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魔眼の錬成術師 〜魔眼になった幼馴染と行く異世界冒険譚〜  作者: てつじん
第一章 異世界への旅立ち
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3話 疑問


青い鉱石が盗まれてから翌日早朝



「全くもって面倒なことになったのぅ」


マナはカイトの部屋に来てそう愚痴をこぼしていた。


いつもならバナウイを作れとうるさいマナだが今日は様子が違っていた。


「なんでだ?ただ話を聞かれるだけだろうに」


カイトがそう返すと


「話をするのは構わん、ただレリーがおるんじゃよ」


それを聞いてすぐに合点がいった。

なんせ犬猿の仲とはこの2人を表した言葉なのだから。



「そりゃ面倒だな…とりあえず話をしてすぐに出て来ればいいさ」


この2人を合わせて無事に済むはずがない、とは思うがそれしか方法がないのが現状だ。


「私もそれは分かっておる、何故一昨日保管庫などに行ったのか…」


そんな落ち込むマナにお決まりのバナウイを渡すと、少し機嫌が直ったようでペロッとたいらげて研究所へと向かっていった。





〜研究所廊下〜



「あらぁ、これはマナ副所長、今日はよろしくお願いしますね」


マナは自身のラボへと行く途中で声をかけられる。

嫌々ながら顔をあげるとそこにはレリーがニヤニヤしながらこちらを見ている。


『面倒じゃのう』


マナはそんな心を隠して返答する。


「おはようレリー審問官殿、今日はお手柔らかにお願いするのじゃ」


当たり障りのない挨拶で横をすり抜けようとするとレリーに呼び止められ。



「そんな冷たくしなくても良いじゃないですか。何も貴方を犯人にしたくてやる訳ではないのですから」


人を食ったような笑い方をしてそんなことを言ってくるレリーに一言言ってやろうと振り向いた瞬間。


「おはようマナ君、レリー君」


後ろからグラント所長が声を掛けてきた。


「申し訳ないねぇ、こんなことになってしまって、私もセキュリティが厳重な保管庫で青い鉱石が盗まれるとは思っていなくてねぇ」


マナとレリーもグラントにそんなことを言われ口論をするわけにもいかず。


「「そんなことはありません(のじゃ)」」


2人揃って返答をしていた。


それが気に食わなかったのか2人共同時に顔を見合わせ睨み合った。


「マナ君は…予定通り16時頃に3階の会議室にきてくれるかな?レリー君は申し訳ないがこのまま私と少しいいかい。」


グラントは2人にそう告げるとマナは首を縦に振り了承したことを伝え、レリーは


「分かりましたわ、本日はスケジュールをすべて空けておりますので問題ありませんわ」


そう言うと2人はグラントの私室へと入っていった。


マナは心の中でグラントに色んな意味でお礼を言い自身のラボへと急いだ。




〜3階会議室〜


「ありがとう、次の人に部屋に入るよう伝えてくれるかい?」


グラントにそう言われた研究員は一礼をして部屋を退室していった。


会議室ではここ一週間の入室記録からリストアップされたスタッフ達が入れ替わりで質問を受けていた。


1日中話を聞いて疲れているせいかグラントとレリーは言葉を交わさず次のものが入ってくるのを待っていた。


「失礼しますのじゃ」


そこへ扉をノックしてマナが入室してくる。


「次はマナ君か、よろしく頼むよ」


マナはグラントにそう言われ席に座った。

レリーから何か小言でも言われるかと身構えていたが特に何も言われず不思議に思っているとグラントが質問を開始した。


「それではマナ君、一昨日君が保管庫へ入ったのは間違いないかい?」


「はい。その日の実験で使う資材を取りに第三保管庫から薬剤と蒸留水を持ってきただけです」



2人がそう話している時にレリーの目の上に青い光の模様が浮かび上がり言葉に嘘がないか確認しているようだった。


そこから15分ほど話をしてマナへの質問は終わった。


事情聴取中にレリーが絶対に何か言ってくると思い身構えていたマナだったがすんなりと質問が終わったことに違和感を覚えつつレリーを見つめた。


いつもなら高飛車で傲慢な態度で接してくるレリーが何故か表情も乏しく、虚な目で力を発動させていた。

その瞳には何かを伝えたいような、そんな眼差しにマナは感じられた。

そんな様子を察したのかグラントが


「マナ君、レリー君は今日朝から力を使ってもらっているのでね、休憩を挟んではいるが疲れているんだよ。なぁレリー君」


グラントはマナにそう伝えレリーの方に顔を向けた。

その時、グラントから微かに青い光が見えた。


「それじゃあマナ君、次の人に入室するよう伝えてくれるかい。」


マナはそう言われ一つ頭を下げてから退室していった。


そして会議室にはまた無言の空間が広がっていた。




〜カイトの自宅〜


カイトは帰宅してから日課の筋トレをしているとマナから着信がきた。


「どうしたんだこんな時間に」


時刻は午後9時を回っている。

珍しくこんな時間にマナから電話が来たことに少しドキッとしつつもそう返すと


「すまんなカイト、今日例の事件で質問を受けたんじゃが少し気になることがあってのぅ…」


声の調子から只事ではないと察し気持ちを切り替え話を聞く。


「気になることって何かあったのか?」


「いや、逆に何もなかったのが気になるのじゃ。あのレリーが事情聴取の最中に何も言ってこなかった。それにいつもなら嫌味ったらしくこっちを見るのに今日はこう何か伝えたいような…そんな表情でのぅ」


それを聞いて俺も違和感を覚える。

2人の不仲は社内でも知れ渡っていて誰が聞いてもおかしいと思う。

ただグラント所長が同席していたのだからもしかするとレリー審問官に無駄な会話はしないようにと言われていたのでは?と思っていると。


「私もレリーにグラント所長が何も言わないよう注意していると思っておったんじゃが、それにしても奴が私に何も言わないとは思えん。それに最後のあの青い光は…」


最後の方は声が小さく聞き取れなかったがマナの意見に俺も同意した。

すると


「カイト、少し気になる事があるから確かめてくるのじゃ、もし1時間しても私から連絡がなければ研究所に来てくれんか?」


急にそんな事を言ってきたマナに驚きつつも


「なんだよ急に…分かったよ。てか今から向かうのか?」


「いや、まだラボにいるのじゃ。ーーー私の思い過ごしだと思うんじゃが…とりあえずよろしく頼むぞ」


そう言うと電話は切られた。

俺は何かあれば連絡が来るだろうとその時は深刻に考えず汗を流しに風呂場へと足を運んだ。


この時、もっとよく話を聞いていれば!とあとで後悔することになるとは思ってもいなかった。


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