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第451話 第1決戦・ステア&スイvs那由多

前回体調不良につきお休みいただきました、申し訳ない……。

「どう?」

「そこそこ」

「あっちは?」

「いける。そっちは」

「いつでも」

「ん。おけ」


 ステアと那由多は、互いに伸びや屈伸をしながら語り合い、その準備をはじめていた。

 ステアの背筋には、今の短い会話だけでも悪寒が走っている。まさか、自分が今からやることを把握しているばかりか、こんな余裕までみせるとは。

 流石は史上最強、格が―――。


「いや、1つも分からないんだけど!天才同士で完結しないで!」


 しかし、その必要最低限すらも省かれたように聞こえる会話についていけていない者も1人。


「……スイ、やかましい」

「まったくだ。身体と共に精神まで若返ったのかな?発情期の犬みたいにキャンキャンと」

「若返ったのは誰のせいだよ!い、今は違うし、もう10代半ばくらいには……いや、そうじゃなくて!」


 呆れの目で2人から見つめられたスイは、必死に弁解しながら那由多を指さす。


「なんで……なんで、ボクらの敵みたいになってるのさ!」

「なんでって。少し考えれば分かるよね」

「ん」

「君らを常人と一緒にするな!」


 そんなスイを見て、ステアは仕方がなさそうに口を開いた。


「ナユタは、味方じゃない。お嬢との取引で、一緒にいただけ」

「それは知ってるけど、だからってなんで!」

「ナユタの、行動理由?そんなの」


 油断なく那由多を見つめながら、ステアは答える。


「クロと、ホルンのため、以外にない」

「……へ?」

「そのために、私を、排除したい」

「そういうこと」

「え、いや、全然わかんないんだけど」


 キョトンとするスイを前に、「ここまで言っても分からないのか」とでも言いたげに那由多はため息をついた。


「いい?私は久音と永和が大好きだ。あの子たちだけが私の生きがいであり、それ以外に興味はない」

「……あ、うん」

「でも私は、ノアとルクシアは大嫌いだ。死ねばいい。私の邪魔しやがって。視界に入るだけでQOLが下がるし声が聞こえるだけで黒板を引っかかれた音を聞くより不快な気持ちになる。てか名前を呼ぶだけで虫酸が走る。あと」

「分かったよもう!なんだよ何が言いたいんだ!」


 そして子供を諭すように、那由多は語る。


「要するに、ステアちゃんを放っておくと、久音はともかく永和の生存率が下がるんだよ」

「……あ」


 スイの頭の中で、ズレていた歯車がガチリとハマる音がした。


「久音の手前、ステアちゃんも極力、永和を殺さないように努力はするつもりだろうけど。あくまで『極力』だ、絶対じゃない。……そしてこの最終決戦でノアマリーを殺せる可能性がルクシアの次に高いのは永和だ」


 その理由は、何も言われずともスイは理解できた。

 永和―――ホルンの死霊魔法は、この最終決戦である意味最も警戒すべき魔法だ。

 どのマッチアップでも死人が出ておかしくない状況で、その死人を自在に操れる。


「仮にノアマリーがルクシアに辛勝したとして、永和かルクシアの死体を用いて主の無念を晴らす選択を取った場合、その瞬間にあの女の死はほぼ確定する。私は一向に構わないけど、ステアちゃんが納得するわけがない」

「当たり前」

「だからステアちゃんは、真っ先に永和を行動不能にしようと企んだ。それを阻んだんだ」


 ノア陣営にとっての奥の手(ジョーカー)であるステアは、その気になればルクシア、リンク、リーフ以外の全ての敵を簡単に行動不能にできる。

 那由多は、それをさせるわけにはいかなかった。


「……私を、止めるため、だけに―――帝国と手を、組んだ」

「その通りだ」


 仮にステアが永和を止めてしまうと、その瞬間に暴れ出す男がいたから。


「フロム氏は、主君だった皇帝を殺した永和を殺そうとしている。今の弱りきった彼でも、永和を殺す方法ならあるからね」

「……自爆」


 クロたちと初めてフロムが戦った時にも見せかけた、彼の奥の手。

 ルクシアすらも直撃すれば重傷は免れないレベルの超火力を誇る、フロムの最終手段だ。


「けど、それもステアが止めればいいんじゃ?クロが悲しむし、君ならホルンを殺させないくらいのことはするよね」

「難しい」

「え?なんで?」

「今の、フロムに、精神操作をしたら……死ぬ」

「……!?」

「フロム氏の身体はもう限界だ。全身に病魔が広がり、いつ死んでもおかしくない。精神力のみで持っている状況だ」

「……それが可能な程度まで、身体を治療したのは、ナユタでしょ」

「そうだね。それも取引のうちだったから」

「あくどい、女。精神力だけで、持ちこたえてる、今のフロムに、精神干渉、したら―――それだけで、ギリギリが崩れて、死ぬ可能性が、高い」

「その通りだ」


 本来フロムは、この日を待たずに死ぬ可能性が高かった。それを那由多と取引し、無理やり今日まで延命してきた。


「仇も討てず、何も出来ず、ただ弱っていたというだけで死ぬ。騎士としてこんな無念な死もないだろう。……だが嫌なことに、あの男にはそんな無念を晴らしてくれそうな女がいる」

「……リーフか」


 もしフロムが、全身全霊をもって戦い、それで敗れたならばリーフも理解はするだろう。

 しかし、ただステアに少し入られただけで死ぬなんて、そんな事故のような死を、あのリーフは望まない。

 必ず自分の興味を後回しにして、怒り暴れる。


「私が言うのもなんだけど、あの女の強さは異常だ。私をはじめとする並み居る強者との戦いで成長し続け、今じゃステアちゃんの精神操作すら少しの間ならハジける。……リーフが暴れれば、今の私じゃ永和を守りきれない」


 つまり、こういうことだ。


 フロムが永和を殺すことは避けなければならない。

 だが決戦の日までにフロムが死ぬと、リーフはフロムの意志を継ごうとして、必ず永和を殺しにかかる。だからフロムは意地でも生かし続けるしかない。


 一方でステアは、永和を行動不能にしておきたい。だがそれをするとフロムが永和を殺してしまう。そして今のフロムは一度精神魔法を受ければ死亡する可能性が高く、そうなればクロと戦っているリーフが理性を取り戻し、こちらに戻ってくる。


 どちらにしろ永和は死ぬ。それを回避するには。



「フロム氏と永和を一騎打ちで全力で戦わせる」



 これしかない。那由多は言霊魔法を封じられた現状で、これが最も永和の生存率が高いと踏んだ。


「ステアちゃん。君は永和を止め、一か八かフロム氏も止めるつもりだろう。それで失敗したとしても、今度は戻ってきたリーフ相手に、精神操作による一か八かの賭けが出来る。悪くない策だよ、上手くいけばそれだけでリーフを潰せる。……けど、それはさせるわけにはいかない」


 もしステアの策が失敗すれば、確実に永和が死ぬ。

 それだけは、那由多が最も避けなければならない賭けだ。


「……お嬢の、ため。危ない橋も、渡らなきゃ」

「やらせない。私の邪魔はさせないよ」


 那由多の帝国との取引内容。

 帝国研究所職員の引き抜きに目を瞑ること、フロムを新薬の実験台とすること。

 ―――代わりにフロムの延命処置を行い、決戦の時、ステアを止めておくこと。


「さて……お喋りはこれくらいにしようか」

「……ん。始めよう」


 ……と。

 ここまでを()()()()()()()()()ステアが、自分の頭に手を置いた。

 するとステアはその場にゆっくりと倒れ、続けて。


「っ……!?」

「ふふっ」


 スイと那由多もまた、強烈な一撃を食らったような衝撃と共に、意識が途絶えていった。

『お詫び』

この話、ちょっと分かりにくかったと思います。気合いで書き上げたんですが、朦朧としてる時に急いで書くものじゃないっすね……申し訳ない。


要するに

ステア「お嬢のために、一か八かの賭けに出る!」

那由多「外したら私の親友が死ぬからやめろ!」

フロム「あの女許すまじ!」

那由多「よし、死に体のお前が戦うのが1番永和の勝率が高い!いけフロム!」

ステア「ホルンが勝ったらお嬢が危ない……やっぱり賭けだ!」

那由多「このじゃじゃ馬は私が抑えとくから!心置きなく、リーフが見ても納得するくらい見事に散ってくれ!」

ってことです。


那由多は割と悪人です。


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