコメントの主のアイコンに触れる。

 この〝ドヤッター〟というSMS(ソーシャル魔法回線サービス)は開けた魔法回線サービスなのだ。


 アイコンやコメントをタップすると、相手のアカウントページにジャンプすることができるのだが……!


 サングラスをかけた紳士風味のアイコンの下に表記されていた名前はそう、ヤツだ。


【ノゾッキー・トサッツー@魔王軍四天王♡ 魔族最強目指してがんばります!】


 ふざけたアカウント、そして舐めたメッセージの張本人はそう、二回ぬっころした例の四天王の一人だった。


 あの変態バカ、魔王軍の頂点にして魔王の私を超えられると思ってるのか!?


 生意気なヤツだ。この私に舐めた口を聞いたその罪、死で贖ってもらおう。


 私はヤツのコメントに返信を書き込んだ。


 【魔王ですけど、おまい血祭りの刑】


 と。



  ☆★



「焼き肉美味しかったねー」


 私とユーナは店を出て、二人してまた手を繋いで歩き出していた。


 できればこの手を離したくないのだけど、レディをあまり遅くに帰らせるなんて、紳士として言語道断だ。


 少し幅の違う足で一歩、また一歩ずつ歩いていく。


 帰り道を私は、なるだけゆっくり、ゆっくりと足を進めていった。


 その理由は……少しでも長く、彼女と一緒にいたかったから。


 並木道を歩きながら、私は言った。


「ユーナは今日はこのあと何かするの? まさかレベル上げに行くとか言わないよな?」


「何言っとるん? ユーナ、だいぶお酒飲んどるし、そんなんムリ。また明日からがんばるの」


 もっと飲むぞー! と言って、ユーナは生ビアーのあと、グイグイと赤ワインとシャンパン、辛めのカクテルを飲んでいた。


 さすがの私も、ちょっと飲み過ぎでは? と心配になったほどだ。


 とはいえ、返ってきた返事に私はほっと胸を撫で下ろす。


「うんうん、なら良かった。ほっとした……ユーナは真面目でがんばり屋さんなとこあるから、もしかして……って、心配してしまったんだ」


 ユーナの瞳をじっと見る。


 お酒に酔ったせいか、大きな目がとろん……としているのがまたとても魅力的だった。


 私は思う。


 どんな高価な宝石だって、彼女の瞳の輝きや美しさに勝ることは決してないだろう。


 言い過ぎだし溺愛しすぎだって?

 溺れるほど人を好きになれるなんて素敵じゃないか。


 この想いに嘘など1ミリたりとてあるものか。


 繋いだ手をユーナはずらし、両手で私の腕を掴んでくる。ユーナの頭と私の腕がピタっとくっついて。


 私の顔を見上げたユーナは、ニッコリと笑った。


「ねーヨルケスー」


「な、ななななんだね?」


「あんなー? ユーナな? 勇者をがんばっとうけど、ほんとは勇者なんかやりとうないんよ? ……だって、痛いのは人族も魔族もぜったいに嫌やと思う。あたし、ほんとはだーれも傷つけたくないの」


「え……!? えええ!?」


 突然さっきとは真逆の言葉を並べるユーナ。


 お酒を飲み過ぎたせいか……? 心の奥底にしまい込んだ戸惑いを、彼女が口走る。


 酔って出た、ユーナの本心。


 初めて知ったユーナの想いに……私は、言葉より涙があふれてしまうのだった。



 

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