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闇に染まった死神は、怠惰で強欲な聖女に忠誠を誓う  作者: 早海ヒロ
第3章 ピンクと黄緑の復讐編
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第56話 変態淑女

「魔力量?」

「つまり、個人が持っている魔法が使える回数や力の高さ、ということです」

「数値的には、四大属性の平均が約35、希少魔術師が約150。まあ100以上あれば困ることは無いと思っていいわ」


 ノア様はオトハに魔力計測器を手渡す。

 オトハはしばらくそれを眺めた後、


「これはどう使うんですの?」

「脇に挟むか、口に咥えればいいわ」

「!?」

「オトハ?」

「つ、つまりこれを咥えれば………お、お嬢っ様と、か、か、間接キッス!?」

「変態って、たまに革新的なこと思いつくの嫌ですよね」

「一応言っておくけど、私は脇に挟む派だから咥えてないわよ」

「そ、そんなっ!?」


 結果、普通にオトハは脇に挟んだ。


「こ、これはこれで………お嬢様の脇に挟んだものが、この私の脇に………ふーっ、ふーっ………」

「おいオトハ落ち着け、また鼻血出てるぞ」

「興奮すると誤表示かもしれないので、心落ち着けてからやってくれます?」

「クロ、ちょっとあの計測器洗ってきなさい、誰の皮膚片も残らないくらい」

「ああっ、そんなご無体な!?」


 計測器を石鹸付けて洗ってから再開。

 オトハが目に見えてへこんでていたけど気にしない。

 沈むオトハからオウランも計測器を受け取り、脇に挟む。

 その結果。



『1/210』

『1/180』



「平均よりも上、しかも200前後。なかなか良いわね」

「ふぅ、これで低かったりしたらどうしようかと」

「お嬢様の脇が………口が………」

「いつまでへこんでるんだよお前は」


 取り敢えず、二人とも低くは無くて安心した。

 希少魔法は魔力消費が激しい魔法も多いから、多いに越したことは無い。


「ま、まあお嬢様のお役には立てそうなので良かったですわ。平均以上ということはそれだけお嬢様に尽くせるということですもの!」

「そうだな。あっ、ちなみにノアマリー様たちはいくつなんです?」

「620ね」

「わたしは400です」

「えっ」


 オウランがは目を丸くし、オトハが固まった。

 これだけ聞けばたしかに、わたしたちが凄く感じるだろう。

 しかし悲しいかな、ここにはわたしたちとは文字通り桁が違う子が一人いる


「す、凄いですね。どっちも平均より倍以上なんて」

「私たちなんかステアに比べれば、ねえ?」

「はい」

「えっとステアさんはいくつなんですの?」

「1450」

「「は?」」


 まあそうなるわな。


「1450」

「じょ、冗談ですわよね?」

「冗談じゃない」

「本当ですよ。ステアは魔力量だけならノア様の前世、大魔術師ハルすら上回ります」

「天才の中の天才よ。数百年に一人ってくらいの逸材だわ」

「マジかよ………」


 オトハがその場で崩れ落ちた。


「こんなちびっ子に負けた………」

「ちびっ子………」

「なんでステアはちびっ子って言葉でへこむんですか」


 まだ八歳、ちびっ子の領域だろうに。


「ちびっ子に、ちびっ子って言われるの、いや」

「ああ、そういう」


 まあ、確かに平均よりは低いだろうな。

 ノア様も低い方だけど、それでも若干オトハよりは高い。


「誰がちびっ子ですか、あなたよりはありますわよ!」

「でも、クロより、低い。ちびっ子。やーい」

「きいいい!」

「落ち着けオトハ、年下相手にみっともない!」


 一切表情を変えずにオトハを煽るステアと、涙目でステアに詰め寄ろうとするオトハ、それを必死に止めるオウラン。


「仲良さそうで何よりね」

「いいんですか、これ」


 ウンウンと頷くノア様、恐らく呆れ顔をしているであろうわたし。


「ステアも遊び相手が増えてよかったじゃない。精神年齢も近そうだし」

「まあ、あれくらいの年頃の子たちは、喧嘩させておくくらいがいいのかもしれませんね」


 親目線のわたしたち転生者組は、お茶を飲みながら暴れる三人を眺める。

 まあ正確にはオウランは止めようとしているが。


「大所帯になって来たわねぇ。最初はわたしとあなたしかいなかったのに」

「心強さと同時に騒がしさも増しましたね。これからまた増えるかもしれないのに、どうなることやら」

「いいじゃない、こういうのも。楽しくて」

「まあ一理ありますね」


 最終的に正当防衛という名のステアの精神魔法がオトハに飛び、喧嘩は収束したようだ。


「はあっ、はあっ、まったくとんでもない幼女ですわ………お嬢様、非力な私はあの大魔術師にいじめられてしまいましたわ、どうかお慰めくださいませっ!」

「お前、プライドとかないのか!」

「お嬢様の慈愛の前ではプライドなどゴミと同義ですわ!」


 ステアに負けたのを理由にノア様に縋りつこうとするオトハ。

 試合に負けて勝負に勝とうとしているようだ。


「さあお嬢様、この敗者にお慈悲を!」

「悪いけどわたし、負けた子には厳しくする主義なの」

「!?」


 ショックを受ける顔をするオトハの横を、ステアがてくてくと歩いてくる。


「お嬢、勝った」

「そうみたいね」

「頭、撫でてほしい」

「はいはい」

「んぅ~」

「ぎゃあああ、私なんて触っていただいたことすらほとんどないのにぃぃ!!」


 幸せそうに目を細めるステアと、求めていたものを目の前で奪われたトレジャーハンターのように手を伸ばしながら涙を流すオトハ。

 なんだこれ。


「ううっ、ぐすっ………私の方がお嬢様を愛しているのにぃ………」

「悔しかったらあなたもさっさと魔法を覚えなさい。ほーらステア、いい子いい子」

「ああああああああ!!」


 発狂しながら毒劇魔法の魔導書を積み上げ、血走った目で一冊目から読み込み始めるオトハ。


「ど、どこにありますの………薬も作り出せるというならあるはずですわ、かつて読んだちょっと大人な本に出てきたあれが………」

「なにを探してるんだオトハ」

「もちろん、媚や」


 わたしは無言でオトハをはたいた。


「ちょっ、何をしますの!」

「十一歳の身空でなんでそんなものを知っているんですかあなたは!」

「仕方ないではありませんか!昔、定期的に渡される本の山にそういうものがあったんですもの!」


 この変態おませ娘、何とかならんだろうか。

 そしてそれを渡したギフト家の連中は何を考えてたんだ。


「いいから魔法の勉強をしなさい。ほらオウラン、あなたもです。耐性魔法の魔導書は既にそこに用意してありますから」

「分かってるんだけど、こいつが何かやらかさないか心配で」

「安心してください、こっちはわたしが見ておきますので」

「そう?じゃあお願いします、クロさん」

「ええい、こうなれば自棄ですわ!ちゃんと勉強して魔法を使えるようになって、お嬢様に褒めてもらうんですの!」

「それは自棄じゃなくて普通です」


 無茶苦茶を言いながらも魔導書を最初から読み始めるオトハ。

 こっちをちらりちらりと気にしながらも、真面目にメモを取ったりしながら勉強するオウラン。

 動機の純・不純はあるものの、根が素直で真面目なところは双子共通か。


「ふふ………この菌を自分に盛って、ちょっとした風邪を引けばお嬢様の看病が」

「言っとくけど、毒劇魔術師はその特性として毒や薬が効かないから、盛っても意味ないわよ」

「!?」

「細菌やウイルスも効かないからほとんど病気にもならないわ。ちなみに耐性魔術師は最初からほとんどの攻撃にある程度の耐性があるの。生命力が強いと言い換えてもいいかしら。刃物で急所刺されても多分死なないわね」


 そりゃ便利。

 闇魔法は暗視と生体感知があるけど、それより凄いな。


「変なこと考えてないで勉強しなさいオトハ」

「うう………」

「その代わり、ちゃんとできたらご褒美をあげるわ」

「頑張ります!!」


 単純なオトハは一気にスピードを速める。

 そして数時間後にはフラフラになりながらも、ノア様が渡したご褒美のチョコを、恍惚とした顔で受け取っていた。

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