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第454話 第1決戦・ステア&スイvs那由多4

「ぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁあああ!!」


 少し遠くから聞こえる悲痛な叫びも、今は構ってる暇がない。


「《壊滅の陽光(ジェノサイドサン)》」

「《絶氷の宝壁(コールドイージス)》」


 ナユタの飛ばした千を超える熱光が、私の氷壁をみるみる溶かしていく。


「《耐性超強化・熱》」

「《魔法削除(デリートマジック)》」


 ……私もずっとやってるけど、後出しの闇魔法がもどかしい!


「っ……《転移(テレポーテーション)》《世界切断(ワールドスラッシュ)》」

「ワンパターンになってるよ。《絶対反射(オールカウンター)》」


 最高位魔法の応酬を闇魔法で防御し、私も連打しているのに、ナユタを動かすこともできない。

 クロが見たら「クソゲー」って言いそうだ。


「よいしょ」

「!」


 ……今度は酸性雨か!しかも毒劇魔法で既に完成した攻撃だから、《魔法削除(デリートマジック)》じゃ消せない!


「《至空の竜巻(クレイジーサイクロン)》!」


 雲と酸性液を無理やり吹き飛ばして防ぎ、《勇者の聖剣(レーヴァテイン)》を《転移(テレポーテーション)》で足元に移動させて払う。


「《歪む空間(ディススペース)》」


 ……私の行動が読まれている。

 完全にではないけど、かなりの精度で!


「無駄無駄」


 ……落ち着け。情報を整理しながら戦え。常に頭を回し続けろ。

 そうしなきゃ、この化け物には勝てない。


「ふー……」

「疲れてきた?この精神世界の維持も、君には結構な負荷なはずだしね。だからこそスイピアを連れてきてサポートさせるつもりだったんだろうけど」


 突如、背後から爆発音。


「うわああっぶなあああ!?」


 私と引き離されたスイが、無数の魔法を捌き続けていた。


「さすがに、私相手には役者不足だったんじゃない?」

「問題、ない」


 こうしてナユタのリソースを分散してくれるだけでもありがたい。

 それに、スイは私にとって大きなアドバンテージだ。


「私だって、考えた。いろいろ。それで、スイが一番いいって、結論付けた」

「ふーん?言いたいことは分かるけど」


 ナユタは、時間魔法を使えない。

 他の魔法に比べて異常にサンプルが少なく、さらに概念に作用する時間魔法。

 それを魔導書も魔術師本人からの解説もなしに理解するのは不可能。"術式を理解している魔法"のすべてを再現できるこの世界で、使えない魔法があるというのはハンデになる。

 これは私にも言えること。現に、私も時間魔法は上手く扱えないし《太陽魔法》が使えない。それが分かっているからこそ、ナユタは太陽魔法での攻めが多い。


「《水素(ハイドロエク)爆発(スプロージョン)》」


 今は互いに決定打を撃てない千日手。

 けどこのままじゃ、十中八九ジリ貧で私たちが負ける。

 隙を狙うとしたら―――ナユタの僅かな「焦り」。


 クロとホルンが戦っている今この状況で、この精神世界に囚われて外の様子が分からないこの状況で、ナユタが考えることは1つ。『1秒でも早く私たちを倒して、2人の安全を確保する』だ。

 だけど今の戦い方を続ければ、私に勝つことは出来ても相当な時間がかかる。ナユタはそれに焦り始めているはずだ。

 焦りは、必ず思考のどこかに隙を産む。その隙さえつくことが出来れば、私にも勝機はある。


「久音と永和への心配と、そこからくる焦りを突く……とか思ってるのかな?」

「………」

「ははっ、そうだね。実際少しもどかしくは思ってるよ。……正直、最初の水爆で決めるつもりだったからさ。止められたのは驚いた」

「だと、思った。あなたにしては、雑すぎたから」


 水素爆弾なんて兵器を使えば、視界は遮られるし放射線を防ぐために常時バリアを展開しなきゃならない。使うとすれば、カウンターを食らうリスクを承知の上で一撃必殺の技としてしかない。

 あれだけの超高威力爆撃、この世界に慣れ切っていない私の闇魔法では防げていたか微妙だ。イメージ力の優れたスイがいたからこそ、私は無傷で済んだ。


 やっぱりナユタの狙いは、超短期決戦。私じゃ予測できない角度から、想像もできないような攻撃をされるかもしれない。


 その前に、倒す。


「スイ、きて」

「うわああああ!?え、あ、《念動魔法》……?」

「スイ。攻撃、全部、防いで」

「え?ちょっ……」


 その瞬間、ナユタの猛烈な最高位魔法が降り注いだ。

 中には最高位魔法同士を組み合わせた、超凶悪な魔法まで。


「だあああ!?《時間停止(タイムストップ)》!!」


 しかしそれらは、すべて時間を止めることで弾かれる。


「ちっ……」

「こっちの、番」


 《金属魔法》で生み出した弾丸、それを《封印魔法》でその場に留め、《闇魔法》を纏わせて弾頭を除いた部分の摩擦係数を極限まで消し去る。

 さらに《落雷魔法》による磁力操作で直線型電磁加速を付加し、《結界魔法》で筒を作る。


「おっ……」


 ナユタは目を見開いた。

 そう、闇魔法を纏わせたこの弾丸は、同じ闇魔法で消すためにほんの僅かにラグを生み出す。

 けど、これは速すぎて、そのラグの間に闇防御を突破する。

 防ぐ手段は少ない。だからこそ、ナユタの次の手段を()()()


「……っ」


 スイがいる限り、ナユタの魔法は私たちにすぐには通らない。撃ちだす前に止めるのは難しい、と判断する。

 けど闇魔法では止めきれないなら、他に取れるのは《封印魔法》《結界魔法》

 《空間魔法》《耐性魔法》。

 物理で破られる《結界魔法》と、闇魔法によって綻びが生まれる可能性がある《空間魔法》《封印魔法》は候補から外れる。

 なら、ナユタが取る手段は。


「《無敵化(ゼロエネミー)》」


 耐性魔法の奥の手、最強無敵の防御。

 だけど残念。その魔法の弱点を、私は知っている。

 だって、この瞬間のために()()()から。


『……あれぇ!?剥がれた、なんで!?』

『やっぱり』

『へぇー。《無敵化(ゼロエネミー)》って、術師本人への攻撃を防ぐだけで、魔法そのものには作用するんだ』

『……?ですが先ほど、わたしの《魔法削除(デリートマジック)》は防がれましたよ』

『あ、そうだ。なんでだろ?』

『闇魔法の、消去は、術者との、繋がりを断つことで、魔法を消してる。だから、術者に作用してるって、判定されて、効かない、だと思う』

『あぁーなるほど。でも、今の魔法だと純粋に魔法にしか発動してないから』

『それで剥がされたのか。ちぇっ、最強無敵の防御だと思ってたのに』

『まあまあ、その地位は揺らぎませんよ。相手が相手ですしね』


 5分しか使えない無敵の魔法の効果時間を、短縮する。


「スイ」

「……あの時間は、このためだったってわけか」


 そう苦笑したスイが、ナユタに指を向ける。


「《省略(スキップ)》」


 その瞬間。


「なっ……!」


 自らにかけた無敵化が解けたのを認識したナユタの声が漏れ聞こえた。


「……ナイス」

「先に言ってよ、こういうのは」


 咄嗟にあらゆる防御魔法を展開しようとしたナユタ。

 だけどそれより早く、限界まで加速させた弾丸が、筒から放射された。



「……カッ」



 フラッシュと共に推定速度マッハ10で放たれた弾丸は、ナユタの脇腹を撃ち抜いた。

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