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カールホルスの懸念

 

 守生が施術の片づけを終えた頃、はやぶさ頭の国王カールホルスがやってきた。

 今までは守生を呼びつけていたが、最近は守生に対してマウントを取らなくなったのかフットワークが軽い。

 

 簡単な挨拶の後、カールホルスが両手を差し出す。守生は手に【シャンバラ・アクティベーション】の図形を描いてから、その両手に軽く触れる。するとそのまま、ぎゅっと手を握られた。

 

「え? 王様、どうしました?」

「シュー殿、あなた、結婚してください!」

「は?」


 守生はカールホルスの手を振り切り、一歩後ずさる。

 カールホルスには、羽持ちではない牛頭の王妃と生まれたばかりの王子がいる。守生は彼らに会ったことがないが、はなしを聞く限り、カールホルスは愛妻家だ。

 

(なのに何言ってるんだ、この人は!?)

  

 以前イライラするカールホルスをかわいいと思ったことがあるが、それは過去に余裕がなくてイライラしていた守生自身を思い出したからだ。その時の自分を癒し、愛することができたから、カールホルスがイライラしていてもその影響を受けずに彼を温かく見守ることができるのだ。

博愛的な愛情、つまりアガペーはあっても、性欲を伴う愛、エロスはまったくない。

 

「王様は、僕が王様の愛人に間違われたことを事実にしたいんですか?」

「違います! 娘の! エリスイシスと結婚してくださいとお願いしているのです! ちょっと言葉が足りなかっただけでしょうが!」

 

 その答えに、守生は半分だけ力を抜いた。握っていた両の拳を下げる。

 

「お願いって……。まーた自分が楽をしたいばっかりに……」

「べ、別に私が国王をやりたくないからこんな提案をするわけではありませんよ? ですが私の兄、前王パウルプタハからエリスイシスへ譲られた壺をあなたが持っている時点で、あなたは次期国王候補と目されているのです!」

「えっ!?」


「まぁ、以前は私の『子』が無事に成人するまで、あなた方が摂政として頑張ってくれたらと思いましたけどね。あれは撤回します。あなた主体で政を行なえば、奴隷の解放など社会に混乱を招きそうですから」

 

 守生は内心でギクリとした。盗賊サイラスオサイリスたちの力を借りて奴隷を集め、彼らに【DNAアクティベーション】を施術して解放する計画を少しずつ進めているからだ。

 

「……王様が僕をよく理解してくれていてうれしく思います。でも! 馬鹿にしてますよね!?」


 あえて不機嫌そうな顔で言いつつ、対照的に不敵な笑みを見せるカールホルスへ椅子を勧める。

 黄金の椅子に座ったカールホルスが、真面目な顔でくちばしを開く。

 

「どちらにせよ、エリスイシスかマリアマァト義姉上、あるいは両方と結婚してください? そうすればより強固にあなたを守ることができますから」

「守る?」

 

 カールホルスは侍従長をちらりと見て、防音の魔道具が起動していることを確認し、言った。

 

「あなたの力は強すぎます。奴隷を即時解放できる光魔法の持ち主など、私が知る限り一人もいません。それを面白くないと思う者や、他国で利用しようとする者も出てくるでしょう」

 

 料理人たちが起こした爆発事故の後、トリスタントートにも忠告されたことだと守生は思い出す。

 魔力や魔石、魔道具があるのなら、奴隷などなくても生活できるのではないかと思うが、それは守生が別の地球から来たからだろう。守生が生まれた地球にだって、過去に大規模な奴隷貿易はあったし、現代でも人身売買は存在する。

 

「王様が僕のためを思って提案してくれたことに、感謝します」

「では!」

「でもそれは、エリス姫やマリア隊長さんの意思を無視していますよね? ご自分は相思相愛で結婚したくせに」

「ぐっ」

 

 カールホルスが分かりやすくたじろぐ。


「それに僕は、いつかこの国を離れるつもりですから」

「は!?」

 

 守生の言葉に、カールホルスだけでなく騎士コンビやヘレナヘケト、近衛騎士までもが驚く。侍従長だけは、防音の魔道具の範囲が広すぎたと冷や汗をかいている。

 

「同じヒーリングを使う人たちを探しに行きたいんです。僕自身、【DNAアクティベーション】を受けたいですし。見つけたら王様にも紹介しまね」

「ちょっ、ちょっと! 当てはあるのですか!?」


「うーん、大体の場所は分かるんですけど、はっきりとは……」

 

 過去、守生が生まれた地球には【七つのミステリースクール】があった。守生が所属しているのはその一つだ。この地球においても、それらがあった場所に行けば、何かしらの手がかりが見つかるかもしれない。守生はそう考えていた。

 例えばアメリカのロッキー山脈。守生の所属するミステリースクールの長は、元を正せばそこの導師から後継者に指名され、数年後に日本へ移住した。

 

(でも、さすがにアメリカ大陸までは距離があるし、まずは手近なところから行きたいんだよねぇ。有名どころはゴールデン・ドーンだけど、ここから一番近いのは……)

 

 守生がいる場所が古代ギリシャなら、ヨーロッパ大陸やアフリカ大陸のミステリースクールを探したほうが近い。

だが世界情勢が分からない。守生とて昆虫族の領域や、戦争地域に足を踏み入れたいわけではないのだ。

 

「だったら余計に! この国の人間と結婚してください!」

「別に逃げたりしませんけど。多分」

「多分!?」

  

 曖昧な返答をする守生に、カールホルスがいきり立つ。

 

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