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守生の営業トーク

 

「……あなたの自由さは、時々腹が立ちますね」

「それは自分が自由でないと思っているからですね」


 守生が切り返すと、カールホルスが不機嫌に言った。


「実際、そうでしょう? 国王なんて」

「どう思う? アベル」


 不意に守生は、そばで護衛しているアベルアヌビスに話を振った。

 

「んー、好きな物を好きなだけ食べられるのは自由の証ですっ! でもお行儀よく食べないといけないとか、派閥作りのための宴を開いたりするのは大変そうで、不自由だと思いますっ!」

 

 食欲旺盛なアベルアヌビスらしい言葉はまだ続く。


「でもシュー様もいろいろ我慢してるみたいだしっ! 俺らもそう。ご飯とかお金とか、上下関係とか! 騎士も貴人も、みんな違うことで我慢して、頑張ってるなって思いますっ!」

 

 騎士と貴人を同列に語るアベルアヌビスの言葉に、ヘレナヘケトは卒倒しかけた。彼女は守生付きの侍女頭であり、アベルアヌビスたちに行儀作法を教える先生でもある。ショックは大きい。

 ドムトートはそんなヘレナヘケトを支えたほうがいいのか、アベルアヌビスをぶん殴ればいいのかと迷いつつ、黙って護衛を続ける。


「……馬鹿馬鹿しい」

「出過ぎたことを言いました、陛下っ!」

 

 ため息を吐くカールホルスに、アベルアヌビスがはきはきと答える。守生はそれを楽し気に見守る。

  

「ですがシュー殿。あなたがこの者たちを重用している意味が少しだけ分かりましたよ」

「率直な意見でしょう?」

「……滑稽なほどにね」


 それは、不自由さを嘆く自分を嗤うような、清々しい声音だった。

 

「王様は、誰かと自分を比べるのをやめると楽になると思うんですよね。どっちが偉いとか、誰のせいだとか」

「……自分と兄と比べるな、と?」

「僕と比べることも」

「フン」

 

「人と比べて自分の悪いところを探すから自信がなくなるんですよね」

「知ったような口を利かないでください?」

「うーん、少なくともあなたは格好いいし、体格もいい。肉親を亡くしてすぐにその後を継ぎ、三年間国王という重責ある仕事をやれるだけの知能と体力、部下もいる。そういうところも見えてますか?」

「なっ!?」

 

 守生の誉め言葉に、カールホルスは動揺する。無意識にずっと自分を責めてきたため、褒められたいと思っていても、いざそういう場面になるとどうしていいのか分からないのだ。

 

「考えすぎるから悪い方向へ思考が流れて不安になるし、過去の嫌な出来事を思い出しもするわけです」

「じゃあ、どうしろって言うのですか!?」

 

 カールホルスが椅子から身を乗り出し、守生を威嚇する。それは自分自身を守るための無意識の行動だった。

 

「瞑想しましょう」

「は!? メイソウ?」

 

 カールホルスはポカンとくちばしを半開きにして固まった。

 

「そうです! 瞑想、メディテーションというのは、目を瞑ってリラックスした状態で心を無にすることですね。慣れればお一人ですることも可能ですよ。でもまずは、みんなでやりましょうか!」

 

 守生はにこにこ顔で営業する。瞑想は、よくイライラしているカールホルスやサイラスオサイリスに勧めたかったことなのだ。もちろんイライラしていない人にもそれぞれ良い変化がある。守生も毎朝していることだ。

 

「今日の夜、空いてますか?」

「え」

「瞑想会を開きますから、夕飯を終えてから一時間後にこちらに来てください。瞑想会にかかる時間は一時間半から二時間程度で……」

「あの」

「値段は……施術が銀貨百枚だったから、銀貨十枚でいいかな。あ、よかったらエリス姫も誘ってあげてください」

「ちょっと! 私の予定を勝手に決めないでくださいよ!」


「僕は別にいつでも構いませんよ。たぶん王様の頭の中は、ご自分で思っている以上ぐちゃぐちゃな状態だと思うんです。だから効率も悪いしイライラする。【DNAアクティベーション】で活性化されたとは言え、頭の中の粗大ゴミは片付けたほうがいいです」

「粗大、ゴミ……?」

 

 守生の口から語られる聞きなれない言葉に、カールホルスは戸惑う。メイソウはもちろんのこと、過去、カールホルスに粗大ゴミの話をする者はいなかった。

 

「王様、今、何がしたいかとか思いつきますか?」

「ゆっくりしたいですよ、家族みんなで、安全にね」

「……お仕事お疲れさまです……」

「あ・な・た・が、言わないでください!」

「まぁまぁ。王様、ちゃんと眠れてますか?」

「いえ、寝つきも夢見も悪いですね! 誰かさんが次々に問題ごとを起こすせいだと思うんですが!?」

 

 カールホルスはプリプリ怒っているが、守生はただ天からのエネルギーと繋がって話を進める。誰の責任かという話題に、今のカールホルスが納得する答えは見いだせないと思ったのだ。

 

「脳が疲れていて、体の緊張も取れない。だから眠れない。そういう時は瞑想して、一度頭の中をクリアにするんです。潜在意識もね」

「潜在、意識?」

「過去のこととか、心の奥底に押し込めてるものってあるでしょう? 自分でも気づかない記憶とか。そういうものを吐き出すんです。必要だったらまた思い出せばいいけど、一旦手放す。そうすることで脳の負担も少なくなる。ちょっと試してみるだけでも、寝不足の頭がすっきりしますよ」

 

 守生が笑顔で営業を仕掛けると、カールホルスは呆れたような、諦めたようなため息をついた。

 

土日も投稿できると思います。先週スランプだったんですが、ちょっと瞑想したら自分が何に囚われているのか分かったので。「そういうことか!」というアハ体験がすごかった……。

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