ウルトラマンだろう
ギザギザハートのギザカワユス
昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
なにかが始まるような気がしましたが、なにも始まりませんでした。
おじいさんとおばあさんは、無味乾燥で怠惰で虚無的な人生を過ごし、やがて終えました。
人生最後の顔は、とても安らかなものでした。
昔々あるところに浦島太郎という若者がいました。
太郎が海辺をあるいていると、子どもたちがかめをいじめていました。
太郎は、スマートホンで犯行現場を撮影すると、すぐネッツに動画をアップしました。
動画はまたたくまに拡散し、いじめっ子たちは住所氏名年齢趣味特技血液型まで特定され、その未来を永遠にとざされてしまいました。
かめは太郎におれいをいうと、竜宮城までつれていってくれました。
竜宮城にはゲーム、まんが、アニメ、えいが、音楽、小説、ドラマなどかくしゅ娯楽が完備してありました。
はじめは、ふつうに楽しんでいた太郎でしたが、このままでは全て堪能しきれないとおもい、時短にはげむようになりました。
動画は3倍速視聴、音楽はイントロ間奏aメロbメロcメロサビ終奏カット、ゲームは実況で済ませ、それでも次から次へとあふれる娯楽に太郎は追われるようになってしまいます。
そして竜宮城から帰ると、太郎は二十歳でありながらまるで百歳のような見た目になっていました。
脳味噌は二百歳相当でした。あまりにも頭を酷使しすぎた太郎は、自分が何者かも分からなくなったような顔つきでとぼとぼ歩くと、やがて倒れました。
倒れた太郎が見たのは、かつてどこかで見たような顔をした若者たちでした。
にやついた若者たちは木の棒をおもいっきり太郎にふりおろしました。
かめは、そっと海の底へとかえっていきました。