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魔眼の錬成術師 〜魔眼になった幼馴染と行く異世界冒険譚〜  作者: てつじん
第一章 異世界への旅立ち
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2話 緊急会議


研究所は家から歩いて5分ほどのところにあった。

住んでいるのが研究所の持っているアパートなのだから近いのも当然だ。


カイトはマナに作ったバナウイの残りを頬張りながら研究所へ向かって歩いていた。




「おはよう!カイト君」


後ろから声を掛けられる。

その声に覚えがあったカイトは振り向くと


「おはようございます。グラント所長」


この見るからに仕事が出来そうなイケおじは、カイトの働く研究所の所長で最高責任者のグラントだ。

そしてカイトが先程使っていた不思議な力の研究の第一人者で世界的にも知られている。



「またマナ君にせがまれてそれを作ったのかい?」


カイトの手に持っているバナウイに目をやりながら笑顔で問いかけてくる。



「はい!でも私も結構好きなので…あっ!?もしかして今日の実験で力を使う予定とかありましたか?」


カイトは今日の自身のスケジュールを頭の中で巡らせ少しドキりとした。

この力を使ってグラント所長の研究に参加することが多く名前を覚えてもらっていたカイトは慌ててグラント所長に返す。



「いやいや、今日は特に大きな実験もないから大丈夫だよ。カイト君も朝から大変だね」


「いやぁ…」


そんなことを言われカイトはなんとも言えない感じになってしまった。


「それでは私はこのままラボへ向かうとするよ」


「はい!今日もよろしくお願いします。」


カイトは背を向けて歩いて行くグラントに頭を下げた。

そしてカイトはグラント所長と別れ自身のデスクへと向かったのだ。





〜研究所内 食堂〜



昼休みになり食堂へ向かう途中、資材管理部の職員達が慌ただしく駆け回っていた。

その様子から只事ではないのが伺える。



「おっ!カイト、お前もこれからお昼か?」


食堂に入った途端に声を掛けられる。

カイトは声のする方に振り向くと見覚えのある男性が席に座りながら軽く手をあげていた。



「はい!マイクさんもこれからですか?」

マイクは部署は違うが同じ研究所で働く先輩だ。



「おう、そうだ!…なぁカイト聞いたか?保管庫にあった青い鉱石が盗まれたって話」


持っていたコーヒーを飲みながらマイクがカイトにそんなことは言ってきた。



「いいえ、まだ何も…だから資材管理部の職員達が慌ただしくしていたんですね。でも青い鉱石が盗まれたってあり得るんですか?

資材室の中でもセキュリティが一番厳しい場所なのに」


青い鉱石とは不思議な力をもたらしたとされる世界でも数個しかない貴重な鉱石だ。

それだけに保管庫の中でも一番セキュリティーの高い場所にあったはずであった。

そんな青い鉱石が消えたとなれば研究所だけではなく国の一大事だろう。



「分からねぇがこりゃ大事になるぞ。」


マイクもカイトと同じことを思ったのかそう答えてくる。


「ですよね。これって所長も知ってるんですか?」


「あぁ!知ってるさ、今それで研究所の管理職以上が集まって会議をしてる。…そういやマナ副所長も一緒に向かったぞ」


マイクはカイトに意味ありげにマナも向かったことを伝えてきた。


「そうなんですね」


カイトはその手にからかいに慣れておらず曖昧に返事をした。



「全く今の若いもんは…、もっと強気に行けばいいものを。早く告白でもして付き合ってしまえばいいじゃないか」


そんなことを簡単に言うマイクにカイトは慌てて。


「あんまり大きな声で言わないでくださいよ!別にそんなんじゃないですから…」


こう返すのがやっとだった。

カイトも自分で分かっているがいくら幼馴染とは言えマナは今やこの研究所の副所長、能力もあるが生来のスペックの高さも相まって世界的に注目されている研究者だ。


「まぁ俺はこれ以上言わんが、後悔はすんじゃねぇぞ」


そう言って食べ終わった食器を持ってマイクは行ってしまった。



『全く、人の気持ちも知らないで…』


カイトは心の中で1人愚痴る。



「はぁ…さて、今日は何を食べるかな」


この悩みは今に始まったことではないので気持ちを切り替えてランチのメニューを見に行くのだった。





〜研究所第一会議室〜


「ツッ!!だから入室記録はゴードン部長が最後なんですよ!!」


警備部長が資材管理部のゴードン部長に対し唾を飛ばしながら凄い剣幕で怒鳴っている。


「私は実験で使う薬品を取りに向かっただけで青い鉱石には指一本触れておらん!その時は青い鉱石はキチンと保管されていた!警備部で記録を改竄かいざんしているのでは無いのか!」


ゴードン部長もその大きな体を揺らし、汗だくになりながら反論する。



『はぁ…全くなのじゃ』


先程から責任の押し付け合いをするだけの会議に飽きてきたマナは1人ボヤいていた。


『こんな言い合いを聞くために会議室にきたわけではないのじゃ…こちらは大事な研究を止めてまできているというのにのぅ』


マナは毒づきながらことの顛末を見ていた。


すると会議室の奥から誰かが話を遮った。


「お二人とも一旦落ち着きましょう、まずは現状を整理してどう対処するかを検討しましょう。犯人探しも重要ですが盗まれた鉱石を見つけることが最優先です。」


グラント所長は立ち上がり2人に向かってそう告げる。2人はグラント所長に言われ少し冷静なったのか席に座り直し考え込んでいる。



『やはりグラント所長は違うのぅ』


上司であり尊敬するグラント所長が場を収めたことに満足し、マナはそんなこと思った。


「ではグラント所長はどのようにお考えですか?」


先程まで興奮していた警備部長が問いかける。



「先ずは保管庫に入室したものをリストアップして、法務部のレリー審問官に立ち会ってもらい話を聞きましょう。彼女に嘘は通じませんからね」


そこまで言って全員が納得するが1人だけ肩を落としてその話を聞いていたものがいた。



『あのいけすかない女が出てくるのか…私も昨日保管庫に入っているから合わなければいかんのかのぅ」


マナは一人落ち込んでいた。


レリー審問官は国から派遣されている人物で人の嘘や隠していることが分かる力を持っていた。

マナはそんな彼女と何故か馬が合わず、顔を合わせればなにかと言い合いに発展してしまう間柄だった。



『まぁとりあえず話をしてすぐに退散することにしよう』


これから訪れるであろう憂鬱な時間を思いそう決意すると会議室に集まった面々が席を立ち始めた。


「マナ君、君にも協力してもらうが構わないかい?」


そんな思考をしているうちに会議は終わっていたようでグラント所長がマナに話しかける。


「はい!私も昨日資材室へ行ったので分かっておるです」


そう言うと「頼んだよ」と一言言ってグラントも会議室をでていった。


そしてマナも席を立ち、自身のラボへと帰っていった。

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