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後編

   

 驚きの発言だった。

 服装も年齢も学生なのに、彼女は働いているというのだ。

「あら、勘違いしないでくださいね。仕事といっても、お金のためじゃなくて、いわば能力を活かしたボランティアで……」

「能力……?」

「もちろん能力だけじゃなく、道具も使いますけどね」

 これがその道具だと言わんばかりに、手にしたネコジャラシを振ってみせる。

 足元の黒猫が「にゃあ」と鳴いた。

「あらあら。この子ったら、これ、ネコジャラシか何かだと思ってるのかしら。困っちゃうなあ」

 軽く苦笑いしてから、少女はこちらに向き直る。

「本当は、自分で思い出してもらう必要あるんですけど……。ちょっとだけヒント与えますね。あの花、なんだかわかります?」


 彼女が指差したのは、先ほど私も気づいた赤い花だった。

 改めて注目してみると、とても特徴的な花の形をしている。昔々、植物図鑑か何かで見たような……。

「確か、彼岸花だったかな?」

 と口にした途端、強烈な違和感を覚えた。

 暑さ寒さも彼岸まで。そんな言葉があるように、彼岸花は秋分の頃に咲く。早くても夏の終わりであり、今頃開花する花ではない!

「まだ今は夏の真っ盛り、お盆の時期のはず。だからこそ私は……」

 突然、全てを思い出す。しかし同時に、あまりの驚愕に襲われて、その先は言葉にならなかった。

 唖然とする私の表情を見て、彼女は嬉しそうに叫んだ。

「そうです! ようやく思い出してくれましたね!」


「あの世から戻ってきた魂の中には、こちらで過ごすうちに自分が死んでること忘れて、あの世へ帰りそびれる者も出てくるんです。そういう迷える魂を来年のお盆まで保護するのが私の仕事で、お爺さんもそういう迷える魂の一人でした」

 彼女は親切に説明してくれる。

 自分が何者なのか悟った今、私にもお化けが見えるようになっていた。

 少女の周りには、ふわふわした白い存在がたくさん。塀の上に乗ったり、木に登ったりしながら、彼女から離れすぎない辺りをウロウロしている。

 少女の目には、私の姿もあのように見えていたのだろう。


「ああ……。来年までお世話になります」

「ええ、もう迷わないでくださいね」

 軽く頭を下げてから、私もお化けの集団に加わった。




(「またお会いしましたね」完)

   

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