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61 カールホルス王の本音1

読んでくださってありがとうございます

 

「国王であるこの私が、自ら足を運んであげましたよ!」

 

 その日、守生に新しく与えられた部屋にやってきたカールホルスは、傲慢に言い放った。

 

「まったく、こんな狭くて質素な部屋がいいだなんて。ここは主賓が連れてくる従者の共同部屋ですよ?」

 

 カールホルスは言いながら、魔道具の眼鏡のずれを直した。

 虫嫌いの守生が、昆虫族の装飾品のある部屋や浴場なんて無理だと言ったため部屋替えを希望したのだ。ベッドを六つほど置ける広さだ。前の部屋よりは狭いが、隣にトイレと簡易浴室もある。なにより、見たくもない装飾が一切ない。

 

「そもそも国王である私が、賢者殿より順番が後だなんて! あやうく宰相にも先を越されるところでしたし!」

 

(仕事が忙しいって全然受ける気なかったくせにー。いや、値段を曖昧にして準備を怠ってた僕のせいでエネルギーが動かなかったのか……)

 

 守生が反省していると、カールホルスは侍従を介して、収納の羊皮紙を差し出した。

 

「銀貨二百枚入っています。どうぞ、確認してください?」

「え!? 銀貨百枚ってお伝えしましたよね?」

「いえいえ、いいんですよ。その分、賢者殿よりもイイ感じにしてくださいね?」

「いや、そういうものじゃないんで……」

「ヘレナヘケトから聞きましたが、お金もエネルギーとやらも等しい価値で交換するんですよね? だったら倍払えば、効果も倍になるのでは?」

「いやいや、常にフルパワーでやらせてもらってますので!」

 

 守生は侍女ヘレナヘケトにお茶の用意を頼むと、カールホルスに断って席を立つ。衝立で仕切られた寝室部分で、防音の魔道具を作動させた。


「あー! もう!!」


 思いっきり叫んで、不快感を吐き出す。

 

「ああ、もう……」

 

 ふと守生はカールホルスがやってくる前に、護衛騎士のアベルアヌビスに心配されたことを思い出す。

 

『大丈夫ですか?』

『何が?』

『シューさんって、王様のこと苦手よね? やっぱ施術したくないのかなって』

『別にそんなことはないよ。王様にモヤモヤしたとしても、それは僕の問題だし』

『え? 王様の態度が悪いんだから、王様のせいじゃないんすか?』

『違うよ。誰がどういう態度であっても、それでイライラするのはその人の問題だよ』

『えー?』

『アベルの態度にイライラする人もいれば、イライラしない人もいるだろ?』

『うーん、それはそうですけど。でもそれは仲が良いとかありますよね?』

『初対面でも無礼な人は無礼じゃない?』

『わはっ! 確かに』

『それと一緒だよ。自分の感情をコントロールできないのは、他人の影響を受けているわけだし。つまり、光が足りてないからそういうことが起こる。【場の設定】とか、自分自身にDNAアクティベーションをするといいんだけど』


「そんなふうに言ったこともありました! でも今は! 僕がアクティベーションを受けたいぃー!」


 頭を掻きむしる守生を、壺絵の中からアイシャアイシスが楽しげに見ている。

 

「でも無理だから! 光を呼ぶ!」

 

 守生は何度も何度も光を呼び込み、自分自身を満たしていく。自分が光に満たされれば、他人から悪い影響を受けにくくなるからだ。

 ひと心地付くと、カールホルスの元へ戻る。銀貨の入った羊皮紙をヘレナヘケトに預け、百枚だけもらうように頼んでから彼女を退室させる。

 

「じゃあ、まず水をスプレーさせていただきます。眼鏡は濡れないように外してくださいねー」

  

 施術用の椅子に座らせたカールホルスに【ホーリーウォーター】をスプレーしながら、力の言葉でカールホルスのオーラを浄化していく。


「すぷれー? その容器が見たいんですが……」

「施術中は、黙っててくださーい。はい、では立ち上がってー。スプレーしますよー」

 

 守生よりも背の高いカールホルスに立ってもらい、下半身にも【ホーリーウォーター】を噴霧する。

 オーラの状態を確認したら、次はDNAアクティベーションだ。


 軽くハグをして、また座ってもらい、頭部のエネルギーの調整を行なう。

 

「なっ!?」


「ふぁっ!?」


「これは!?」

 

 時々カールホルスが声を上げるが、問題なさそうなので守生はどんどん施術を進めていった。

 小石と水晶をひとつずつ持たせて【光の注入】をする。これが終わればDNAアクティベーションは終了だ。

 守生がワンド(小杖)の先の感覚と光の流れを感じていると、前方から泣き声が聞こえてきた。カールホルスが泣いているのだ。

 動いてほしくないし、守生も動けないので、二十数分間ただ光を流す。

 

「はい、体を戻してー。そのまま前を向いていてくださーい」

 

 素早く、かつ丁寧に仕上げの調整を行なえば、施術完了だ。カールホルスのそばに跪くと、小石と水晶を返してもらう。


「お疲れさまでした。いかがでしたか?」

 

 守生がそう言った途端、カールホルスが立ち上がって叫んだ。

 

「兄上なんか大嫌いだ!」

 

 ダンッと勢いよく足で床を踏み鳴らす。守生は少し驚いたが、様子を見守ることにした。

  

「勝手に死んで! 大きな政策をいくつも残して!」

 

 ダンッ!

 

「俺はその尻ぬぐいをさせられて!」

 

 ダンッ!

 

「貴人ではない妻は王妃になったせいで、肩身の狭い思いをさせられて! 兄上のせいだ! 結婚を許したのは兄上のくせに!」

「俺は愛する妻を、離宮にやることでしか守れなくて! 娘にも寂しい思いをさせていると分かっていながら、片付かない仕事を続けるだけで、何もできない!」


 ダンダンッ!


「それもこれも、愛人に殺されるなんてヘマをした、馬鹿な兄上のせいだ!」

  

 


更新が遅くなってすみません。明日の夜も更新します。読んでいただけるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王様がこんな闇を抱えてたとは… 守生も慌てもせず見守ってるのは、ままあることなのかな
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