『僕じゃない僕と僕』
どうも、呟木心葉です。
少しグロテスクかも。
血生臭い表現は無いので
その部分は安心してお読みください。
……では、また。
By.つぶりん
僕の右腕が斬り落とされた。もう何度目だろう。床に鈍い音をたてて落ちた僕の右腕は、早くも白い灰変わって行く。
それと同時進行に、斬り落とされた断面から右腕がなめらかに生えてくる。キノコの成長を早送りで見ているようだ。でも、この光景も見慣れてしまった。
僕の身体は、どこを傷付けても直ぐさま再生する。このサーカス団では『奇跡の復活人間』とか呼ばれているけど、あんまり嬉しくない。本当の名前を誰も呼んでくれなくなってしまったから。僕には、とても綺麗な名前があるのに。
今日はいつもと違う事をするらしい。初耳だ。舞台に立って、何だろうと思っていると、いつもより一回り大きな剣を持った男がやって来た。団長だ。団長が舞台に立つのは、クライマックスだけのはずなのに。
「首、切るから大人しくしてろ」
そうか、今日のクライマックスは僕なんだ。
首。僕は今まで身体の至る所を斬り落としてきたけど、首だけはまだだった。だって、首を斬り落としたらどうなるか何て分からないから。もしかしたら再生しないかも知れない。でも、団長にとってはそんな事関係無いんだろう。客が来ればそれでいいのだ。それとも、団長は気になって仕方ながなかったのかも知れない。僕の首を斬ったら、どうなるのかが。
煽り文句を長々と話していた団長が、くるりと僕に向かい合う。その動きは、まるで機械仕掛けの人形のようだった。
剣を持った腕をぐいっと振りかぶり、バネ仕掛けのように僕の首めがけ振り下ろした。
一瞬で、意識を失った。
■ ■ ■
目が覚めると、目の前に僕がいた。僕の前にいる僕は、団長が持っていたはずの剣を持っている。血糊がついた、大きな剣。
状況を理解出来ずにいると、ふと足元に転がる球体を見付けた。一瞬何かわからなかったが、すぐに気が付く。団長の頭だ。
驚きと恐怖で座り込む。団長は復活人間じゃない。という事は、死んだって訳だ。
僕は目の前の僕を見上げる。僕は笑っていた。爽やかな笑顔で、目の前の僕は僕に手を差し出した。
「おはよう、スカイ。早く外に出よう、自由だ。僕達はこんな暗い箱の中にいるべき存在じゃない。明るい空の下へ、さぁ」
久しぶりに名前を呼ばれた。嬉しかったけど、呼んだのは僕自身だった。きっと、向こうの僕は身体から頭が生えてきて、僕は頭から身体が生えてきたんだろう。変な話だ。首を斬られたら分裂してしまった。
君が僕なら、僕は誰だって言うんだろうか。僕は、きっと僕だけのはずなのに。
「ああ、行こう」
そういいながら差し延べられた手を握り、起き上がるように見せかけ重心を後ろに下げ、相手がバランスを崩した所を足払いする。倒れる衝撃で、目の前の僕の手から剣がこぼれた。
直ぐさま剣を拾い、勢い良く振り上げる。
「な、何をするんだ」
会場は静かだった。客は目の前の僕が団長を殺した時に逃げたんだろう。
二人の息づかいだけが響く中、少し息を吸い込んで。
「僕は、一人だけでいい」
呟いて、剣を振り下ろした。
再生しないように、何度も、何度も……。
――End――
どうも、呟木心葉です。
最後まで読んで頂き
本当にありがとうございます。
これからも頑張りますので
応援よろしくお願いします。
……では、また。
By.つぶりん




