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59 光の注入、毒の歴史

終盤、残酷なイメージを思わせる描写があります。苦手な方は、終盤のトリスタントートの説明台詞にご注意ください。

(一応、前話と前々話で改めて伏線を描きましたので何となくお気づきの方もいらっしゃるとは思いますが……すみません!)

 すっかり大人しくなったトリスタントートに、守生は再びハグをする。

 これは、【DNAアクティベーション】の施術のためのハグだ。ハートチャクラとハートチャクラを重ねるためのもの。

 

 トリスタントートを椅子に座らせ、ふと気づいた。黒い頭の上に、山吹色をした大きな冠羽があるのだ。クラウンチャクラを調整する時に、明らかに邪魔になる。

 

「あの、冠羽は取り外せますか?」

「ええ、もちろんです!」


(もちろんなのか……。ヘアアクセって感じなのかな)

 

 カツラなのかヘアアクセサリーなのかと気になりつつ、守生は意識を施術に戻す。

 

「じゃあ、ちょっと頭にふれますねー」

 

 頭まわりのエネルギー調整し、立ち上がってもらうと椅子をどけて全身のバランスラインや磁気エネルギーを整えていく。

 施術中は軽く目を瞑っていてもらうのだが、トリスタントートは細いくちばしを開けたり閉めたりと忙しない。

 

「何か言いたいこととかありますか?」

「いえ! 続けてください!」

「分かりました」

 

 十数個ある全身から広がるエネルギー体に光を注ぎ、調整していく。

 それが終われば、また椅子に座ってもらい、不要になったエネルギーを取り除く。

 

「これで前半部分が終わりました。今から【DNAアクティベーション】の根幹である、【光の注入】をしていきますね」

「はい」

「じゃあ、こちらの水晶と石を一つずつ握ってください」

 

「今、あなたの目の前に……があるのをイメージしてください。そして……」

 

 指示を出し終えた守生は水晶のワンド(小杖)を自分と繋げ、トリスタントートのオーラの中にあるDNAを活性化させていく。

 トリスタントートの内側にある暗い部屋の中に、ひとつひとつ光が灯っていく。

 およそ三十分後、施術が終わった。トリスタントートに渡した水晶と小石を受け取る。

 

「どうでしたか?」 

「……ええ」

 

 トリスタントートはぼんやりしている。守生は水差しの水を金属のカップに注ぎ、トリスタントートに手渡す。

 本来ならハーブティーのひとつでも入れたいところだ。

 

(せめて生活魔法くらいは使いたいよねぇ……)

 

 トリスタントートは心ここにあらずといった様子で、カップの水を飲む。長いくちばしをカップに入れて水を含むと、顔を上げてクックックッと飲み込んでいく。

 

「はぁー……」

 

 トリスタントートが大きなため息を吐く。気分が悪いだけではなさそうだったので、守生は気にせず片付けをすることにした。

 サポートしてくれた光の存在たちに感謝を述べて平和的に帰ってもらう。それからワンド、水晶、小石をホワイトセージ・スプレーで浄化する。


 そうこうするうちに、トリスタントートが復活した。

 

「いやはや、【稀有なる光】! ありがとうございました!」

「どうでしたか?」

「ええ、すっきりしたというか、何なのでしょうね、これは? 余計なものが取れたといいますか、気持ちが若返ったと言いますか。ちょっと今は、言葉にできませんよ!」

「そうですか。何か気になることができたら、小さなことでもいいのでいつでもお知らせくださいね」

「分かりました!」

「あと、今から二十四時間は」

「お酒は飲まない、水を多めに、ですね!」

「ええ、そうです。本当は浄化をうながす波動水をお渡しするべきなんですが、持ってきてなくて」

「そうなんですね! 急な召喚でしたら仕方のないことですね! そのうち、力になれるかもしれませんね!」

「……【黒曜の頭脳】が作ってくださる、と?」

「ふふふ、どうでしょうか!」

 

「この【DNAアクティベーション】、受ければ受けるだけ変化が起こりますが、三週間……つまり二十一日間は受ける必要がありません。ちょっと新しいことに挑戦してみたり、自分の内面を見つけたりすると、より変化が分かるかもしれませんね」

「分かりました! 研究、観察、挑戦は得意なのでね!」

「さすが【黒曜の頭脳】ですね」

 

「僕のほうは、ハピの弟の方に会いに行くことにしました」

「ほう。フィリップハピ、でしたかな!」

「ええ。何とか交渉して、解毒薬を手に入れられないか、やってみます」

「そうですか。彼は美意識の高い男ですからね。身だしなみにはお気を付けなさい。そして、つまらないことで足を掬われないように」

「はい、気を付けます。じゃあ手土産は、服飾系がいいかもしれませんね」

「ええ! 召喚者であることを全面に押し出して行くといいでしょう!」



「……どうしてあんな毒が生まれたんでしょうね。嫌がらせにしては度が過ぎている」

「あの硬化した皮膚を剥いで、加工するんですよ」

「え?」


「元々あの毒は七十年ほど前に作られたものですよ。人間を昆虫族に変えれば、昆虫族には出ない色のものができますからね。珍しいと一時期大変流行ったのです。ただ、奴隷相手に行なっていたことを政治利用する者たちが出てきて批判を浴び、だんだんと廃れていったのです。今ではもう製法も失われたと思っていたのですが!」

「え?」


「だから、加工して装飾品にするんですよ。鎧にもなりますが」

「ひふを、はいで?」

「ええ、そうです。昆虫族の硬い肌は、金属と宝石を混ぜたような色合いで綺麗だと人気なんですよ。確かに美しいですが、野蛮なやり方ですね!」

「あなたの寝台の天井や大浴場の微温浴室の床も、昆虫族の皮膚を加工した装飾ですよ? 鎧は、上級騎士がよく使っていますね。軽いのに強度があってキラキラして派手ですから、……おや、【希有なる光】!? しっかりしなさい!」

 

 守生は白目をむいて気絶していた。

 

 


古代ギリシャ時代の騎馬民族スキタイは、討伐した敵の皮膚を加工したそうですね。自分の武功を誇示するためだそうです。

一方、ダウンコートや羽根布団は、生きた水鳥の羽根をむしって作られるし、革製品も……。

絹や蜂蜜は、蚕や蜜蜂を殺さずに採取できるようですが、いい迷惑であることは間違いないでしょうね。

ヒーリング道具も天然素材が多いので(水晶のワンドはフェルトより革布で包むほうがいい等)、悩ましいところです。

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